第54話 兄者、闇落ちする?(2/2)
とある事件から10日が経過した。
2日でとある事件のおおよその首謀者と犯人は特定完了した。
あの日の夕方に友紀と佑那には事情を説明し、暫くの間は最短で帰ってくるようにと伝えてあるし、買い物は俺がしている。
静留には大学で会った際に事の全てをつたえている。
さて、佑那の関係者である警視庁、警察庁、検察庁、静留経由で経済界…
相手はどう動く?
と、思ったら3日目で板倉とその上司が謝罪にきていた。
どうやらこの謝罪で手打ちにしたいらしい。
馬鹿なことを仰る。
こちらの損害無視か?信用を失うことがどれだけ恐ろしいことか分かるか?
契約は絶対だ。法を無視した捜査を依頼した奴を野放しにして謝罪で済ますと?
警察は本気で敵に回したいらしいな?この3日で俺の行動範囲内では2人の警官が襲われていたぞ?そちらも知っているだろうが。
陰陽局の局員一人食い殺されていたな。使い魔には手出し無用と伝えてある。
頭を下げればどうとでもなると思ったか?俺のことを調べなかったのか?貴様等の隠している罪科を白日の下に晒す事も出来るんだが?
───ということをオブラートに包んで言い放つと顔色変えて帰っていった。
で、だ。
どうやら相手さんは俺を捕まえて取引をしようと考えたらしい。
やっていることが犯罪まがい…どころか犯罪なんだが。
なので、こちらも野良の妖怪に餌(普通の食事)をやり、接近してきたり罠を仕掛けようとした連中を脅かしてもらった。
その間にも警官、民間人、中務省の被害者がジワジワ増えていく。
───実は中務省にはあの後すぐに申し送りをしてある。
あちらとしては「『力ある民間人の善意の協力』であって職員の力不足が問題なのだからその連絡だけでもありがたい」との回答だった。
潔いと言うべきかドライと言うべきか…まあ、それはいい。
さて問題です。
俺が人妖問題事に一切手を出さない宣言をしたことがどこかから漏れました。
犯罪組織や犯罪者にその情報が入ったようです。
どうなる?以下の3つから選べ。
1.警察の庇護下にいない岩崎を始末するチャンス!
2.岩崎関係者に被害がなければ奴は絶対動かない!ボーナスタイムだ!
3.地雷も時限爆弾も御免だ。大人しく少しずつ力を蓄えるぜ!
正解は、2と3だ。
1が全くいなかったわけではないが、近所で廃人化している奴が数名出て以降『当組織は関係ありません』という手紙が30万ドルの小切手同封でとどいたが。
あの事件から1週間後、急に犯罪が各所で発生した。
いやもうドッカンドッカン発生している。俺と俺の関係者に被害がいかないよう配慮したまま犯罪が起きる起きる。
しかも捕まった連中が「警察に捕まっても怖くねぇし」と宣ったらしい。じゃあ何が怖いんだと問いたい。
「最近ニュースばかりですね」
[事件ばかりで怖いねぇ]
そんな話をしながら弟妹が朝食を作っている。
いや、佑那は食器を並べているだけだが。
しかも食器違っているという…
「佑那お前…」
「えっ!?何かやっちゃいました!?」
[あっ、お皿が違う…]
「お皿ってどれも同じ…大きさ?大きさなの!?」
「佑那…和食に洋食器、しかも深皿は何に使う気だ?」
「………なんだろう」
「佑那お前…」
そんなやりとりをしながらも準備を終え、食事が始まる。
「そういえばさ「そろそろ一網打尽に出来そうです」って伝えて欲しいと」
佑那が秋刀魚の塩焼きを突きながら俺にそう言ってきた。
「とうとう内部調査が入ったんだな…ただ、間に合うか?」
「?何が?」
「磯部課長含め刑事課全員と他の警察官数名が退職届出すってさっき電話があった」
「えっ?何故?」
「現在の警察組織に不信感しかないとさ」
[警察の人がそんな事言ったら僕たち誰に頼って良いのか分からないよ?]
尤もなことを言う二人に俺は苦笑する。
「警察内部でも色々あったんだろうな…多分受理されないと思うが」
メディアに流しても報道はしないだろうな…流石に治安の根幹が揺らいでいます!とか言えば各地での犯罪や暴動が増加するだろうし。
日本も外国レベルの犯罪大国になるかと思ったが…1週間や十日では何ともないか。
まあ、俺一人が黙ったから犯罪率が跳ね上がるなんて…まあ、起きてはいるが。
いやしかしなぁ…俺の行動範囲は都内位だが…ああ、考えてみたら関西方面も関係者いるから警戒されているのか。
[兄さん?]
「自分がとんでもない人間だって改めて理解したんじゃないですか?友紀兄さんはああならないでくださいね?」
[無理だと思う。でもなってみたいな…兄さんみたいに皆に頼られるようになりたい]
「……ピュアすぎて辛い…友紀兄さんが弟だったら絶対襲ってた」
[?僕何か悪い事したの?]
「うぇ゛っ!?いやあの、ああもう可愛いなあって!グリグリとですね!?」
「佑那………
「………………はいぃぃ」
[はいはい。2人とも修行はご飯食べてから]
無自覚で地雷を踏み抜こうとした友紀と下手をすると暴走しそうな佑那に待ったを掛けながらも食事を続ける。
佑那を適度に
元より光壁は自身の体表には展開しているが、念のため周辺にも光壁を展開しそのまま進む。
まあ、お約束といえばそうだと思うが、ワゴン車の扉が開き、屈強な男6人が武装した状態で降りてきた…が、無視をして歩く。
男達が俺を捕まえようとするが、光壁に阻まれて何も出来ない。
2人ほど銃を構えるも無視する。
そして発砲と共に悲鳴が上がる。
───馬鹿なのかな?いや馬鹿だったわ。
「……自衛官桃田英俊、栗林良典、植草茂也。機動隊隊員小山満、福本扇、早川巧…民間人を襲い銃を向け発砲するとはどういう事だ?
貴様等は国を守り、人を守る役目を忘れ私利私欲のために兵を動かした一官僚と富豪の手先となったか…恥を知れ!」
そう喝破し、ワゴン車の後部座席辺りを光壁で丁寧に押し潰す。
序でにそのお偉いさん方の乗っている高級車の一部分も丁寧に押し潰しておく。
ただ、男達の戦意は喪失していない。
被弾しても戦意を失わないのは良い事だ。
であれば聖職者に喧嘩を売るとどうなるかだけは…教えておかないと。
周辺の光壁を消し、結界を構築する。
「聖職者を襲えばどうなるか…例えば仏法ならばその守護者が眷属を連れ現れる」
顕現せよ毘沙門天。正道を歩む聖諸共悪を正せ。
濃密な神気と共に俺の背後に毘沙門天が姿を現した。
そして眷属の夜叉達が瞬時に男達を捕らえていく。
『異相を使い我から逃れようと画策するか…笑止』
毘沙門天はそう言い、高級車の方を睨む。
すぐにこの場から逃げようとしたとは思うが…俺が駆動部押し潰しているんだ。
あと、よりにもよって聖を襲わせた一行が尊勝仏頂とか、馬鹿なのかな?と。
まあ、知ってて仏法の守護者をお呼びしたわけだが。
夜叉達が車を取り囲み、持ち上げた。
『この者達は全て我が領地へ送り、心胆からの自制を求める。終わり次第秦広王へ伝えよう』
「協力感謝致します」
聖水晶を毘沙門天へ差し出す。
『これはちと貰いすぎだな…そうだ、これをやろう』
ひょいと高さ14~5㎝の宝塔を渡された。
『なに、力の籠もった砂糖壺だ。屋敷に置いておけば侵入者に対して夜叉が駆けつけるようできている。中に砂糖が入っていない場合は夜叉達は来ぬ』
「…まさかの給料砂糖払い」
俺の呟きに毘沙門天はカラカラと笑い消えた。
残されたのは後部の潰れたワゴン車のみ。
まあ、俺も遅刻するわけにもいかないので少し早足で大学へと向かった。
講義も無事受講して買い物のあと自宅に戻る。
友紀と佑那がニュースを見ていたが…
富豪が突然失踪したとか、富豪の黒い噂とか面白可笑しく書き立てている。
半日で失踪も何もないと思うんだが。
何人かは見ていたはずなんだが、動画も撮らず、リークもしなかったようだ。
リークしようにもあの高級車の中は見えなかったし「なんか凄いのが現れて連れて行きました」って少し首をかしげたくなるリークしか出来ないだろうが。
「兄さん、さっき友達から電話があったのですが」
買ったものを冷蔵庫へと収納していると佑那が声を掛けてきた。
「何かあったか?」
「『一網打尽の前にお手を煩わせ申し訳ありません。もし彼等が姿を現したとき、速やかに処理致します』って」
「…了解。見つかるとすれば京都のほぼモンスターの出ないダンジョンだろうと伝えておいてくれ」
収納を終え、佑那を見る。
「兄さん、何をしでかしたのです?」
「ダニとGが数匹駆除されただけだ」
「人間大の?」
「人間大の」
「…………兄さん。程々に」
「俺は神聖職だぞ?犯罪は犯さんよ」
その回答は駄目だったのか佑那は大きなため息を吐き、キッチンから出ていった。
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