特定野党【エネミー共存党】

「攻略者は消えろぉぉぉ! 魔物と共存しろやぁぁぁぁ!!」


 アラーム音が鳴り響く中で、発狂しながら何人かの攻略者と一般の人間を襲撃している複数の男たちがいた。

 逃げ惑う一般の人間にも容赦はせずに、狂った主張をしながら襲い掛かる辺り、かなりヤバそうだ。


「よりによってこんな所で襲撃とはな」


「うん、私も切れそうだよ。 念のために武器をカバンに入れてて良かったよ」


 それを見た謙二と凜が、せっかくの買い物ムードを台無しにしてくれた複数の男たちに対して悪態をつきながら、鞄から武器を取り出す。

 この鞄は、魔道具の【アイテムボックス】で、対策庁かた支給されるものだ。

 見た目に反して、かなりの容量を誇り、大きめの物も圧縮して入れられるので、長期的なダンジョン攻略にも役に立つ。


「あいつらの腕にある腕章の印……、狼のマークや。 もしや……?」


「美波ちゃん?」


「知ってるのか、美波?」


 一方で、美波は杖を用意しながら男たちの腕に付けられている腕章のマークを見て雰囲気が変わる。

 謙二と凜は、そんな美波を心配しつつ聞いてみた。


「あれは、特定野党の一つの【エネミー共存党きょうぞんとう】の支持者と議員や」


「共存党?」


「まさか、その名の通りの……?」


「うん。 あれはダンジョンから出てくるエネミーとの共存を訴え、攻略者やそれを支援する政府や財閥を排除すべきと主張する危ない野党なんや」


 美波曰く、あの男たちは現政府が危険視している特定野党の一つ、【エネミー共存党きょうぞんとう】の議員とその支持者だという。

 この党は、ダンジョンが現れた時から化け物……、【エネミー】との共存を訴えており、同時に攻略者とそれを支援する政府と財閥などの排除を主張しているというのだ。


「問答無用で襲撃してくるんだぞ? 共存なんて出来るわけがない」


「うん。 それも女神様からも証明済みなんやけどね。 あいつらは誠意がないからだと一蹴して、共存をしろと言い続けてるんよ」


「最悪だね。 危険すぎるよ、その思想」


「せやから、あの政党は新生した公安の監視ならびに対処の対象になってるんよ。 酷い時は、戦える攻略者が処分しても構わないみたい」


「なるほどね」


 あまりにも危険な思想であるために、政府によって新生された公安の監視ならびに対処の対象になっている党となっている。

 公安に睨まれてても、所かまわずこういう主張をし続けているのは、ある意味図太いというのか、都合が悪い内容は効く耳持たない感じだろう。


「なら、私達がやるしかないね。 見たところ一般の人達にも襲い掛かってるし」


「あいつらにとっては、自分達以外はみんな攻略者なんよ。 警察も特定の財閥に圧力を掛けられたりと役に立たないそうやから、代わりにあいつらを対処してもいいみたいやけどね」


「さっき、スマホの通知で【エネミー共存党きょうぞんとう】の人物の処刑を正式にダンジョン対策庁から依頼された。 ここ以外の施設にも襲撃して攻略者が数人殺されたらしから、問答無用でやってくれとの事だ」


「なら、やるしかないね。 今は戦えるのは私達だけだし」


「うん。 何人かの攻略者もやられてるからね。 【攻略者保護法】違反だしね」


 15年前の出来事から様々な理由で警察があまり機能しない為に、国が攻略者に直接捕縛、最悪その場で処刑を依頼するケースが多くなった。

 保守的な与党が過半数を占めているが、数少ないとはいえ、特定野党の行動は、今の情勢ではあまりにも厄介すぎるからだ。


 スマホからも正式にダンジョン対策庁から、【エネミー共存党きょうぞんとう】の支持者と議員の排除を依頼されたので、三人はそれに応じる。

 通知の内容では、ここ以外の施設にも襲撃しており、そこでは数人の攻略者が殺されているとの事らしく、捕縛しても意味がないのだろう。

 すぐさま、現場に突撃する三人。


「そこまでだよ!」


「な!? お前らも攻略者か!!」


「【攻略者保護法】違反だから、お前らをこの場で処刑しろと国から依頼を受けたぞ」


「お前らも共存を拒絶するのかぁぁ!!」


「問答無用で襲ってくるエネミーとは共存不可能やって、現実を理解してないからね。 悪いけど、うちらがあんたらを排除するよ」


「お、お前は、飛鳥の……!!」


 支持者の一人が言い終える前に、謙二がすぐに剣で突き刺す。

 心臓を的確に狙われたその支持者は、うつ伏せに倒れたまま息絶える。


「やっぱり向こうにとっては、飛鳥財閥は厄介者扱いだねぇ」


「ぐああぁぁぁぁ!!」


 一方で、凜は銃型の魔道具をエネミー共存党議員に向けて連射し、ハチの巣にしていた。

 かなりの弾丸が、議員の身体を貫いたようで、その議員も仰向けに倒れて息絶える。


「さて、あんたらも同罪やで。 攻略者だけでなく、一般の人にも傷を負わせたみたいやしね。 電撃スパーク!!」


「「ぐぎゃあぁぁぁぁ!!」」


 最後に美波が、二人の支持者を纏めて電撃スパークで感電死させる。

 やってることがあまりにも残酷なのだが、この者達には慈悲はない。


「すみません、お手酢をおかけしました」


「ひとまず、国からの依頼でその場での処刑になりましたが……」


「構いません。 今回は手順をすっ飛ばしてでもこの輩たちは処刑にしないといけなかったので」


「遺体は、我ら公安が処分します」


 エネミー共存党の議員と支持者を国の依頼に則って、その場で処刑を完了したと同時に公安がやって来た。

 謙二たちにお詫びをしながらも、奴らの遺体の処分は任せてくれと言って、遺体を運んでいく。


「ひとまず、終わったか」


「そうだね。 でも、数日はここは営業停止になりそうだね」


「そうやね、血も飛び散ってるし、救急車も来てるし」


「お昼は別の所で食べようか?」


「ああ、そうしよう」


「うん」


 国の依頼によって処刑にした後なので、気が進まないのだが、今回の襲撃事件を受けてこのショッピングセンターは数日営業停止になるだろうと予測し、他の飲食店で食事をする事にした。


 せっかくのお出かけがこんな形になってしまったが、戦利品のラノベを手に入れられたのは不幸中の幸いだったので良しとしよう。

 三人はそう心で呟くのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る