第27話 ヨハナ 小人の出現
ヨハナは、二二才になりましたが、生まれた村を離れず、両親と一緒に暮らしていました。今日は、友人の結婚式に招待され、さきほど帰ってきたばかりです。
ヨハナが、自分の結婚は、どうなるのだろと考えていると、目が冴えて眠れなくなりました。時間は、おそらく真夜中近くでしょう。ベッドで、うとうととまどろんでいるヨハナの耳元で、小人がささやきました。あっ、あの時の小人さんだとヨハナは、すぐに気がつきました。ハンスとヨハナが幼かったときに、小人に頼んだ願いを確かめに来たのだと。
小人は、ハンスに確かめると同時に、ヨハナにも、たずねることにしたのです。小人が聞いています。
「あなたは、ハンスと結婚したいですか」
「ええ、すぐにでも」
とヨハナはこたえました。
しかし、小人は、残念そうに
「あなたの願いは、かないません。ハンスは、王女様と結婚したいと考えています」
「どうしてハンスは、そんなことを考えたの」
「ハンスは、今まで誰も見たことがないオルゴール作りに夢中です。それが、できれば、ハンスは王女をめとることができるのです」
小人から、ハンスの心変わりを聞かされたヨハナは、さめざめと涙を流しました。もう、結婚する準備はできていたのです。
幼かったとき、真夜中の教会で聞いた「人の心は、わからない。人の心は、すぐかわる。女の心は、すぐかわる。男の心もすぐかわる」という小人の歌の意味が、はっきりと分かりました。
消える間際に、小人は、あなたの願いを一つだけは、かなえられますと付け加えました。そして、あなたの大事なものと交換ですがねというのを忘れませんでした。
ハンスが奉公に行ってから、ヨハナが会ったのは、二度、奉公明けと遍歴の旅から戻ってきたときだけです。最後に会ったときには、結婚の誓いを新たにしていたのです。
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