第9話世界中古童話堂 ワープフープ

 

 痕跡を残して良いことは無い…ジンは長いブラシを持って壁を擦っている。

 脱いだジャケットは腰に巻いて必要以上に力を発揮していた。


 `国から国へ店を動く度に起こる事だ、今更怒ることでもないと自分に言い聞かせながら頭をひやした…やっとか…

     マリン様が起きたのか'

 

 理由はひとつだけ…瓶が見つかった、そして私はロンドンに放置したまま、店を閉めた。


 ジンは何も無かったように綺麗になった壁を背後にし、店があった路地を出たら直ぐに見えるプラタナスの並木道の前に立ち止まった。

 それから、なんとなく頭を上げてプラタナス木たちを注意深く見つめた。


  'やっぱりか…あるなぁ、、起きてからすぐ仕事をくれるご主人様に感謝だ、笑笑'


 ジンから2m先ぐらいにある一本の立派なプラタナスの枝には、月の明かりを受けてきらめく金色のフラフープみたいな物がかかっていた。



     ✳︎ ワープフープ 


 入る人の身長より2倍以上高いところに掛けて設置するのが基本ルール、 二つがペアになり出発地と到着地に一個づつ設置して使う。

 仕掛けた人は自由に到着地を決められる、

弱点はマスカでも昼間には見逃しやすいので設置した場所を忘れないように ✳︎



 そのワープフープの丸い円形の内側は夜空をハサミで切り取ったような異空に見えた、


 落ちる所は、絶対に寒いだろうと思ったジンは腰に巻いてたジャケットを着て腕を組んだまま歩き…渋い顔で木の真下まで近づき、あっという間にネオンピンク色の煙に姿を変え…

 もくもくと浮かび上がってピカっとしてる、

ワープフープの中に入り込み去ってしまった。

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