クイーン・プラムの抗争
かっぴーTAKA
第1話
私はムー横(村々横丁)で生きる女だ。ムー横の片隅の居酒屋で食事を終え、店を出ようとしたところ、陰気そうな店員に声をかけられた。
「あの、すみませんお客様。まだお支払いが済んでいらっしゃらないようですが......」
なにそれ? 私に金を出させるつもり? 私はムー横の女王なんだけど。
「私に声をかけないで頂戴。愚民風情が。ナンパなら他をあたりな」
店員は私におびえているようだ。おもむろに携帯を取り出しどこかへ連絡をしている。警察? 私は怖くないわ。だって悪くないもの。むしろ悪いのは店の方。私にケンカを売ったこと、後悔なさい。
遠くからサイレンが聞こえる。夜のネオン街に鳴り響く音にうっとり聞きほれてしまいそう。
「そこの君、止まりなさい!」
「いやよ、なんであんたらの指図を受けなきゃいけないの?」
暫く無視をして歩き続けていたら屈強な肉体の警官どもに囲まれた。
「困るよ。ちゃんとお金払ってくれないと」
店主らしき親父が私を睨みつける。周りの警官もあきれた目つきで私を見る。なぜそんな目で見られなきゃいけないんだ。私はムー横の四天王の一角なのに。
「お姉さん、お店でご飯食べたら代金を支払わなきゃでしょ」
「なんで私が払わなきゃいけないのよ。私は
全員顔を見合わせた。なんて無礼な奴らだ。
「プラム、さん......? でいい? 変わった名前だね。有名かなんか知らないけどね、ちょっと常識ないんじゃない。僕たちについてきてくれないかな?」
一番年を喰ってそうな警官がそういい、私の腕をつかんだ。
「やめてください、セクハラですよ。セクハラですよ‼」
「あーそういうのいいから。ほら、いくよ」
か弱い私が男に勝てるわけがなかった。私はなるべく周囲に聞こえるように大声で喚いた。警官どもも困惑している。これが正しい女の生き方だ。私が暫く喚いていると頭頂部が禿げ上がった50代のおっさんが近づいてくる。
「女の子泣かすなんてひどいよ君たち、早く解放しろ」
彼は吉田さん。私のお客様だ。
「吉田さ~ん、久しぶり! 来てくれたんだ。この人たち私が無銭飲食したっていっていじめてくるんだよ? ひどくない?」
「えっ、プラムたん可哀想。僕が追い払ってあげるからね。おいお前ら、僕のプラムたんをいじめるのはやめろ! 警察に通報するぞ」
「いえ大丈夫です現在増援要請中ですので。ところであなた誰ですか? この人の関係者?」
「ええまあ、いうなら僕とプラムたんは愛で結ばれた間柄と言いますか」
きしょいんだよなこの親父。ただの金づるのくせして恋人面しやがる。
「まあそんなことはいい! プラムたんは先逃げて! 僕がこいつら追い払って追いつくから」
吉田はそう言って警官たちに殴りかかっていった。私は隙を見て警官の間をすり抜ける。
「う、う、痛い、痛いよ~助けてプラムた......ぎゃ~!!」
背後から吉田の叫び声が聞こえたが、私は無視をして夜のムー横の闇へ消えた。
逃げた甲斐も虚しく私は捕まった。交番にはすでに吉田もいた。
「プラムたん、つかまっちゃったんだね」
吉田は僕のせいだ、と小声でぶつぶつ呟いた。その通りだ。
「君たちねぇ、逃げ切れるわけないでしょ。食い逃げって言ってもたったの562円だろ? 払えよ」
警察は圧をかけてきた。そんなのに屈する私ではない。
「でもさっきよっしーが払ってくれるって言ってたから~」
そういいつつ、チラリと吉田の方をみると奴は何やら興奮していた。
「僕がプラムたんが食べたご飯のお金払っていいの? 喜んで払うよ」
吉田にとって私に貢ぐのは喜びらしい。それならこいつに払わせておこう。
「ほら、本人もこう言ってるんだからさ。私を開放してちょうだい」
警官は渋っていたが、吉田がどうしても払いたいと喚いて動かないため折れたようだ。
「わかったわかった。じゃああんたはもう帰っていいよ。あ、一応身分証明書だけ見せてね」
私は嫌々ながらも免許証を見せた。
「田中梅って本名なんですね......あっ、どうもありがとうございます。今度は食い逃げしないように」
警官はニヤニヤしながら免許証を返してきた。どうやら私の名前を馬鹿にしているらしい。不快だったが、こいつに何を言っても無駄だろうと思い、黙る。
奥では吉田が私の飲食代を肩代わりしていた。お礼に今度唾をかけて踏んでやろう。
「お前は散々暴れまわったからな。あの女の食い逃げ分と合わせて被害額2万7000円だ」
「ふぁっ⁉」
どうやら私が逃げた後、暴れまわっていたらしい。だがそれは自業自得、大人しく捕まっていれば500円で済んだはずなのに。吉田には悪いが私に逮捕歴は似合わない。「
クイーン・プラムの抗争 かっぴーTAKA @kappy_taka
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