相談者・高尾一と山田満。

第9話 高尾一からの相談。

季節が盆を終えて処暑を過ぎた頃。

まだ暑い日の中で、高尾一は申し訳なさそうに山奈円に声をかける。


「何?改まって。辞めたいとかはやめなさい。お給料の交渉は春まで待つ。それ以外なら聞くわよ?夏バテ?焼肉?もうchowderのせいで忙しいからいいわよ」


一気に捲し立てる山奈円。

もうそれだけで疲労が溜まっているのが良くわかる。

今週は相談料だけで三十万近く稼いだ。


その他は成功報酬と失敗報酬で高尾一の年収は手に入れてしまっている。


高尾一は申し訳なさそうに、「友達から相談を受けまして…、それでどうしても不幸の願いが始まってる気がしまして…」と言うと、山奈円が「まさかchowder?」と聞いてくる。


「話を聞く感じは…、俺をchowderに誘ったのと同じ相手から、招待メールを貰って始めたらしくて…、この前久しぶりに会ったらやつれていたから…」


高尾一の説明に山奈円が食い気味に「やめさせなさい」と言うと、もう一段申し訳なさそうに「それは言いましたが…」と言った後で、「会って貰えませんか?」と言ってきた。


高尾一の熱心さに思う所のあった山奈円は「まあ頑張ってくれているから善処はする」と言うと、「男友達ならパス。女友達でもパス、彼女なら会うわ」と言った。


高尾一は言いにくそうに「彼女じゃ…ありません…」と言って小さくなる。

会って欲しいが彼女ではない。

それで困っていると顔に書かれている。


「じゃあ女友達?」

「はい」


「恋人になる可能性は?」と言う山奈円の問いに、高尾一は真っ赤になって「俺ですよ!?そんな事ありませんよ!」と言ったが態度から答えは出ていた。


山奈円は「今からで、焼き鳥屋で、一杯呑みながらならいいわよ。完全な仕事ではなくね」と言うと立ち上がる。


高尾一は「聞いてみます」と言って携帯でメールを打つと「7時にならこっちに来れるそうです」と返事を見て言った。


商店街にある地元の人間しか行かない焼き鳥屋「鳥王」は今日も地元民で賑わっている。

高尾一も商店街の清掃を手伝ったりしているので見知った人達もいる。


「よう!円ちゃんじゃない!どしたの?社員研修?」

酔っ払った文房具屋のオヤジが声をかけると、山奈円は「晩御飯と青春の悩み相談と半分仕事」と言って、生ビールと焼き鳥の盛り合わせを頼む。

お通しと生ビールが出てきて乾杯をすると、山奈円は一気に半分飲んでしまい「今日も酒が美味い」と言って漬物の盛り合わせも頼んだ所で、高尾一の携帯には相手が駅に着いたことを伝えてくる。

場所を言うと、それから15分して恐る恐る扉を開けて可愛らしい女の子が店に入ってきた。


山奈円が「来たようだね」と言うと、高尾一は振り返って「こっち!」と女の子を呼ぶ。


女の子は酔っ払い達の好奇の目や値踏みするような目を見て怯えていたが、山奈円が「おばちゃんにチクるよ」と言うと、酔っ払い共は「いけね」と言ってチューハイを飲んで誤魔化す。そこで山奈円が「ほら、高尾君が仕切る」と言った声で高尾一は慌てて女の子を席まで連れてくると「山奈さん、この子が相談したい友達の山田満やまだみちるです」と言う。

山田満は「はじめまして。一の友達の山田満です」と言ってお辞儀をすると高尾一は「満、この人が俺の勤め先山奈相談所の所長さんの山奈円さん」と言って紹介した。


「一」と「満」、名前で呼ぶくらいには親しい仲。

山奈円はニヤリと笑うと「やまだ…みちるちゃんね」と言って「少し食べましょう?食べられないものはある?」と聞くと山田満はどれも食べられると言うので、焼き鳥の盛り合わせと生ビールを頼んだ。

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