草の魔女

 「お師様、何処ですか?」

 との呼びかけに、師が姿を現してくれたことはない。

 だが呼べばいつも

 「ここだよ」

 との言葉を返してきてくれた。

 どこまでも続く青空。見渡す限りの草原。吹き渡る奔放な風。そんな中に建つ小さな小屋で、私は一人、師に教えを乞うている。

 「魔術書に、雨を降らせる魔法を使ってはならないとありましたが、何故ですか?」

 「それはね」

 足下で、背の低い草花が風に揺られて笑うような音を立てた。

 「命あるものが自由にして良いことではないからだよ」

 人は、私を魔女と呼ぶ。

 だが私には、魔女と呼ぶべき師が、此処に居る。

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