第17話 音楽の好きな王様
ハンスが、旅職人になって、諸国を歩いていると、オルゴールに魅入られた王様の話を聞きました。もともと、王様は、大の音楽好きで王様のところには、作曲家や有名な演奏家も訪れ、宮廷の楽師になりたいと、希望する者も多くいました。
そんな王様が、なぜオルゴールに夢中になったのか。それは、いつでもどこでも音楽を聞きたかったからです。しかし、それは、なかなか難しいことでした。当時のことですからレコードは、まだ存在せず、管弦楽を聞きたいと思えば、楽団に演奏させるしかなかったのです。さらに、楽団を常時抱えることができたのは、王様や大司教という位の高い人に限られていました。
王様がいくら音楽が好きで、演奏を命じても、すぐに音楽を聞くことはできません。楽団は、楽器をあやつる楽師たちが集まってはじめて音楽を奏でることができたからです。
王様の希望する曲は、楽師長を通して、前もって言って置かなければ演奏はしてくれません。夜、急に一人で音楽を聞きたいと思ってもできない相談でした。
他国で新しい曲が流行していると聞いても、その楽譜は、すぐには手に入りません。運良く、入手できたとしても、人数分だけ、楽器別に楽譜を揃えるには、元の曲をパートに分けて、しかも手書きで写す専門の職人に頼む必要があります。
ですから、からくりで音楽を聞ける箱があると聞いた時は、半信半疑でしたが、王様は、出入りの商人から贈られた大きなオルゴール箱を広間に据え付けて動かすように命じました。
音色は、聞くに堪えないほどのものでしたが、人ではなく機械が演奏することに、王様は感じ入って、これをもっともっと改良したら、自分が望むような音楽をいつでも聞くことができるのではと考えたのです。
最初のころのオルゴールは、とても高価でしたから貴族や大商人だけが、所有できるものでした。しかし、王様のことですから、大きな箱のオルゴールでも満足できません。懐中時計に組み込まれたオルゴールには、珍しさがありましたが、大勢の人に聞かせるものではありませんでした。
王様自慢の宮廷楽団と同じように、美しい音楽を奏でられるオルゴールを作れないかと考えた王様は、ついにお触れをだしました。
「 告 余の宮廷楽団と聴き比べても、どちらが本物かわからないほどのオルゴールを作り出した者には、我が王女を授けるとともに、グランドオルゴール制作者の称号を与える」
」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます