第2話 学園一の美令嬢
「あ~。やっと昼飯だ!」
グレイはお昼休みを告げるチャイムを聞き、机に突っ伏す。
月曜日から座学ばかりで疲れ果ててしまったのだ。
「おーい、グレイ~。学食行こうよ?」
エルがグレイの席に向かってやってくる。
「おう、行こうぜ」
お腹がペコペコなグレイに断るという選択肢はない。
二つ返事で了承すると席を立上り、二人並んで学食に向かう。
「なぁ、エル」
「ん?どうしたのグレイ?」
「いつも思うんだが、俺なんかと行動していて嫌じゃないか?」
グレイはクラス内でいじめられるということは無い物の平凡な能力しかないため、グレイ・ズーという名前の頭の文字をとって良く『グズ』と呼ばれてからかわれていた。
『グズ』というのは異国の言葉で鈍臭いという意味らしい。
グレイ自体、否定できないと感じているため余り気にはしていなかったが、よく一緒に行動してくれているエルの評判に傷がつくことだけは気になっていた。
「え?嫌なんてことないよ。グレイといると楽しいもの」
何を当たり前のことをといったように答えてくるエル。
余りにもまっすぐな目をして言うため、グレイは思わず口ごもる。
「そ、そうか?なら良いんだ」
少し照れ臭くなり、エルから視線を外し前を向く。
「あれ?グレイもしかして照れてるの?」
勘の鋭いエルがグレイの様子を見てにやにやする。
「て、照れてないぞ」
「・・・説得力無いな~」
そんなやりとりをしていると学食に到着した。
学食同じ入口から入り左右に別の空間に分かれている。
貴族用とそれ以外用である。
両者は同じくらいの大きさなのだが、貴族の人数は全体の10%位なので1人当たりの面積が異なっている。
グレイは言ったことないがエルの話ではメニューも異なるらしい。
「あ、あそこに席が空いているよ」
言うやいなやエルが持ち前の身体能力を駆使して席をとる。
「僕が席を確保しているから、先にグレイが買ってきてよ」
「ありがとう。それだと効率が悪いから俺がエルの分も買ってくるよ。何にする?」
「そう?ならAランチ!」
「分かったAランチな」
俺はエルの食べたいものを聞くや列に並ぶ。
しばらく並んでいると、入口の方から何やらどよめきが起こる。
「ああ!アリシア様よ!!」
「月曜日からお目にかかれるなんて最高だわ」
「いつ見ても神々しい」
「お近づきになりたい」
周りからはそのような声が聞こえてくる。
アリシア・エト・バルム。
グレイたちが暮らしているバルムス王国の貴族の中でも最も高貴な3大貴族の一つであるバルム家のご令嬢である。
容姿端麗、成績優秀というまさに才色兼備を実際の人物にしたような女性で、綺麗な長い赤髪、透き通るような琥珀の瞳が印象的だ。
余り他人に興味のないグレイも名前くらいは聞いたことはある。
(確か、学年は同じだったっけな)
普段ならわざわざ見たりしないのだが、学食の列に並んで手持ち無沙汰だったため、何となく見てみた。
「・・・そんな馬鹿な」
衝撃的な事実に思わず声に出してしまうグレイ。
『アリシア・エト・バルム。15歳8ヶ月。残り寿命5時間19分』
普段は見ないようにしているにもかかわらず、あり得ない寿命に思わず凝視してしまったのだった。
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