第4話我が叔父、関羽
「まったく、殿が呂布などを信じるからこうなるのです」
背の高い、みごとなというか自己顕示欲の表現としてたくわえたかのようにしかに見えない髭を持った人物が言った。
「羽よ。そこは私にも落ち度はあるが、まさか飛が酒を呑んで暴れるとまでは認識していなかったのだ」
間違いない、こいつは関羽だ。
「飛の酒癖が悪いことは殿も知っておるでしょう。まあ確かに曹豹を暴行し、その曹豹が裏切るとまでは拙者も思い浮かびませんでした」
同僚をイビっていたら、会社の機密をもってライバル会社に転職されたということだろうか。
酒+張飛=事件の三国志ファンには納得の出来事だ。
「しかし呂布のやつめ。我が留守に本拠を攻めるなどとは何とも……やつの義理は一宿一飯を与えた犬畜生にも劣るな」
劉備のイライラは最高潮である。
突っ込むとしたら、そこに死んだ兵士や母上と暴行された俺への気遣いも入れてはくれないものだろうか。
「殿、ご安心ください。呂布に渡した徐州牧の印綬はニセモノです。ホンモノはほら、ここにこの通り」
――おっ、と劉備は目を見張り、
「でかした羽!」
「ニセモノの印綬を使っていることを、しばらくしてひと段落したら噂で流させましょう。呂布の評判は地に落ちます。まあ二度の義父殺しをしている畜生ですからこれ以上落ちることもないかもしれませんが」
そういうと二人は大笑した。
関羽は塩の密売をしていたという。劉備のグレーどころか真っ黒な人物だ。
おそらく、今の劉備一行の知恵袋は関羽である。
頭が切れるというか策略に富んだ人物だ。
劉備という人物を表看板に掲げて、利益を裏で計算し尽くしているようなインテリヤ〇ザのような印象だ。
髭も過去の悪事を知る者から容易くばれないようにたくわえているこの時代の一種の整形なんじゃないだろうか。
これが商売の神様でいいのか。義理堅いって任侠的な意味なのか。
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