三日目
人間は、水があれば二週間は生きられると聞いたが、果たして本当だろうか。
昨日、飲み水を確保した私たちは食料を探したが、見つからなかった。正直、飢餓感がある。起きてから今まで、お腹が鳴って仕方がない。
群青の顔色も悪くなっているので、心配だ。早く、食料源を確保しなくては。
最悪だ。飲み水が底をついてしまった。漂流物の水筒には、穴などなかったはずだ。これは、適切に水の量を測れなかった私の落ち度だ。群青は、もっと節水していたのに。
これは私の考察だが、どうやら、私たちは転移してから意識を失い、数日経ってから目覚めたらしい。どうりで、一日目から喉が異常に渇いていたわけだ。お腹の空きようが異常なはずだ。あと何日、生きられるのだろうか。
いや、弱気になってはいけない。群青は私が守るし、私は群青に守られているので、勝手に死ぬなんてできない。うん、頑張ろう。
今日の夜、家族で遊園地に行く夢を見た。両親に会いたくなったが、おそらくもう会えないだろう。寂しい。けれど、それは群青も同じ事。せめて、忘れないように、私たちの両親のことを記録しておこうと思う。
私は父の連れ子で、群青は母の連れ子だ。両親は、私たちが幼い頃に離婚し、結婚して、家族になった。
父の名前は、色崎太陽。元妻とは私の教育の方向性の違いで離婚したそうだ。
母の名前は、色崎
彼らはどちらも宇宙系の学者らしく(詳しい話は聞いたことがない)、NASAだとかにも発言権を持っていたそうだ(本当かどうかは怪しいが)。彼らは宇宙なんたら学の第一人者で、何処かの賞も受賞している。
あれ、なんでこんなに覚えていないんだろう。
兎に角、事情があって一人親となった彼らだったが、研究でチームを組んだことがきっかけで仲良くなり、結婚まで至ったらしい。
とても優しい両親だった。彼らは学者だが、遊ぶことの有意義さも知っていた。
彼らは家の側に研究所を立て、休憩中に私と群青に会いに来てくれるほど、子煩悩だった。私と群青は、英語以外は特に英才教育を施されることもなく、普通の子と同じように伸び伸びと育った。平日は保育園で友達と遊び、放課後になればぐっすり眠る。休日は、彼らの予定がどうにか空けば、遊園地に行った。母の下手くそな料理の味は、今でも大好物だ。
父は、よく私の頭を撫でてくれた。落ち込んでいる時や、上手くいった時、大きな手の平で撫でてくれた。今はもう気色悪いが(反抗期中)、幼い頃の私は、それが何よりも嬉しかった。群青は、小学校三年生くらいから反抗期に入り、両親はショックを受けていた。
母は、私のことを本当の娘のように接してくれた。血が繋がっていないと知った時はショックだったが、そんなことは関係ないとすぐに思えた。母は私の良き理解者で、憧れでもあった。「子供は遊んでなんぼなの」と豪語したのは、他でもない彼女だった。
ついでに群青も。彼は私の半身だ。親友であり家族であり、なんでも相談できる、私が世界で一番信用している人物だ。多分、彼が傷つけば激怒するだろうし、彼が笑えば私も楽しくなってくると思う。小っ恥ずかしいので以上で終わりにする。
明日は、食料が確保できていることを祈る。
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