第12話 知人からの評価は何故か上限超えている件
「あ、えっ、ええええっ?ちょ、ぅええ!?」
静留の親父さんが壊れた。
と言うか、挙動不審が過ぎないか?視線が刺股と俺を何往復もしているんだが?
「鬼を倒す前に斬り落としたのですが、浄化を掛けたらこうなってしまいました」
「鬼を倒した!?…禍津武器を浄化!?…君は一人でダンジョンに入っているんだろ!?…ただ、君なら能力関係なしにやりかねないからな…」
この人は俺のことを何だと思っているのだろうか…
「少し待っていてくれ…鑑定アイテムを持ってくる」
そう言って家の奥へと走って行った。
「鑑定アイテム…この真偽眼を工夫すれば何とかならないか?」
何度か試し、失敗しているものの、未だ諦めてはいない。
「あら?」
奥から静留のお袋さんがやってきた。
「あらあら!結羽人さん久しぶり!元気?静留とはどう?結婚は在学中?」
ススススッと体幹を一切ブレさせず呼吸を乱すことなく詰め寄ってくる。
「お久しぶりです。この前は差し入れありがとうございました。弟たちもとても喜んでいました。静留さんとは仲良くさせていただいておりますが、結婚は私の家庭の事情もありますしそのk「いいのよ!北海道から送られてきたんだけど、うちって静留以外料理が駄目だから…でもまさか調理していただけるなんてねぇ…静留と弟さんが作ったと聞いて私はもう静留を抱きしめちゃったのよ!?それに静留は貴方以外絶対に眼中にないだろうし、貴方の甲斐性ならハーレ「何の話をしているんだい!?」…あらアナタ。どうしたの?」…」
「いやそれ私の台詞だからな!?いきなりマシンガントークが聞こえたと思ったら…」
「いやねぇ…家族の語らいよ?義理の息子になるんだから」
「まだその時期じゃないって聞いたからね!?…まったく…キミは結羽人君の前だけはよく喋る…」
はぁぁぁぁ…と魂が抜けるのではないかと思うレベルのため息を吐いた親父さんが俺を見る。
「ちょっと鑑定させてもらうよ?」
「どうぞ」
「あら?獄卒の刺股?鬼が持つ刺股は憎悪の刺股よね?」
「これだから審美眼保ちはっ!…本当ダッ!?」
「アナタ?」
「ナニコレシュゴイ」
「アナタ?アナタ!」
「っあっ!?…これ!これ見てっ!」
「何なのよ…ぇえー?…獄卒の刺股…あるだけで周辺浄化効果、地獄由来の魔物に対して特攻機能…って、これがあの時あったら…」
「それは言うな。しかし、浄化できるものなのか?これ」
「あの、済みませんが、その鑑定器具を見せていただいても?」
俺の声かけに二人はハッと我に返ったのか俺の方を見る。
「ああ、済まない。見てくれ」
そう言って俺に鑑定器具を渡してくれた。
「ふむ…さっき見た流れはゴーグルではなく目に直接…」
俺は鑑定器具を多方向から見ながら先程の力の流れをシミュレートしてみる。
「えっと、結羽人君?見るんじゃないのかい?」
「───成る程。ありがとうございました。お返しします」
「えっ?」
「真偽眼鑑定───ッ!?」
視覚から大量の情報が脳に突き刺さる。
「っぐ!?…パーセンテージ、10!」
ダメージ制御を脳と目に再度施し、視覚情報を10パーセントまで落とす。
【獄卒の刺股】:元憎悪の刺股。
強力かつ瞬間的な浄化によって消滅せずに変質した。
機能1.刺股基点とした半径50m以内の段階的浄化効果
機能2.武器使用時の地獄由来妖魔に対し絶大な効果あり
機能3.分解時、金属は中級妖魔に特攻機能、木材は中級妖魔に対特防機能
ふむ…
「分解時の機能も良いな…見つけたらまずは武器を封じて取り上げた方が良いな」
「「………」」
お二方ともどうされましたか?
「えっ、と…今、なんて?」
「「分解時の機能も良いな…見つけたらまずは武器を封じて取り上げた方が良いな」と」
「分解時!?何が見えたの!?って、結羽人君きみは聖者だったよね!?」
「間違いなく。あと、この真偽眼は前々から試してはいたのですが、鑑定などに関する繋がりなどが分からなかったので…今その鑑定器具を見せてもらいようやくモノにできました」
「…この子無茶苦茶過ぎん?」
「そんな事より体は!?さっきあんなに冷や汗かいていたじゃない!」
「大丈夫です。あれは目と脳に莫大な情報が入ってきたので廃人になる所だっただけです。防御・修復・制御は瞬時に行ったのでノーダメージです」
「静留ー!彼氏の結羽人さん無茶してるわよー!」
「ちょ!お母様!?」
静留までやってきてしまった。まあ、荷物を置いてきただけだと思うが…
「兎も角、此方をお渡ししますので研究素材にどうぞ」
「待って待って!そのさっき言っていた分解時って!?これで見えないんだけど!?」
「分解時、金属は中級妖魔に特攻機能、木材は中級妖魔に対特防機能…とあります」
「……了解した。これは通常鑑定では勘違いで買い叩かれかねない……買取所にあげても三百…五百…かなりばらつくだろうな…うちに持って来てくれ。言い値で買おう」
「では100万で」
「いや人の話聞いてた!?最大500万で買い叩かれないようにって…」
「100万で。おそらくちょくちょく手に入ると思うので」
「君だけ違う魔境に行っているのかい!?」
「ダンジョン中層ですが…」
「このレベル以下でも年に一桁くらいしか手に入らないんだが!?」
「今後は武器持ちの妖魔は積極的に武器を奪って浄化していくので結構手に入るかと」
「万単位の探索者やハンターがいてたったの数個と言っているのにやりそうな予感しかない…」
「結羽人さんは基本不言実行ではなく何も言わずにやらかす無言実行ですが有言実行もしますから」
「旦那様のことよく分かっているわね。静留」
「もうっ!お母様はっ!」
良い家族だなー
───結局1時間も長居してしまった。帰りの件を伝えたため、緊急で屋敷周辺を警備の人が回る手筈になったため、念のためにと待機した結果だ。
「さて、今日はもう少し奥まで行くか」
「ちょ!キミ!そんな丸腰で行くのは無謀よ!?」
───と、突然呼び止められた。
何事かと振り向くと、そこには恐らく防刃加工がされているであろうアーミーベストにヘルメット、各種プロテクターを着けた金髪の女性と、彼女に付き従う武装メイドと屈強な男達が居た。
「ええ。いつもこのスタイルですし、ただの採掘者なので」
にこやかにそう答えると、
「嘘吐け。オマエは中層採掘どころか鬼倒しただろうが」
まさかのゲート警備員にツッコミを入れられた。
「間違っては居ませんよ?いつもこのスタイルで、採掘メインなのは確かですよね?」
「間違っちゃいねぇが、鬼倒す採掘者はハンターと名乗って欲しいぞ?」
「メインが違うので」
「ハァ…」
「えっ?この方、中層到達者なんですか!?」
ギョッとした顔の金髪女性にアルカイックスマイルで会釈をして、
「スタート」
ダンジョン内へと一気に駆けた。
───2時間後───
友紀の友人が「フラグという世界の修正力があると俺は思います」とか言っていたが…本当かもしれないな。
そう言いたくなる程目の前には餓鬼や小鬼の群れがおり、更に奥には赤鬼や青鬼などが十数体いた。
総勢200体近くの妖魔の群れ。ダンション侵攻、もしくはダンジョンスタンピードと言われるものではある事は確定していた。
「退くも地獄。退かぬも地獄…本来の使い方ではないが」
光壁を前面に展開し、侵攻を強制的に止めてはいるものの、鬼たちが前に出てきた場合は前回のようにはいかないだろうと分かっていた。
結羽人はニヤリと笑う。
「苦しい時こそ笑え…成る程、こういう時か」
切り札はいくつかあるが、それを駆使してどこまで対抗できるのか。
しかしまだ心に余裕はある。光壁を多重展開しながら退却すれば協会の武装隊が…
昼の強行班を思い出し首を振る。
あまり期待はできないか…
ならば、
「見つけましたわ!本当にちゅ…って、えええええええええええっっっ!?」
入り口で声を掛けてきた一団が姿を見せ、悲鳴を上げたために妖魔たちがその方向を見て興奮し始めた。
───これは、マズイ。
一気に余裕が無くなった。
これが、本当のフラグというものか…っ!
「急いで協会へ連絡をっ!ダンジョンスタンピードが起きていると!」
光壁を更に重ねて層を厚くし、大声で怒鳴りつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます