第6話 余韻

「・・・分かりました。申し訳ございませんが次の授業が始まってしまうので失礼致します」


グレイの差し出した手紙をそっと受け取ると、動揺していたグレイがミルと呼んだ女の子と共に食堂から離れていった。


三つ目の幸運。それは昼休み終了間際だったということだ。普段なら手紙を受け取ることも拒否されていたかもしれないが時間をかけるわけには行かなかったため手紙を受け取ってもらうことが出来たのだった。





「は・・・はは、まずは第一関門突破だ」




グレイはホッとしたため力が抜け座り込んでしまった。


しばらく立てなかったため、グレイは次の授業に盛大に遅刻してしまい、教師に物凄く怒られてしまったが、グレイは達成感の余韻に浸っていたため余りダメージは少なかった。


幸いにも授業後に残ってお説教ということもなく、ひとしきり注意を受けただけで授業への参加も認められた。


(あの手紙を読んだバルムさんが屋上に来てくれるかは分からないが、俺としては屋上に来てくれる前提として動くしかない)


だが、グレイは授業を聞いている余裕はなく、板書を写すことはせず、この後の流れについての想定を始める。


(近くで見ると凄く綺麗だったなぁ・・・っていかんいかん。作戦を練らねば)


気を抜くと惚けてしまうのを頭を振って正気を取り戻し、グレイは考えを纏めていく。


グレイの周りの生徒たちはぼーっとしては頭を振るグレイを見て気持ち悪がって見ていた。


そうこうしている内に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。


「それでは本日の授業はここまでとする。今日はホームルームも無しだそうだから帰っていいぞ」


教師の言葉で各々が帰り支度を始める。


「グレイ〜。今日はどうする??」


授業の終わりを聞いたエルがグレイのところにやってきて放課後の行動を尋ねる。


「悪い!今日は大切な用事があるんだ。また明日な!」


「う、うん。分かった。また明日・・・」


焦っていたグレイはエルの言葉を最後まで聞かず、走り去っていく。


「今日のグレイは、珍しく何だか変だったなぁ。午後の授業も遅刻してきたし、、、」


エルがみるみる小さくなっていくグレイを見ながら少し寂しそうに言う。


「午前中は普通だったよね。いつからかな?あれは・・・そうだ!食堂でアリシアさんを見かけてからだ!!」


エルはグレイの様子が変わったきっかけに思い至り、思わず声を出す。


「ふふふ。これはひょっとするとあのグレイにも春が来たのかな」


エルは何だか嬉しくなった。


親友・・・否、少なくともエルは心友とまで思っているグレイにとうとう春が来たかもしれないのだ。


流石に相手は高嶺の華過ぎる人物なので可能性は1%にも満たないだろうが実る実らないに限らず全力で応援しようと思った。


「よし!そうと決まれば相談が来たときに頼りにされるよう参考になりそうな本を図書館に行って探してみよう」


エルはそう思い立つや急いで図書館に向かうのだった。


グレイは本当に良い友人を持ったものである。

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