二日目
探検の始まりには水が欲しいところだ。
そろそろ喉が乾いて限界だったが、幸運なことに、私たちは湧き水を発見する。四角い瓦礫の隙間から、透明な水が流れていた。透明すぎて光を激しく乱反射している。流石は異世界。水質も一味違うようだ。加えて、食欲をそそるような、自然豊かな山の匂いもする。
私は直ぐに飲もうとしたが、群青に手を叩かれてしまった。何を考えているんだと、不用心すぎると鬼のような形相で怒鳴られた。しかし、彼も相当喉が渇いているようで、怒声は掠れていた。
「とにかく、一度濾過・煮沸消毒をするべきだ。ただでさえ汚いのに、そのまま飲むなんて危険すぎる」
転移の影響で、彼は重度の潔癖症にでもなってしまったのだろうか。
しかし、彼の言うことももっともなので、私たちはその辺に落ちていたボトル(元の世界からの漂流物だろう。あたりにちらほらと散らばっている)や布を使い、濾過装置を作成。濾過した水は、これまた漂流物である鍋に入れ、十分ほど煮沸殺菌した。
ようやく飲めた水は、頬が落ちるほど美味しく、命の味がした。
黄昏時。私は幻想的な光景を見た。
そこは、パチパチとパステルカラーのシャボン玉が弾ける、素敵な彫刻の山脈だった。
彫刻は丸みを帯びたもの、角張ったものなど多種多様だったが、どれも濡れていた。
おそらく、シャボン玉の液がかかったのだろう。近づくと彫刻から小さな花火が咲き、形容し難いいい匂いがした。
旅の土産になればと一つ拝借しようとしたところ、土気色で険しい顔をした群青に止められた。彼の表情を見て、私は彫刻を落としてしまう。
彼は、怒っているようにも、絶望しているようにも見えた。
…一体、彼はどうしてしまったのだろう。
本当に、可笑しくなってしまったのだろうか。
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