凜への報告

「あー、あの公園に現れたダンジョンのボス、怪獣だったんだ」


「そうさ。 おかげで病院で治療する羽目になったよ」


 森林のダンジョンの攻略から2日後。

 謙二は、【アトリエRIN】で一息入れていた。

 あの後、役所のスタッフから病院に行く事を勧められ、残ったダメージの回復などの治療を受けた。

 そして、昨日は医者からの厳命で、アパートで身体を休める羽目になったのだ。


 かなり退屈を強いられたが、当時買ったラノベを読んだり、ゲームをしたりして何とか時間を潰すことができたようだ。


「凜にも言おうと思ったが、昨日はオーダーメイドの日だったんだろ?」


「うん。 運悪く鋼鉄の武器の製作を依頼されてね。 ほぼ半日制作室に籠ってたよ」


「鋼鉄か……。 やはり加工でか?」


「うん。 加工スキルや製作スキルを使ってもね。 使用中は製作中の物から離れられないから、一人だと厳しいよ。 終わった時には危うく漏らしそうになったし」


「最後は言う必要はないだろうよ……」


 最後の凜の発言にツッコミを入れる謙二だが、彼女が言うように、一人で鋼鉄を加工と製作をやろうとすると、他の金属と比べてかなりの時間を要する。

 内容次第では、先ほどの凜の発言のように半日製作物と付きっきりでないといけないので、トイレの問題が発生するのだ。

 彼女の場合は、完成した後、運よく漏らさずに済んだのが救いだが。


「でもやはりトイレの問題は重要だしね。 一昨日行ったダンジョン、単純構造だけどエネミーの数が多かったんでしょ?」


「ああ、途中で無理やり神速アクセラレイトで突破した位だ」


「それがない攻略者は、時間だけが掛かってトイレになんて事もあるからねぇ。 今は消えたからいいけど、同質のダンジョンの場合は、トイレを済ませる余裕はないよね」


「そこは俺も思ってたところだ」


 トイレの問題にはダンジョン内でも差し掛かる。

 一昨日の森林のダンジョンでも、単純構造ながらエネミーの数がこれでもかという多さだった。

 謙二などの神速アクセラレイトのスキル持ちならば、攻撃を仕掛けつつ強行突破でボスエリアまで行けるか、そうでない場合は、倒しても倒しても数が減らないという状況にまで陥り、時間と共にトイレの問題が発生するという事だ。


 なお、一昨日のダンジョンは攻略すれば消えるタイプのものだったが、別の形の同質のダンジョンでもそれは同様である。


「で、奥のボスが怪獣だったんでしょ? 確か【ウドラー】だっけ?」


「そうだ。 至る所から枝を触手のように動かして攻撃していた。 動きに反応して下からも攻撃してきた」


「下からもか。 それはいやだねぇ。 大丈夫だった?」


「ああ。 思った以上のダメージを受けたが、何とか弱点の鼻のような突起物を斬り落としたら消滅した。 属性スキルは通用しないからな」


「火のスキルとかはと思ってたけど、ウドラーには通用しないんだ……」


 そして、その奥に出没したボスのウドラーについて触れた。

 攻略すれば消えるダンジョンなので、強さもかなりのものだったのだ。

 データ上はランクはBで、【怪獣】にカテゴライズされてるエネミーだからだ。

 さらにウドラーには火属性のスキルも通用しないと聞いて、凜も衝撃を受けていた。


「ともかく一昨日はお疲れさまだよ。 今日はここの地下で私と楽しもうよ」


「ああ、久しぶりに発散したいからな」


「じゃあ、クッキーとお茶をまず召し上がってからだね。 せっかく用意してるんだし」


「そうだな。 いただくとするよ」


 一昨日の事を労った後で、凛は今日はここ【アトリエRIN】の地下で色んな意味で楽しもうと誘ってくる。

 謙二も発散したいようで、その誘いに乗る。


 まずは、用意されたクッキーを食べて、色んな雑談で盛り上がった後で、地下の小部屋に向かい、そこで二人は色々と楽しむのだった。

 

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