第2話


初めて会った日から次のデートまで、毎日のラインのやりとりをした。


朝、ラインが届いていないかチェックするのが楽しみだった。


昼休憩、ラインを見るのが楽しみだった。


何を返そうかな?どんな話題をふろうかな?全てが楽しくて嬉しかった。



デートの数日前、どこに行こうか作戦会議の電話。


りょうがデートプランをいくつか考えてくれていたので、行先や時間はすぐに決まった。


そのあとは、ひたすら世間話。

気づいたら1時間以上話していたみたい。





約束の日。



城下町に行って、食べ歩きをすることにした。


りょうが車で家の近くまで迎えに来てくれた。


駐車場に車を見つけてそばまで行くと、車から降りて助手席のドアを開けてくれた。



「足元、気をつけてね」


「ゆっくりでいいよ」



なんて気が利く人なんだろう…

と思って、その優しさが嬉しかった。



並んで歩いているときも、危なくないように道を譲ってくれたり


ごはんを食べにお店に入ると椅子を引いてくれたり


暑くない?足疲れてない?

と気にかけて声をかけてくれたり




優しくエスコートしてくれる、

王子様みたいな人だな。





城下町を一通り回って、そろそろ帰ろうかと車に向かっているとき






「ねぇ、ひなちゃん」




「ん?どうしたの?」




「城下町のところ歩いてるときにさ、

手繋いでいいかなって迷ってたんだよね。

結局繋げなかったけど」



「そうだったんだね(笑)」







帰り道は手を繋いで、並んで歩いた。




優しいだけじゃなくて、

可愛い要素もあるのか…!

と思って、惹かれ始めていた。





だけど、

帰りの車の中での彼の発言が、私の中では気がかりだった。






「俺、親ガチャ失敗してるんだよね」





「え?どういうこと?」





「子どもの頃、父親から暴力ふるわれてたんだ。

 母親は俺のこと放置。

ネグレクトっていうのかな」





自分の生い立ち。

辛かったこと。

乗り越えてきたこと。

今の、家族との関係性。




たくさん話してくれた。




ただただ聞くことしかできなかったけど

「話してくれて、ありがとう」

と一言伝えた。





教員になるために、心理学や環境が子どもに与える影響について学んでいたので、



自分が受けたこと、

それと同じことをこの人もやるんじゃないか



という思いがよぎっていた。




もしこの人と付き合ったら、

私に暴力をふるわないだろうか?



もしこの人と結婚して子どもを授かったら、

同じように暴力をふるうんじゃないだろうか?




だけど




どうして教員をしていたのか聞いたときに


「自分は親に、優しくしてもらったことがないし、教えてもらったものもない。

だから、自分がしてもらえなかったことを、子ども達にしてあげられたらいいなって思って」


と言っていた。





相手を思いやる気持ちは持っている人なのかな?





会って2回目だから、まだ何も分からない。


でも、この日一日一緒に過ごして、りょうの良いところにたくさん触れることができた。


この人のこと知りたいって思ったから、

家族からのDVについては一旦目をつぶることにした。

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