第4話 手紙
それからグレイはまず始めに購買に向かった。
素早く目的のものを探す。
(これだ!)
何故か置いてある便箋と封筒を手に取り、ついでに筆記具も併せて購入する。
教室に戻れば筆記具くらいあるのだが、アリシアが教室に戻る前に先手を打っておきたかったグレイは教室よりも食堂から近くにある購買で準備することにした。
ちなみに便箋と封筒はなるべく可愛らしいと思うものを選んだ。
無事目的のものを購入したグレイはここで始めて時計を見る。
(後、20分か)
昼休みは50分しかない。既に半分以上が使われていた。
グレイは適当な空き教室に飛び込み、便箋や封筒を取り出す。
(表紙はラブレターと言われても疑問に思われないものを用意した。だから、中身はそうである必要はない。バルムさんを呼び出し、二人きりになることに焦点を当てた文章を書けばいい)
グレイは頭を整理し、便箋に向かう。
1分経過。
未だグレイの手は動かず。
3分経過。
同上。
5分経過。
同上。
「あーーー!分かんねぇ!!もういい!即興で書く!!」
グレイは中々書き出せないことにイライラし、ひとまず書いてしまえと書き始めた。
『親愛なるアリシア・エト・バルム様
私の名前はグレイ・ズーと申します。
突然のお手紙申し訳ございません。
勝手なことを申しますが、本日の15時に校舎の屋上でお話したいことがございます。
あなたの人生に関わることです。
是非ともいらしてください。
グレイ・ズー』
「よし!書けた!!」
怪しさ100%の文章だがもはや書いた内容を推敲している時間はない。
グレイは便箋を封筒に入れると、食堂に向かって走り出した。
(後、10分か。不味いな)
グレイは焦り始める。
アリシアがこの時間まで食堂にいるとは限らないからだ。
もし居なければアリシアの下駄箱にいれておく他ないがグレイとしてはそれは避けたかった。
アリシアが何時に帰るか分からないというのもある。
だが、それ以上に手紙に目を通してさえもらえない可能性が高かったからだ。
あれ程の人気者なら毎日誰かしらからのラブレターを貰っていてもおかしくないだろう。
そこにグレイの手紙を入れたとしても埋もれてしまうという結果が容易に想像できた。
次の授業中に乗り込むという手段もない訳では無いが、教諭に捕まりアリシアと話すこと自体ができなくなるため避けたかった。
さらに、昼休みの後は90分の授業が1つあるだけなので授業間の休み時間に渡すという手段も使えない。
(頼む!まだ食堂に居てくれよ!!)
グレイはそう願いながら走る速度を上げる。
「はぁ。はぁ・・・着いた」
全力疾走したため、呼吸が乱れる。
ひとまず、物陰に隠れ、食堂から目的の人物が出てくるのを待つ。
物陰に隠れたのは如何にも待ち伏せしていると分かれば要らぬトラブルに巻き込まれる可能性があるからだ。
「はぁはぁ・・・後8分か」
グレイは時計を見る。
「ちゃんと食堂に居てくれよ」
グレイは呼吸を整えながら、アリシアが出てくることを願い待機するのだった。
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