鋼鉄の魔女

 「師匠はさぁ。工房幾つ傘下にしたら気が済むんスか」

 合併同意書と登記謄本を纏めながら溜息を吐けば、師は鉄を打ちながら鼻で笑った。

 「傘下になりたきゃなればいい。あたしはただいい道具が作りたいだけだ」

 「そんなんだから魔女って言われるんスよ」

 「上等じゃないか」

 そんな師は、世界屈指の製鉄師だった。調理道具 から斬馬刀まで彼女に作れない道具は無い。

 『人が最後に頼るのは魔法ではなく道具』の信条の元、自らの技術を極めた挙げ句に幾多の工房を無意識に蹂躙して付いた異名が『鋼鉄の魔女』。

 鉄を女が触るのは禁忌だった時代はどこへやら……。

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