第77話 俺らの七日間駆除③
さて3日目はご遺体の方々が語った内容を書類にして届けようと思ったのだが、うっかり落してしまってな…
いやぁ、場所が悪かった。警視庁の入口付近で落してしまったからなぁ…
しかもすぐに見知らぬ方がそれを拾い上げて庁舎の中に入っていったんだ。
まあ、自分の物ですと手を挙げられないような代物だから泣き寝入りは仕方ないよなあ…うん。
あと、各拠点が慌ただしく動き出し、防犯カメラやら人員増強がされていた。
そして増強された人員の中で、持っていたらお巡りさんに捕まってしまうような飛び道具を所持している奴が居たので即座に通報。
通報から3分で背広姿の警察官?がその男を捕まえてくれた。
その後、奴等の拠点4ヶ所に強制捜査が入り色々押収された模様。
その際に何故かご遺体が発見されたらしくかなりの騒ぎになっていたようだが…敷地に入っていないし中を見ていない俺はそれ以上のことは分からない。
一般市民は漏れ聞こえた話を聞く程度しか出来ないわけだから。
『お前なぁ…あちらと本格的に事を構えるつもりか?』
磯部課長から伝言クレームを受けた。
「いやいや、俺としては銃を携帯して歩き回る連中が居ると通報したりしただけだが?それにうちの弟たち、やはり狙われていたぞ」
『…スマン。登下校の巡回を強化させる』
磯部課長はそう言ってはいるが…警察による巡回網は既に限界だ。
「その部分に集中させることで他が疎かになられても困る。佑那は友人達が居るから問題無いだろうし、友紀は…アレをどうにかしようとしたら恐らく国が途轍もなく痛い目に遭う。いつも通りの巡回で構わない」
『そうは言ってもだな…』
悔しいのだろうが、そこは抑えて欲しい。
「商店街にまで入り込もうとするような連中も居るんですよ?警察官数人でどうこう出来るわけ無いじゃないですか」
『なっ!?』
「下手に警察が動けば陽動として彼方此方で犯罪が起きますよ」
『!!』
ほぼ確実に起きる可能性を伝えると磯部課長は絶句した。
「組織ではない組織、そういった連中です。数百という連中が東京に居るわけですから、戦力は確保しておいた方が良い」
『…お前さん、奴等を何処まで知っている?』
「金と薬と暴力で東京の歓楽街のおよそ半分と若年層を取り込んでいる愚連隊。このままだとあと切っ掛けがあれば4~5年で東京の歓楽街の8割は奴らの手に落ちるでしょうね」
『……何とかできんのか?』
「正攻法で店を買っている連中に?必要悪として偽善も行う組織を徹底的に潰そうとした結果、組織に拘らない外来
『…居るのか…そういう奴が』
「娘さんが友人に勧められてオクスリに手を出した…とか、家族がそういったお店のお姉ちゃんに酔って手を出して…とか」
『ハニートラップまでか…』
「中間管理職で上がりそうな人達の家族情報をあちらの国経由で得ていますからね。楽でしょうよ」
こちらが知っているだけで本庁で3名、所轄だとどれぐらい居るのかは…考えたくもない。
通話を切り息を吐く。
「電話をしながら戦うのは…なかなか気を使うな…へぇ?合衆国籍の2世ねぇ…まあ、国籍が国籍だから大佐に連絡するか」
分かっていることだが、それでも報告・連絡・相談はしないとマズイ。
かといって警察に届けるのも違うので大佐へと連絡をした。
…このオッサン、30分と経たずに来やがった。
どんだけ周りに迷惑掛けてかっ飛ばしてきたんだよ…
そして倒した連中を数人の軍人が担いでバンに詰め込んでいく。
『4人はそちらの国籍で3人は東南アジアのバラバラの国籍だが…何故か佐世保所属となっているから調べてくれ』
『はあ!?待ってくれ。そんな馬鹿な話が…』
『あっちこっちだいぶ汚染されているんだろうな。金で買える愛国心…誰が手引きしたのかの情報もいるか?現役以外は全員故人だが』
『故人?…まさか』
慌てた様子でこちらを見る大佐。
『数年単位で口封じしているんだろうな。退役後の事故や突然死が多い。因みにまだルートは別の奴が引き継いでいるらしいぞ』
『……緊急連絡と人員の洗浄作業を行う。情報感謝する』
『で、状況は?』
『…下院の議員2名が怪しい。現在全力で対応中だ…補填に関しても上で検討中だ』
『国の総意として喧嘩を売ってきたのでは無いと?』
まあ、全部情報としては知ってはいるが。
きちんと一応の役職持ちから聞かないとな?
『勿論だ。国が喧嘩を売るのなら私は日本に国籍を移すよ』
『良いのか中将』
『私は大佐だ』
『そうだな。フェイスレス中将?』
『…私はジョン大佐だ』
『ジョン・ドゥ大佐』
『『……』』
大佐は『そこまで分かっているのか』と小声で呟き頭を振る。
『改めて言わせて貰うが、我々合衆国に敵対するつもりは一切無い』
『今はその言葉を信じておくよ』
それだけ言って俺はその場を離れた。
さて、合衆国も俺に関与していると分かった上で…喧嘩を仕掛けてくるのかが見物だな?
世の中、裏で大騒ぎになっても表はここまで静かなんだな。
4日目の時点で某国の拠点全てが引き払われた。
同時におよそ170名あまりの愚連隊上層部が緊急帰国した。
まあ、それでもざっくり700くらいは東京には居るんだが…
そして、友紀が帰宅途中に車に轢かれそうになった模様。
猛スピードで突っ込んできた車は友紀に当たる前に不自然なカーブを切り現場から数十メートル離れた壁に激突し爆発。周辺への人的被害は運転者のみだった模様。
そして…それをトリガーとし奴等が動き出した。
夜叉達が。
因みに友紀は普通に帰ってきた。
同級生に近くまで背中を押されながら帰ってきたらしい。
「───友紀。ちょっと聞きたいんだが、砂糖壺に黒砂糖をどれだけ入れた?」
俺の問いにチョコンと首をかしげる。
[小粒の黒砂糖を入れられるだけ入れたよ?]
「そっかぁ…だからあんな大軍なんだな…」
[?]
「無くなっているみたいだから追加で入れてやってくれ」
[うん。あっ、全くないや…いつも助けて下さりありがとうございます]
友紀はそう言って拝みながら砂糖壺に黒糖を入れていく。
大きな物は喧嘩にならないようにと、ある程度砕いて入れていた。
ああ、これは夜叉達張り切って駆逐するんだろうなぁ…とちょっと遠い目をした。
5日目、日本国内で某国大使館職員含め数十名の不審死が大きな騒ぎとなった。
そして…某国の諜報部に大規模なテロがあったようで関係者含め数百人が犠牲となる事態となったらしい。
情報屋から聞いた話だが、機密情報やデータまで全て”破壊”されており、犯人はおろか侵入経路すら全く分かっていないらしい。
心当たりはあるかとわざとらしく聞かれたので[夜叉の仕業だ]と答えたらため息を吐かれた。
俺があちらさんと事を構えている事を知っている各方面から質問や問い合わせが来たが素直に[友紀を警護している夜叉の軍勢が動いただけで俺は知らない。詳しくは夜叉本人に聞いてくれ」と返したら黙ってしまった。
某国は日本に対して何も言ってくることは無く新たな大使や武官、文官を派遣してきた。
すぐに派遣出来るだけの人材がゴロゴロいることに国としての大きさを感じるが…こちらへのアクションは怖いほど無く静かだ。
さて、合衆国はというと…夜叉が襲撃したであろう時刻直前に連絡があり処理完了とお詫びの
いやあ…タイムアップギリギリだったな。
それから数時間も経たずに大佐から大慌てで電話が掛かってきたので先に言った通りの返答をしたらすぐに理解し、
『あのタイミングがギリギリだったのだな…君が引き延ばし工作をしなかったことを心からありがたく思う』
と言ってきたので。
『どこかの国のようなことはしませんよ。提出してもいや受け取れないと言って卑怯者扱いなんてとてもとても』
と返しておいた。
どうせ会話は筒抜けだろうからこれくらいの嫌味は言っておかないと。
録音情報には謎の呻き声や怨嗟の声が録音されているだろうが。
さあて…
残った遺体どうしよう……とりあえず、全部大使館に届けておくか。
何せ予定は7日だったんだ。残り2日分はフリータイムだよなぁ?
あちらからごめんなさいも何もないし。
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