財閥の少女と一時共闘
「ご、ごめん! そんなつもりじゃ……!」
「あ、いや、あなたは悪くないから。 気にせんといて」
助けに入ったものの、尻餅をついていた状態の少女のスカートの中を見てしまった謙二は、必死で謝罪する。
少女は慌ててそんな謙二を宥めている。
謙二の視点では、少女のスカートの中から白の下着が見えていたらしく、それで彼は固まったようだ。
「そういえば、あなたはどうしてここに?」
それはともかく、必死で謝罪する謙二を何とか落ち着かせた少女は話を変えて来た。
謙二が何故、このレベル1のダンジョンに来たのかが気になっていたようだ。
「ここって、俺が今住むアパートの近くだからな。 攻略しておかないと下手したら住む場所がなくなるしな」
「そうなんや……。 近くにダンジョンがあると嫌やもんね」
少女の問いに正直に答える謙二。
その答えを聞いた少女も納得の様子だった。
「で、あんたは何でこんな所に?」
「うちは、物理縛りで杖だけでエネミーを倒そうとしてここら辺で戦ってたんよ。 うちはスキルが後衛寄りやから、魔法系スキルが封じられて手も足も出ないのは嫌やからね」
「ああ、なるほど。 高いレベルのダンジョンでそういう奴らが多いと聞くな。 何人かが魔法を封じられて何も出来なかったって話もあったか」
一方で、謙二は少女が何故この廃校ダンジョンにいるのかを聞いてみた。
少女は、魔法を封じられた場合の対策として杖だけでエネミーを倒そうとしていたそうだ。
その戦闘中の際にバランスを崩した所で、謙二と出会う形になったのだろう。
「じゃあ、この際だしここから【一時共闘】するか?」
「え? でも、うちは……」
「ダンジョン攻略するのに、私情は挟まないようにするさ」
「うん、あなたがそう言うなら……」
一通りお互いの話を終わらせた所で、謙二は少女に【一時共闘】の申し入れを行った。
これは、パーティーを組めない制約がある個人攻略者がそのダンジョン限定で複数での同行が可能になる方法である。
攻略した際も、個人で攻略したとみなされ、個別に報酬が入るのであまりトラブルを起こさなくてすむ。
その【一時共闘】を申しだされた少女は、少し言い淀むが謙二の説得で受け入れたようだ。
「ひとまず名乗ろうか。 俺は、
「うちは、
「飛鳥……? あれ、どこかで聞いたような……?」
ひとまず一時共闘をする事になったので、お互いの自己紹介をした。
そこで少女……美波の苗字を聞いて、謙二はふと何かを思い出そうとしたようだ。
しかし、なかなか思い出せないでいる。
「まぁ、いいか。 ともかくここは一緒に行動しよう。 よろしくな、美波」
「うん、こちらこそよろしくね、謙二さん」
結局、何も思い出せないので頭を切り替えて、廃校ダンジョンの攻略に力を入れる事にする。
お互い握手をしてから、本格的にダンジョンの攻略を始めていく。
謙二にとっても、他の人とダンジョンの攻略をするのは初めての事。
今までソロでやってきたので勝手は違うのだが、そこは何とかやっていけるだろう。
今以上の期待を寄せて、廃校ダンジョンの奥へと進んでいくのだった。
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