第2話いきなり呂布に囚われる

「呂将軍!劉玄徳の息子と思われるものを捕らえました!」

「よし!でかした!」


 気が付くと俺は穴を掘りさげた牢獄に入れられていた。

 三国時代の牢屋と聞くと鉄格子を思い出すのだが、罪人にまで使うほど鉄はまだ普及していないのかなあなどと思っていると牢屋から引っ張り出された。


「おまえが劉備の息子か」

「は、はい。いやちょっと違うかもしれませんが、今はそうなっているようです」

「?……まあいい。劉備は我が弟。そなたは我が甥ということになる。逆らわなければ手荒なことはせん」

 ほっと、一息も束の間


「まあ鞭打ち100回ほどで許してやろう」

 え?無知?鞭???鞭打ちってよく車でおかま掘られたときになるやつ……だよね?

「さっさと来い!」


 そう言うと呂布は鞭を持ち出し自らビュンビュン振り出した。

「1!」

 いてえ!肉に裂け目が入ったような感触。

 実際入っているのだろう。なるほどこれを100回もやられたら死ぬこともあるかもな……

「2!」

 これはダメだ、数えるのはマゾの中でも至極の存在であるに違いない。

 何を好きこのんで鞭で打たれることを望むものがいるのだろう。

 まさか転生してから最初にわかったことが自分がМという性癖を持っていないことだとは。

 それに付け加えるとこれが最後にわかったことになる可能性も大なことだ。

 ああ、ここで俺は死ぬから歴史に名が残っていないんだな……

「3!」

 コー〇ーの三国志だと呂布はいつも武力MAXだ。たいていの武将は一騎打ちで一撃でやられる。方天画戟を鞭に変えただけで俺は今、呂布と一騎打ちしているのだ。一方的に殴られるだけだけどな!




「98!」

 俺は意識をなんとか保っていた。

 呂布め、見事に十進法を使いこなしているではないか……

 張飛と同じでこいつも知性ゼロでただの脳筋かと思っていた。

 実際には呂布は勤皇の志を持った官職にあこがれる男だったようだが、加虐心溢れる義理ゼロの男でもあるのはイメージと同じだったようだ。

 そういえば日本の勤皇の志を持ったやつも刑罰は残虐だったらしいなあ……


「99!」

「呂将軍!劉玄徳が降伏して徐州牧の印を持ってまいりました!」

「なに!本当か」

 100回が終わろうかというタイミング。

 そりゃないだろう、ほぼ100回打たれたのと変わらないじゃないか。

 もう少し早く来てくれるだけで鞭打たれる回数は減ったのに……


「そなた、名はなんと申す」

「は?」

「名だ。劉備の子よ」

「操ということになっております」

「そうか、劉操か。我が甥よ、鞭打ってすまなかった。そなたの父上にもよろしく言っておいてくれ!」

 義理のおじ・・・・・である呂布はとても爽やかにそう言うと、――俺が徐州の牧だ!、とまたしても爽やかに叫んだ。


 99回鞭で打たれたあとに、父にどういう風によろしく伝えるべきだろう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る