* 魔導師・魔術師・魔法使いって何が違うの?


なかなか出てこない魔法、それには恵真がドアの外に出られない以外にも理由があります。魔力は多くの場合、先天的な力です。緑の瞳を持つ者が魔力を持っていて、その力の強さも瞳の色で決まってしまう。


61話で触れていますが、貴族の中には魔力を持つ者同士での婚姻を繰り返し、緑の瞳が受け継がれる可能性を少しでも増やそうとしています。ですが、もちろん必ず緑の瞳が継承される保証はないんです。


ですので、魔力を持っていること自体が希少でもあります。比較的薄めの緑の瞳でも魔術師たちにとっては誇りですし、周囲も魔術師を羨望のまなざしで見つめると思います。


わたあめを作っていた淡い瞳のルースは魔法使い、海のような爽やかな緑の瞳を持つオリヴィエは魔導師、そして王宮に勤めていた者たちは魔術師です。

魔導師、魔術師、魔法使い、その違いによって瞳の色も力も異なります。


1番力の弱いのが魔法使い。淡いかすかに緑色の瞳をした者が多いです。火や水は弱くとも冒険者としてパーティーに加わったり、街の仕事を請け負えます。冒険者といっても攻撃ではなく、主に野営や洞窟などで火や水を使うことが仕事です。

「魔力」を用いて「魔法」を使う人、それが魔法使いです。


次が魔術師。ここが1番色の幅が広く彼らは薄緑など淡いものから青みがかった緑など、緑色であることがわかる色合いの者たちです。

彼らは幼い頃から周囲からも期待され、貴族は家庭教師や学校で、教会などに預けられたものは教会付きの魔術師を通して学んできました。

「魔法」を「術」として学び、身に付けた者。それが魔術師です。きちんと学びを修めた者の中ですから、能力は様々ですが知識として人に教えるだけの術を知っているため、魔術師と呼ばれるわけです。


そして最も力の強い者、それが魔導師と呼ばれます。この者たちは深く濃い緑色の瞳を持ちます。歴史的にも稀な存在です。その魔力は他を圧倒するほどの力、それゆえに多くの期待や崇拝と共に畏怖、異質な存在である者への嫌悪、負の感情も向けられます。

そういった環境ゆえか歴史上でも民を救い、英雄として名を残す者、忌み嫌われ恐れられ名を残す者、極端な結果となっています。

「魔術」を持つ者やその未来を「導く」力を持つ者、それが魔導師です。



自身がどのような力を持って生まれてくるのか、それは誰にも選べません。ただ、緑の瞳を持った者の未来はそれを活かした未来、そんなふうにほとんど決まってしまっている。それは環境もありますし、緑の瞳という外見上の特徴でその力がわかってしまうからです。


魔力が弱いルースがその瞳を隠すようにしているのはそんな理由があります。長い前髪もフードも身を守る術なのだと思います。そんな彼はわたあめを作りながら生計を立てています。


魔法の中で最も使い道が限られるのが風です。水や火は力が弱くとも王宮内でも魔術師の補佐やさまざまな仕事があるんです。土の魔法使いは緑化などの美化や整備、雷の魔法使いは魔道具と相性が良く魔力を注入します。氷の魔法使いは冷却が出来ますから炊事場でも重宝されます。

光と闇は力がある程度ある者にしか発現しません。


そのため、風の魔法使い達は苦労をしています。ですが、ホロッホ亭で突然メニューに加わった「果実のサワー」で少し変化が起こるんです。

今までエールを好まなかった人たちにも人気となるサワーには「酒風水」が必要です。これを作り出したのが風の魔法使い達です。注目されなかったのが、果実のサワーで変わっていく。サワーを恵真が作り出したことを知って、風の魔法使い達は感謝をしています。でも、彼らは基本的にシャイなので上手く表現は出来ていません。



一方で魔力が強いオリヴィエもその力を持って生まれたことで、魔力を活かして生きることが決められていました。小さな体に背負うには大きな期待、ですが他者からの相反する感情もまた彼は強く感じて生きてきたはずです。

そしてオリヴィエが抱える周囲との違いは他にもあります。それがどうなっていくのか…そういった点もお楽しみ頂けたらと思っております。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る