第62話 それはきっと素敵なクリスマスプレゼント?
なあ、トラブル多くね?
とクリスマス前の俺は吠えたくなった。
弟や妹のクリスマスプレゼントを選定中なんだ。
こんな時くらい大人しくできんのか?
…なんて思ったが、世間も年末で大忙しのため出て来たトラブルだったりする。
中条グループのトラブル…と言うよりも買取所に関する他社の嫌がらせに関しては俺が確保しているマギトロンや魔石、聖水晶片等をマジックバッグ1つ分渡す事で片付いた。
少なくとも今までの計算で言えば3ヶ月分の利確となったらしい。
ちょっと洒落にならない金額になったのでムーンライト経由で首都圏内各店買い上げた形にしてもらった。
問題事は他にもある。
ここのところ某動画配信者が不審な死を遂げた事で何故か俺、と言うか
そして偏向報道によって休業を余儀なくされた…ように見せかけ早めの年末休を全員に与えた。
勿論有給だ。責任は相手側にある。
すぐさま弁護士団を結成し法廷闘争の構えを取った。
誹謗中傷による被害で営業休止に追い込まれたのだからその損害賠償諸々請求するということで。
一月数百万程度?ちょうど大規模売買してますので十数億の損失計上ですね。
こちらとしては政府機関等とも取引をさせていただいている真っ当なお店なので。
あとは弁護士の方々とうちの顧客の皆様方による場外乱闘任せという事でこの件も終了。
まだあるぞ。
どこかの阿呆が俺が対魔関係の人間だと勘違いして勝手に依頼を受けて俺に振ってきた。
しかも2ヶ所の仲介役がだ。
一方的に依頼を受けて高圧的に仕事を振られた。
何してくれちゃってるの?
馬鹿なの?
こちとら大学生でダンジョン採掘者であって退魔師ではないんだぞ?それらを止めてそっちが振ってきた仕事をしろと?その分の補填はしてくれるんだよな?
1ヶ所は勘違いと分かってもらえたので誓約書1枚で済んだが、もう1ヶ所が駄々をこねた。
しまいには補填をしてやると言ったので補填金額を記入した契約書にサインをお願いした。
相手は見ずにサインをしたため後は知らん。と、低級霊の群を聖水でシュシュッとやって隠れた奴等ごと浄化処理。
で、完了報告をしたら補填はしないと言ってきた。
毎日そんなに採って来る事は不可能だと。
ただこれ契約書なんだよ。それに記入したのはアンタだ。
オッサンがギャーギャー叫くので一緒にダンジョン下層と深層に行った。
餓鬼や鬼に囲まれてオッサン廃人と化したがダメージは無し。
採掘を終えその日一日分を見せ、3日分請求の正しさを証明した。
オッサンは泣きながら提示金額を出してくれた。
───まあ、1日たりともダンジョン採掘は止めては居ないんだが。
さて、他にも問題事はあるが、襲撃関連はめっきり減ったので問題は無い。
そんな事よりも2人のクリスマスプレゼントだ。
さてどうする?
幾つか候補はあるが、2人揃って物では無い。
かといってそれをプレゼントにするとなると…微妙なんて物では無い。
2人揃って「兄さんとの1日」だった。
まあ、佑那は「兄さん達との1日」だったが…
2人ともまだまだ家族の温もりが欲しいといったところか?
しかし1日か…これは難題だ。
2人としてはクリスマスパーティーをしたいらしい。
それは構わないし、予算も渡している。
友紀が腕によりを掛けると言った以上食費で50くらいは出しても良いだろう。
いやしかしそれをすると静留が嗅ぎつけるか…まあ、既に嗅ぎつけているだろうから放っておこう。
毎度毎度食材とタッパーを持って来るのはどうかと思うが…うちの子はやらんぞ?
うーん…1日…しかしダンジョンは入る必要がある。
10時から0時まで1セット、0時から2~3時をワンセットとして2日分…日を跨いでいるからいけるか?そして翌1時にダンジョンへ…うん。これでいい気がしてきたな。
まずは1つ願いを叶えられる。
しかしそれだけではなぁ…何か良いものはないか…
佑那は使い捨て護身用具程度で構わないが、友紀はそうもいかない。
友紀は無茶ができない体だ。
一度魂が壊れかけるほどの何かを受けている。
現在はこの世界の神以上の何かによって守られているようだが、その副作用が声であり、運動能力であり…本人は分かっていないが生命遅滞だ。
今何者かが途轍もない力で友紀の魂を補強しているが、それも時間の問題だ。
20、あるいは25歳過ぎ辺りでその守りを突破し再び魂が壊れる。
しかもその頃にこれまで感じなかったダメージを一気に受ける地獄の苦痛が襲いかかるだろう。
それまでに少しでもそれらを和らげる、もしくは解除するアイテムなり神具なりを手に入れなければ…
しかし、これまで3つ試したが結果は思わしくない。
漸く再び手にする事ができた異世界のアイテムを使っても魂の回復は無理…最後の望みはあの世界に渡る事だが、今のままでは到底到達出来ない。
であれば今以上に心身を鍛え上げ採掘などではなくダンジョンを攻略していきダンジョン崩壊と共にこの世界から弾き出されるのを期待するか。
いや、下手をすれば消滅の危険がある。2人がある程度独り立ちできるまでそれは…
「結羽人さん?」
声を掛けられ、顔を上げる。
「…ああ、静留か」
しかし静留が大学図書館に来るなんて珍しい…
「苦悶の表情で考え事をするなんて珍しいのでつい声を掛けましたが…」
「そんなにか…」
「ええ。何か悩み事ですか?見たところ、レポート関連の悩みではないようですが」
まあ、今開いているのは世界の神話に関する書物だからな。
「ああ…色々とな。さしあたってはクリスマスだが」
「厳選素材をお持ちします」
即答だった。
「お前は家族で食事を取ろうとは思わんのか」
「贅をこらした一流シェフの料理より友紀くんの料理が上です」
「……真顔で恐ろしい事を言うな。あと俺は家族で食事を取ろうとは思わんのかと聞いたんだ」
「家族も友紀くんの食事を待ってます!」
いやそのドヤ顔止めろ…
確かに食材7~8人分持ってきてくれるのはありがたいが、友紀に負担が掛かりすぎているんだが。
「友紀くん、結羽人さんと一緒にお料理作りたいと」
「!?」
「…本当に友紀くんとは何もないんですよね?一線を越えたりとか」
無茶苦茶疑いの眼差しを向けてくる静留に俺はため息を吐く。
「友紀からそう言ってくるのなら一考に値するかも知れんが、俺の基本スタンスは変わらないぞ」
「考えるんだ…考えるんだ…!」
「当たり前だろ。友紀がお願いしてくる事を頭ごなしに否定出来るわけがないだろ」
「私、友紀くんに勝てませんけど!?」
「静留」
「…なんですか?」
「だいぶ興奮しているところ悪いが…図書館で大声を出すな」
「~~~~!結羽人さんのドサド王子様っ!」
いやだから図書館で大声を出すなと…ハァ…
あとドサド王子様ってなんだ?
『今年も貴方には沢山稼がせて戴きました。来年も宜しくお願いします』
「そっちを使う機会を少しでも減らしたいんだがな…まあ、来年も頼む」
『貴方、早まってはいけないぞ?』
「そんな切羽詰まっているように見えるのか?」
『ええ。図書館であんな顔をしていたら噂になるわ』
「…気を付ける」
『私達もできるだけ調査の範囲を広げるから、一か八かの選択だけは止めて頂戴』
「…今はしない。さっきそう結論が出た」
『その言葉を信じるわ。私達ができるのは情報を収集し繋げる事、そして得た利益で広げる事くらいだから』
「気を付けろよ?」
『───ええ。私達が捕まる事は絶対にない。貴方が迎えに来てくれるのを待っているわ』
通話が切れる。
「……迎えか。難しいな」
通話を切り、俺はそう呟いた。
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