第73話飛翼、長坂に舞う
橋の上で張飛はひとり
曹操のもとにも『ただ一人の敵兵が橋の上で待ち構え追撃できない』と報告が入った。
「はい、ただ一人この先の
「ただ一人の敵兵にか」
「はい、だがその強いのなんの」
「よし、案内しろ」
張飛は文字通り孤軍奮闘し、橋の先に誰も通さない。
張飛に立ち向かっていった兵はそのまま蹴散らされた。
「とりみだすな!」
その一声に雑雑たる曹軍は静まり返った。
「おう、敵の総帥・曹操閣下のお出ましか」
カッカッカと張飛は哄笑し、
「我は劉玄徳が義弟、
と一喝した。
「昔、関羽が余に言った言葉を思い出した。自分は張飛にはかなわない。彼がひとたび戦場に出ると血の雨が降る、と。張飛が一騎当千なのは知っておったが、これほどまでとは」
「丞相、いかに張飛と言えども人間には変わりはないでしょう。私にお任せを!」
と言い飛び出した者がいる。
「張飛、よくもわが従姉妹を
「なにっ!?」
「我が名は夏侯覇、夏侯月の従兄弟である!」
張飛は、ここでこいつを殺せば劉操の奥方に悪いと思い手加減をした。
「悪いがお前の相手はしておれん!」
張飛は蛇矛で打ち付け夏侯覇を川に馬ごと落とした。
「な、なんとすごい……」
曹操軍にはもはや向かっていくものはいなかった。
そのとき張飛の後方に風が吹き、草木が揺れた。
「見ろ、橋の向こうの林が揺れ動いておる」
「伏兵がいるのやもしれません」
「そうか、いかに張飛が豪傑であろうと何十万もの数をひとりで相手にできるわけがない。これは敵がなにか罠を仕掛けるための時間稼ぎということか」
そう判断した曹操は、
「全軍ひけっ!」
と退却の
「曹操、勝負をせぬか!」
と叫んだ張飛は曹軍の退却を見届けると橋を焼き落とした。
曹操は
「橋を焼き落とすということは罠など何もなかったのだ!」
と悔やみ、橋を三か所かけさせた後に慌てて追撃を再開した。
――関羽・趙雲、そして張飛。劉備はアレだが、その配下は決してあなどることはできぬ。
曹操は劉備軍の人材の豊富さ、『人の和』に対して警戒心を持った。
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