第5話

りょうと付き合い始めてから、嬉しいことはたくさんあった。

幸せを感じることはたくさんあった。



平日の出張後、車を走らせて会いに来てくれた。

次の日は早朝に家を出ないといけなかったのだけど


[いつもありがとう!今日も頑張ろうね!大好き♡ りょう]


と、リビングに置手紙があった。




歯が痛くて悶えていたら、すぐに来てくれて歯医者まで送ってくれた。

同じ日、旅行会社に行く予定があったのだけど、りょうは関係のない予定だったのに、それも送ってくれて、その予定が終わるまで待っていてくれた。




欲しい家具があったから買いに行くのに付き合ってもらった。

家具の組み立ては全部りょうがやってくれた。

器用だから、得意なのかな~って思ってお任せしちゃったけど、実は苦手だったらしい。


「大好きな人のためだから、頑張ったの!」

と言ってくれた。

大切に使わなくちゃって思った。




週末は私も友だちとの予定を入れてしまうことが多かった。

でも、

「少しでも一緒にいる時間を作りたいから」

と言って、待ち合わせ場所まで送り迎えをしてくれたり、予定が終わって帰ってくる時間に合わせて家まで来てくれたりしていた。




友だちと旅行に行ったとき、

新幹線の時間に合わせて、駅まで車で迎えに来てくれた。

「荷物多いから、大変だよね」

と言って、キャリーケースやお土産の大きな袋、他にもたくさん、全部を家まで運んでくれた。




私が好きなキャラクターのグッズをお店で見つけると

「ひなちゃんが喜ぶと思って」

と言って、買ってきてくれた。







私のためにいろいろなことをしてくれているから、感謝の気持ちはもちろんあったし、私も何かしてあげたいなって思っていた。









だけど…


その優しさは、誰のためだったんだろう…?










一緒に過ごす時間が多くなれば、それだけ幸せを感じることも多かった。

でも、一緒に過ごす時間が多くなればなるほど、違和感や不安を感じることも少しずつ出てきた。







私は、PMSが結構ひどくて、生理前になると気持ちが落ち込んだり、ちょっとしたことで泣けてきたり、イライラしたり…


肌荒れがひどくなることもあるし、

過食になってしまうこともあるし、

なかなか自分でコントロールすることが難しいと感じることも多かった。



りょうと一緒にいる時間が増えてきたから、

このことも伝えておかないといけないかな、と思っていた。


機嫌が悪いって勘違いされても嫌だし。



りょうは優しいから、きっと理解してくれるだろうという安心感があった。




オープンな内容の話ではないから、

私も勇気を出して話してみることにした。





「ねぇ、りょうくん。

 PMSって知ってる?」




「何それ。よく分かんないや」




「月経前症候群ってやつなんだけど…

生理前になると出てくる症状というか」




「へぇー」




「人によって症状とかは全然違うんだけど、私の場合はー…」

と、自分の生理前の傾向について話した。



「だから、もしかしたら、今日機嫌悪い?とか、肌調子悪い?とか感じる日があるかもなんだけど、そういう時期なんだな~って思ってほしいというか…」



私なりに、勇気を出して打ち明けてみた。

「そうなんだね」

って受け止めてくれると思っていた。

でも、ちょっと違った。








「それってさぁ、病気ってこと?

 自分でコントロールできないもんなの?

 俺の周り、そういう人一人もいないんだけど」





「病気…とは違うと思うんだけど…

 個人差あるからさ」





「そっか。

 まあ、その期間は会わないようにするとか、何かしら工夫すればいいんじゃない?

 自分でどうにかしてほしいとは思うけど」








この人は、

生理に理解がない人なんだなって思った。







優しいんだけど、

気が利くんだけど、

自分が理解できないことに対しては、

そっけないんだな。


なんか不思議だな。






そんなことを思っていたら、涙が出てきた。






涙が出るのは、生理前だからかな。





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