【怪獣】ウドラー戦

「こいつは……、もしや?」


 エネミーの群れを強引に突破した先には、他の木々よりも大きく、そして不気味な緑色に染められた巨木のエネミーがいた。

 それを見た謙二は、咄嗟にスマホを見る。

 突入前に、対策庁経由で神界から見守っている女神の一柱が調査したボスエネミーデータが送られてきたのだ。


「エネミー名は【ウドラー】、ランクはBって、【怪獣】かよ!?」


 ボスの画像が、今見ている敵の容姿とが一致してる事から、このボスは【怪獣】ランクの木のエネミーである【ウドラー】で間違いないだろう。


「よりによって怪獣と戦い羽目になるとはな。 だけど、こいつを倒せばこのダンジョンは消えるはずだ」


 突入前にもたらされたもう一つのダンジョン情報は、誰かがボスを倒して攻略するとそのダンジョンは消えると言う、一度きりのダンジョンだという事。

 その分、ボスエネミーは強めになっているようだ。


「さぁ来い! 徹底的に斬り刻んでやる!!」


『ギギギギ……!』


 ここで、ウドラーが謙二に気付いたのか、多数の枝が触手のような感覚で襲い掛かって来る。


「う、おおっ!」


 それを謙二が回避したり、剣で切り裂いたりして対処するが、回避しきれずかすり傷とはいえ、ダメージを食らってしまう。


「くっ、あの枝は避けようとしてもホーミングで逃がさないか……!」


 狙いを定めた獲物を確実にとらえるために、枝による攻撃は回避しても追尾されて捕まるか貫かれるだろう。

 

「再生はしないようだし、多数の枝を斬りまくって、弱点であるあのピノキオみたいな鼻を斬り落とすしかないか」


 避けても追尾してくるので、リスクを取ってでも枝を斬り落としつつ弱点の鼻をも斬り落とすしかなさそうだ。

 流石は、【怪獣】と称されるBランクエネミーである。

 

神速アクセラレイト!」


 そう決意した謙二は、まず神速アクセラレイトを使って、一気に枝を切り刻もうとした。


『ガガガガガッ!!』


「なっ、下からだと……!?」


 だが、それを嘲笑うかのように幾つかのウドラーの枝が下から出て来たのだ。


「がはっ!!」


 当然ながら、それを避ける事が出来ずに、謙二は下からの枝の攻撃を受けてしまう。


「うぐぐ……、下にも枝を潜ませていたのか……! こいつぁ、骨が折れるぜ……」


 右足や左腕を貫かれたダメージをポーションで回復させる謙二。

 応急処置とはいえ、回復スキルの使えない謙二にとってはポーションの存在は必要だろう。


「トレントは火が弱点だったけど、こいつは火を始めとした属性スキルが効かないからな……」


 木のエネミーであるウドラーだが、トレントと違い属性スキルが一切効果がない。

 代わりに弱点である鼻のような出っ張りを斬り落とせば、相手を倒せるだろう。


「とにかく、地面を走ると下からの枝攻撃にやられるから、ここは……」


 何度か迫ってくる枝攻撃を切り裂きながら凌ぐ謙二は、意を決して再度接近を試みる。


神速アクセラレイト!」


 再び、謙二は神速アクセラレイトを使用して、間合いを一気に詰める。


『!?』


 だが、小幅のジャンプを併用して一気にだ。

 それに驚くウドラーは、多数の枝を斬り落とされているのもあってか、何も出来ないでいる。


「やはり、下からの攻撃は足が地面についてないと迎撃出来ないみたいだな」


 してやったりという様子の謙二は、ウドラーの攻撃のチャンスを与えないように一気に剣を振り下ろす。


「メテオドライブ!!」


『ギアァァァァッ!!』


 弱点の鼻を切ろ落とされたウドラーは、断末魔をあげながら一気に崩壊していく。

 少しして、ウドラーは消滅していった。


「ふぅ……、倒せたか」


 ウドラーを倒した謙二は、再度ポーションを飲む。

 意識してなかったが、背後から枝が彼を突き刺そうとしていたようだが、かすり傷を与える程度で終わってしまったようだ。


「流石に手強かったな。 最後に一矢報いようとしてくるとはな」


 ポーションを飲んで、一息入れていると、ダンジョンの空間が歪む。


「お、ダンジョンが消滅するか」


 歪みが暫く続き、ようやくその歪みが収まったと思えば、ダンジョンがあった場所は、本来の公園に戻ったようだ。


「これで、攻略完了か。 スマホにも示されてるし。 さて、役所に行って報酬を貰わないとな。 いてて、流石に食らい過ぎたか……」


 流石に戦利品は拾う余裕はなかったが、ウドラーを倒してダンジョンを消滅させたので、役所に報告をして報酬を貰うだけだ。

 謙二は、蓄積したダメージを何とか堪えつつ、役所へと向かうのだった。


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