第14話 偽オルゴールつくり ルンゲ
時計の修理の注文が来るのは、当たり前ですが、近頃、オルゴールの修理依頼が増えてきたような感じがします。村の大きな農家にもオルゴールが広まってきたようです。ハンスへの修理依頼が増えてきました。
依頼のあった家で、そのオルゴールの値段を聞くと、相場よりもかなり安く、どこの親方が、値段を下げるためにどのように作っているのかが気になります。あまり、値段を下げることは、ギルドの掟で禁じられていたからです。
ハンスは、オルゴールの箱の下を見ました。そこには、いつ、どこの工房で作られたのかが、刻印されています。その刻印を写し取り、ハンスは、ある町の親方に、そのような工房があるのかと聞きました。親方が、工房の一覧を見ても、そのような名前は見当たりません。
「これは、どこで入手したのかな、もしかすると、もぐりでどこかの職人が、製造販売しているのかもしれない」
と言って、その親方は、ギルドをまとめている親方に手紙を出しました。しばらくして返事が来ました。各地で、いい加減なオルゴールが出回っているという内容で、これから調査をする予定だと書いてありました。
そうとは、知らずにソフィアは、安物のオルゴールを売り歩いていました。ある日、宿に泊まっているソフィアに会いたいという人物が、現れました。
「私は、オルゴール製造ツンフトのディレクトア.というものだが、ソフィアさんとやら、最近、この付近でオルゴールを売り歩いているようだね。別に、自分が作ったものを売り歩くのは、構わないが、あまり安い値段で売られると、他の業者が迷惑する。それに、安いというのは、どこかで手を抜いたとしか思えない。それでは、オルゴール全体の品質を下げることになり、同業者のギルドとしては、見過ごしができない」
ソフィアは、来るべきものが来たと思いました。いつかは、こうなるだろうと予想してはいましたが、
「それに、あなたはポール親方の一人娘だと聞いたが、それではなおのこと、あまり大げさにはしたくない」
とまで言われては、これ以上は続けるのは無理だと思いました。
調べは、ルンゲにも及んできました。ムントからも、オルゴール製造のギルドが調査をしているという噂を聞いたとの手紙が届きます。
これで、大金を儲けて、世間あっと言わせるほどのオートマタを作りたいと考えていたルンゲでしたが、ギルドを敵に回すほどの気持ちは、ありませんでした。
ルンゲは、ソフィアとムントをフランスに呼んで、
「やめよう、これ以上やると生きていけなくなる」
と言いました。
ソフィアは、悔しそうですが、ムントは、あまり気にならないようです。
「これからどうするの」
ソフィアが聞くと、
「かなり金はたまったので、持ち運べるほどの大きさのオートマタを一体つくりたい」
と、まだオートマタを作る夢を忘れてはいません。ただし、ムントだけは、細々とオルゴール修理の旅を続けることにしました。
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