第79話連戦

 孫策が第一の敵として狙いを定めたのは叔父呉景を苦しめる揚州刺史ようしゅうしし劉繇りゅうようであった。

 劉繇は朝廷によって揚州刺史に任じれられていたが、袁術に邪魔をされ任地に赴くことが出来なかった。


 そこで孫策の叔父・呉景と孫賁に迎えられていたのだが、機会が訪れると袁術から官位を貰っていた呉景と孫賁を追い出して自立した。

 袁術は攻撃したが、1年経っても劉繇の軍を破ることが出来なかった。そこへ孫策が行こうとしている。


 孫策は募兵が成功したとはいえ、袁術から借り受けた兵と合わせて3005・・・・名の兵しか持たない。

 それでも孫策は孫家再興のために兵を出した。


「なんと孫堅の長男、孫策が攻めてくると申すか」

「はっ」

「そうか、やつの叔父を追っ払った恨みからだな」

「おそらくそうでございましょう」

「して、孫策の兵力はいかほどだ」

「およそ3000ほどかと」

「ふむ、それほど多くはないな」

 劉繇は配下の張英と樊能に命じて牛渚ぎゅうしょの要塞にて守備の指揮をとらせた。

「ふふ、兵法も知らぬ若造に何ができる」

 劉繇は高をくくっていた。




「若殿、あれが牛渚の要塞でござる」

 程普が言った。

「ほう、なかなか手ごわそうだ」

 孫策はあごに手をやりふ、ふっ、と笑った。

「しかしあれぐらい簡単に落とせねば孫家の名が泣こう」

「そうです。一気に攻め滅ぼし孫策の名を中華全土に知らしめなされ」

「言われずとも!突撃の銅鑼どらを鳴らせ!」

 このとき孫策は若干21歳。

 現代でいうといまだ大学生の身分のものが総大将であった。




 弓矢の応酬が始まる。

「ひるむな!打ち返せ!」

 孫策は不都合なしに育てられたため気が短い。

 イライラしだし、矢の応酬ではラチがあかないと思い大将みずから突撃した。

「あっ、若殿!はやまってはなりませぬ!」

「若殿を見殺しにするな!」

 孫策は不敵に笑い

「大将がひるんでいて家来が付いてくるか!天命を持ったものに矢など当たるはずがない!」

 と豪語した。

 しかしそれは無謀な突撃であり、結局味方に損害を与えただけであった。




 しかし数刻の後、牛渚の要塞のあちこちから黒煙が舞った。

「なんじゃあの煙は?」

「張英さま、あちらかも」

「こちらからも!」

 狼狽する張英に追い打ちがきた。

「どうやら謀反人のようです!」

「な、なにィ!」

「500人とも1000人とも予想が付きません!」

「ぬぬぬ、だれが裏切りおった」


「よし、城門を開いて孫伯符さまをお迎えするのだ!」

 謀反人、孫策にとっての恩人は門番を斬り、門の鉄のかんぬきをはずした。

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