第3話 喧嘩
「ねぇ、覚えてる?」
「あなたが私のプリンを食べた時の事」
「私が仕事から帰ったら食べようと思ってたプリンを食べた時の事」
「めっちゃ楽しみにしてたプリンを食べた時の事」
「忘れたなんて言わせないわよ」
「一日限定300個で人気だからすぐ売り切れるんだから」
「あなたの分も買ってきたのに」
「2個も無くなってるってどういう事よ?」
「どれだけ」
「買うのにどれだけ・・・」
「代わりの買ってきたって」
「スーパーで3個一緒のやつじゃん」
「その内の1個をあなたが食べてるし」
「『同じ』じゃないでしょ?」
「作り方が一緒?」
「作り方も、材料も、原料もこだわりがちゃうわ!」
「という事で、まだ謝礼をしてもらっていない事になります」
「どうすればいいって?」
「そうだなぁ」
「同じプリンを買ってきてもらってもいいけど」
「手に入れられると思ってい・な・い・の・で」
「ここ!」//SE雑誌のページを開く音
「ここ行こう」//SE指でページを指さす音
「ここのハンバーガーが人気なの」
「肉厚でジューシー、チーズがとろけて野菜のフレッシュさがサッパリさせてくれるハンバーガーが食べたい」
「そういう謳い文句だから」
「っていうか連れてけ」
「それで半分許す」
「半分許す」//首を振って譲らない
「ダメ!半分」//首を振って相手の申し出を受け付けない
「その後(あと)に買い物をします」
「夕食は外で食べるならお店を探してください」
「家で食べるならあなたが作ってください」
「今日一日で私が満足する事ができたらプリンの話はチャラにしてあげましょう」
「はいっ、早速準備して」
「それじゃぁ、出掛けるわよ」//SEドアを開ける音
「すごい並んでる?」
「あのプリンはこんなモノじゃないわよ」
「ほら、頑張って」
「曇ってるから涼しくて良かったんじゃない?」
「眠そうね」
「遅くまでパソコンやってたでしょ?」
「ゲーム?」
「ふ~ん調べものしてたんだぁ」
「早く寝なさいって言ったのに(笑)」
「調べものは終わったの?」
「そうなの?じゃぁ今日一日めいっぱい付き合ってもらいます」
「テイクアウトの人もいるのね、案外早くお店に入れそう」
「ハンバーガーとアイスティ-をお願いします」
「おっ、コーラにするの?良いわね定番だけど鉄板な組み合わせ」
//SE皿とコップが置かれる音
「うわぁ、キターーー」
「ありがとうございます」
「これが噂のハンバーガー」
「すっごい」
「ハンバーグがジュウジュウ鳴ってる」
「ゴクン」//喉が鳴る音
「いざ、実食」
「いただきますぅぅぅ」
「〇※△$#“%&!!」//SE口を閉じて言葉にならない奇声
//SE美味しすぎて興奮しながら彼の腕をバンバン叩く音
「っはぁ~、美味しかったぁぁぁ」
「1時間並んだ甲斐があったわね。余は満足じゃ」
「!!・・・半分ね」
(危ない危ない、そう簡単に許すもんですか)
「晴れてきたけど、眠い?大丈夫?」
「だったらこの後(あと)はあなたの服を買いに行きます」
「いらない?」
「同じような服しか持ってないよね?良いの?」
「もうちょっとお洒落をしてもらいたいんだけど」
「・・・・・」
「!!その為に来てるんだから、任せといて」//頼まれて嬉しい声
//SE自動ドアの音
「シャツはサイズが分かってれば良いんだけど、ズボンは試着しないと」
「だってジーンズしか持ってないじゃない?」
「他にも持っておいた方が良いわよ」
「落ち着いた大人って感じのやつ」
//SE自動ドアの音
「まぁまぁイイ服が買えたんじゃないかしら?」//SE人ごみの雑踏音
「今度出掛ける時はこの服を着てね」//SE紙袋の音
「まだ時間があるけど、どうしようか?」
「映画?何か観たいのあるの?」
「良いよ、行こう」
「荷物はコインロッカーに入れておきましょうか」
「映画館なんて久しぶりね」
「というかあなたと映画館に来たのは初めてな気がするわ」
「『デート=(イコール)映画館』が当たり前すぎて誘った事なかった?」
「じゃぁ今日は二人の初映画館の日ね」
「分かるぅ!最初の映画情報も楽しみの一つなのよね」
「・・・え?・・」
「だってポップコーン買うでしょ?」
「食べないのぉ!?」//すっごい驚いた声
「あっじゃぁ一つで」//恥ずかしくて小声
「家で映画を観てる時は、飲んだり食べたりしてたから」//恥ずかしくて小声
「『お互いに知り合えたね』じゃないのよ(笑)」//恥ずかしいけど大声
「いやぁ、まさかあんな結末になるなんて」//SE人ごみの雑踏音
「すごく面白かったわ」
「・・・あなたもポップコーン食べてたわよね?」
「手が伸びてきましたけど」
「そうよ、映画館のポップコーンはおいしいんだから」
「うん。これからも一緒に食べよ」
「もうこんな時間。あっという間ね」
「それで、結局夕飯はどうしようか?外で食べる?」
「え?作ってくれるの?」
「そういえばあなたの手料理は食べるの初めてかも」
「今日はあなたとの初めてが多い日ね(笑)」
「それじゃぁスーパーに寄って帰りましょうか」
「何作るの?あっ言わないで!食材で当てて見せるわ」
「人参、豆腐、ひき肉、卵、片栗粉…etc」
「・・・ハンバーグ?」
「いただきま~す」
「熱ッ!」
「フーフーフー」
「あっ美味しい」
「うん。美味しいよ」
「・・・辛っ!!いけど美味しい」
「ゴクゴクゴク」//SE水を飲む音
「ふ~、ごちそうさま」
「麻婆豆腐。少し辛かったけど、美味しかった」
「市販の素は買ってなかったよね?一から作れるんだ?すご~い」
「今度また作って」
「え~じゃぁ一緒に作ろう。作り方教えて」
「どうしたの?」
//SE冷蔵庫のドアの開閉音
「デザートもあるの?」
「・・・えっ?これって」//期待する声
カチャ //SE容器とスプーンが当たる音
「茶碗蒸しかい!!」
「いや、キョトンな顔をされても」
「意味深な笑みをするからプリンだと思ったわよ(笑)」
「美味しいですけどねッ!」
「すごい滑らか」
「銀杏もちゃんと入ってる」
「はぁ~ごちそうさまでした」
「結構本格的な茶碗蒸しだったわね」
「満足したかって?」
「う~ん。今日一日の厳選なる審査の結果」
「ご~~かくにしましょう」
「プリンの事は許します」
「けど」
「たまにで良いからご飯を作ってね」
「本当に美味しかったんだから」
「あっ片付けは一緒にやろ?」
カチャカチャ//SE水洗いと食器の音
「う~ん」//何か物足りない感じで
「さっきスーパーで買ったプリンも食べて良い?」
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