幼馴染みは【攻略者】であり【創造者】

「ここか」


 翌日、謙二が来た場所は廃校となったが、未だに解体されていない市立の小学校だ。


「確か、レベル1の廃校ダンジョンにカテゴライズされてたな」


 専用のスマホで見た情報によると、廃校ダンジョンというカテゴリーに加えられており、ダンジョンのレベルは1だ。

 難易度的には簡単な方なので、攻略報酬も平均2000円と安い。


「とにかくここが俺の住むアパートの近くにあるのはいただけない。 早めに攻略していこう」


 しかし、場所が謙二が住むアパートに近いので、早い目に攻略しておかないと、引っ越しを余儀なくされるからだ。


「それに、が作ったこの装備も慣れておかないと」


 謙二は手に持った新しい剣を見ながら、ここに来る前の事を思い出していた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「やあ、来たねケンくん」


「相変わらずモノ作りが好きなのは変わらないな、りん


「それは褒め言葉として受け取っておくよ」


 謙二の住むアパートに住む廃校ダンジョンに向かう前に幼馴染が営んでいる【アトリエRIN】に来ていた。

 その幼馴染である茶髪のポニーテールの白衣の少女の西山にしやま りんから歓迎を受けていたところだった。

 彼女は攻略者であると同時に、アイテムや武具を作るスキルを持った【創造者そうぞうしゃ】でもある。

 攻略者としての力は現時点では、謙二より下だ。

 しかし、創造者としての実力はかなり高く、【ダンジョン対策庁】の支援によってこの店を開いたのだ。


「今日は廃校ダンジョンに向かうんだね」


「ああ。 どうもあそこは俺が住んでいるアパートの近くにあるらしくてな。 さっさと攻略して住まいを安定させたい」


「レベル1のダンジョンとはいえ、あそこを放置されると住む場所が無くなってしまうからね」


 謙二は凛に廃校ダンジョンに向かう理由を説明する。

 レベル1のダンジョンとはいえ、近隣にあるので住まいを安定させるためにも攻略しておきたいのが本音だとも。

 凛もその理由を聞いて納得するように頷いていた。


「よし、ならこれを使ってよ」


「これは……?」


 謙二の話を聞いた凛から、スラッとした長剣が渡されたのだ。

 これを見た謙二も、あまりの綺麗さと見た目とは違う何かに気付いて驚く。


「これは本来、私がケンくんの誕生日プレゼントに渡すつもりで作ったミスリル銀で作った剣だよ」


「ミスリル銀? 日本にあったのか? ファンタジーの架空の金属だと思ったが」


「去年から広島の山間部に出没したダンジョンで発見、採掘されたんだって。 対策庁の人が、補助金と共にこの金属もたくさん送られててね」


「それでか……。 確かに今使ってる剣もそろそろ限界が来てるからな……」


 どうやら、謙二の誕生日プレゼントとしてミスリル銀を使って作成した剣のようだ。

 去年から広島の山間部に出没したダンジョンで、ミスリル銀が沢山採取できるようになったそうだ。

 国もそこに派遣して、ミスリル銀を採取。

 何人かの創造者、もしくは凛のような兼業創造者にミスリル銀を送っていたらしい。


「しかし手に取るとしっくり来るな。 これ、大変だったんじゃ?」


「それがね、銅や鋼鉄を加工するよりは簡単に加工できたんだよ。 それでスキルを駆使して理想の剣を作れたんだ」


「マジでか!?」


「うん」


 さらに、凛の感想ではミスリルだと他の金属に比べて加工がしやすいらしい。

 当然ながら、彼女が持つ創造者用のスキルをふんだんに駆使して短時間でこの剣を仕上げたようだ。

 参考までに、銅や鋼鉄はスキルを使っても加工などに時間が掛かるという。


「だから、これをケンくんにあげるよ。 お代はいいから」


「分かった。 受け取っておくよ」


 それを差し引いても今まで使ってた剣に限界が来た時期なので、これは有り難いだろう。

 誕生日プレゼント用として作成したミスリル製の剣を受け取った謙二は、凛にお礼を告げてから、目的の廃校ダンジョンへと向かい、今に至るのだった。


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