アトリエRINにて

「なるほどね。 その廃校ダンジョンに美波ちゃんも行ってたんだ」


「ああ、打撃縛りで裏門付近で戦ってたんだよ」


「で、うちがヘマをしたところで謙二さんに助けられたんよ。 そこから一時共闘でダンジョンをクリアしたんよ」


「そういう事だったんだねぇ」


 謙二から事情を聞いた凜は、納得した様子で腕を組んでうんうんと頷いていた。

 出会った経緯と一時共闘になった事も凛に打ち明けた。


「しかし、魔法系スキルを封じられた場合に備えてかぁ。 確かに一部の創造者がそれ対策の魔道具を作ろうとしているけど、なかなか成功しないんだよね」


「ああ、魔封じのスキルは必中だからな。 掛けられたらどうしようもないだろうな」


 現在は、数少ない創造者のうちの何人かは、対魔封じの魔道具の開発に力を入れているようだが、なかなか上手く行かないらしい。

 何せ、魔封じのスキルはエネミーが使う場合は必中なので、使われたらどうしようもないのだ。


「だから、美波ちゃんはそうなった場合に備えて打撃である程度対処できるようにしようと」


「うん。 謙二さんの教えのおかげである程度コツを掴めたしね。 あとは少しずつ練習を繰り返すだけなんよ」


 そのため、美波があの廃校ダンジョンで打撃縛りで戦っていたのだ。

 謙二の教えもあって、上手くコツを掴んだようで、あとは繰り返しやっていくだけである。


「おっと、立ち話もなんだし、中でお茶していかない? ケンくんも剣の使い心地とか聞いておきたいし」


「そうだな。 美波もいいか?」


「うん、ええよ」


 ある程度話をしたところで、凜が中に入ることを勧めた。

 お茶も用意するとの事で、謙二も美波もそれに応じ、裏口から店の中に入ることになった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「地下があったのか」


「うん。 地下のある場所から美波ちゃんの別荘の地下に繋いでいてね。 市販用に作った武具を運んでもらってるんだよ。 もちろん、国の許可を得てね」


 アトリエRINの中に入り、案内してもらった先は地下だった。

 凛曰く、地下のある場所と美波の住む別荘とは国の許可を得て繋いでおり、そこから凜が作成した市販用の武具を運んでもらってるようだ。、


「市販用は確か、鋼鉄より下の鉄製で作った奴か?」


「色々だね。 革製の服や樫の木を加工した杖とか。 まぁ、鋼鉄よりは加工がしやすいし、3時間でたくさん作れるからね」


「大半の攻略者って市販で買った武器を愛用しとるしなぁ。 うちはここでオーダーメイドしてもらった杖を使ってるんやけど」


「オーダーメイドでの予約は、週3日に絞ってるからね。 内容によってはその日の予約は一つの枠で終わる事もあるしね」


 市販で売られている武具を大半の攻略者が使用しているので、それの時間を使うために予約は週3日に限定し、予約の内容次第でその日の予約枠は一つで締め切る事もある。

 美波の杖も、その予約を使って作られたオーダーメイドの杖なのだ。


「そうだ。 ケンくんに渡したミスリルの剣、どうだった?」


「ああ、切れ味も抜群だったよ。 軽くて振りやすいのに、強度もかなりのものだったな」


「そりゃあよかったよ。 試作とはいえ、渾身の力で作ったからね」


「あの人体模型を豆腐のように切り刻んでたしね。 流石だと思うよ。 広島あたりに発生したダンジョンで執れたんよね」


「そうそう。 国が採取して私を含めた創造者に分けてもらってたんだよ。 確か、国がミスリルの件で飛鳥財閥に管理してもらうって話を聞いたけど」


「うちもあとで確認するよ。 多分、お父さんはダンジョン配信関係においても色々動いてるし、兄や姉も関わっとると思うし」


 お茶を用意した後で、凜がミスリルの剣について聞いて来た。

 謙二が使い心地とか強度を評価すると、ホッとした様子を浮かべていた。

 また、国がミスリルの管理を飛鳥財閥にやってもらうと言う話もあると聞いた件も美波に尋ねる。

 美波は、本家に確認すると答えたが、多分間違いないだろうとの事。

 また、今は禁止しているダンジョン配信の解禁に向けて動いてる話もあるようだ。


(国からの信頼も高い飛鳥財閥だからこそだろうなぁ)


 そんな飛鳥財閥が、国からの信頼が高いからこそ色々動けるのだろう。

 現に、殆どの財閥は国に睨まれている状況もあり、なかなか動きづらい感じだ。

 それだけ、国が指定した優良財閥でないと任せられない案件が多いのだろう。

 飛鳥財閥もいわゆる国が指定した優良財閥の一つであるわけだ。


「さて、せっかくだし明日はどこかに出かけようか。 店も明日と明後日は休みだし」


「ああ、いいな。 俺も明日は羽を伸ばしたいしな」


「美波ちゃんもどう?」


「うちも一緒に行っていいなら、そうするよ」


「なら決まりだね♪」


 やや真面目な話に終始した所で、凜が明日にどこかに出かけようと提案する。

 謙二も流石に羽を伸ばしたい気分なので、それに応じる。

 美波も自分が一緒に行ってもいいなら、一緒に行くと言った事で、明日は三人で出かける事が決まった。


 なお、その夜は謙二と美波も凜の店で一泊したのだった。


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