第4話 昼休み

 四時間目も数学Ⅲで、流石に聞いてないと置いてかれそうだったので、内職をせず真面目に授業を受けた。

 忠告してくれたアーコに感謝だ。今更ちゃんと聞いても良く分からなかったけど!

 そしてようやく授業が終わった。ついに昼休みだ。


「アーコーーー!」

 そう言って私が抱き着くと、アーコは母性たっぷりで

「どうしたのー」

 と言いながらなでなでしてくれた。

 幸せだ。私はアーコから生まれたのかもしれない。

「数Ⅲ分かんなかったー」

「自業自得だな」

 急に突き放された。DV彼氏の素質があるかも、アーコ。


「まあ後で私が教えてやるから。とりあえず、昼飯買いにコンビニ行こ」

「うん」

 やっぱりアーコ優しい。好き。



 コンビニに行きながらも私たちは【高校生しかできないこと】について考えていた。


「案外、高校生しかできないことなんて大してないのかもよ?」

 そういったのはアーコだった。

「人生いつからでもやり直しができる。何でもできる。そう思った方が素敵じゃない?」

「……確かに」

 思わず私はそう言っていた。

 コンビニに着いて、ウィーン、と自動ドアが開いた。

 店内はウチの高校の生徒でガヤガヤとしていた。


「じゃあ私はしゃけおにぎりと、コーンパンと、みそ汁かな」

「健康的だな」

「え、そう?そういうアーコは何買うのさ」

「カップラーメン。二百円弱で満足感あってコスパ最強じゃん?」

「健康的じゃないね」

「まあな」


「「ぷっ」」


 二人してけらけらと笑った。

 何でもない会話なのに、ただただ楽しくて、面白くて、幸せだった。


 そうして私たちはレジに並び、会計を済ませた。


「あのさ、アーコ」

「ん?」

「高校生にしかできないこと、分かったよ」

 私がそう言うと、アーコは興味深そうにした。

「へえ。何だったの?」


「それはね」


「今、この瞬間、全部だよ。確かにさっきアーコが言ってた通り、いつからでも何でもできる。それは素敵だし、その通りだと思う。でも、それでも、”高校生の私”は、今しかいないんだ。全部が全部、高校生の私しかできない体験で、かけがえのない思い出なんだよ」


「はは。確かにそうかもな」

 アーコはそう言って笑っていた。


 教室に戻った後、私はお昼ご飯を食べる前に、ノートを開いた。



【高校生しかできないこと】

・全部‼‼

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高校生しかできないこと! 零下冷 @reikarei

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