第20話 職人選び 大口たたきのムント 

 次に、グランドオルゴールを作るには、莫大な費用がかかるが、工夫次第で、少ないお金でも作り出せると自信たっぷりに話した職人がいました。名前をムントと言います。

 新たに作るのでは、時間も金もかかるので、国中にあるオルゴールを安く買いあつめて、木の材料は、すべて使用することとし、金属の材料もできるだけ、もとのままの姿で細工するというのです。

 楽師長が、

「オルゴールをいくら集めても、音が良くなることはないと思うが。どうするのか」

「良い音色のオルゴールでも、部品全てがいいものとは限りません。良い音色のオルゴールの良い部品だけを集めて、組み立てるのです」

「それで、今までになかったような音色を出せるのだろうか」

とたずねるとムントは、

「そのしくみは、私の頭の中にあります。秘密のことなので、お話するわけにはいきません」

と答えながら、ハンスの技を盗めば、どうにかなるだろうとたかを括っていました。

 この提案には、大商人の出である大蔵大臣が、興味を持ち始めました。それなら、あまり出費にならず、国庫が枯渇することもないだろうと考えたのです。

 楽師長は、ムントの持参した懐中時計に組み込んだオルゴールの音を三回聴きなおしました。どうも、鳴らすごとに音の高さがずれていると思ったのです。しかし、後の二人の大臣には、それがわからず、結局、ムントは残りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る