黒ノ断章
『子どもは未来の可能性!日本全国津々浦々、あっと驚く才能を持った凄い子どもたちを紹介する番組、発見!ヒーローキッズ!の時間です』
『今回のヒーローキッズはね、ちょっと凄いですよ!今までも凄かったですけどね、今日はもしかしなくても、番組が始まって以来、一番凄いかもしれないです』
『そうなんですか?それは期待に胸が膨らみますね!それでは早速紹介していきたいと思います!今回紹介するヒーローキッズは…こちら!日本の明日を切り開け!君こそ未来のS級探索者キッズです!』
『だからですか!なんでロケ地が探索者協会なのか不思議だったんですよね。それはそうとS級探索者といえばそう、言わずと知れた万魔様を筆頭に早々たる顔ぶれ、まさに日本の顔と言っても過言ではない方達なわけですが』
『そうですね。ですが今回紹介するヒーローキッズ達を知れば、きっとTVの前の皆さんも期待を抱くんじゃないかと思います』
『それは楽しみですね。早速紹介していきましょう!最初のヒーローキッズは―――』
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『いやあ、まだ子どもなのにみんな凄い子達ですね。私なんてダンジョンに入るだけでも腰が引けてしまうんですが』
『ここまで紹介した全員、きっと将来は立派な探索者になってくれるに違いありません!』
『流石は自信満々で今回は凄いと言ってのけただけありますね』
『そうでしょう?で・す・が…ここから紹介するのは一際輝く一等星!今紹介したヒーローキッズ達より一足早く、ヒーローになるべく先を進んでいる子どもたちです!!』
『一足早く?それってもしかして…』
『そうです!!今から紹介するのはなんと!現役の探索者として活動しているヒーローキッズ!いえ、キッズヒーローとでも言うべき子達なんです!!』
『げ、現役ですか!?現役という事はつまり、現在進行形でダンジョンを探索しているという事になるんですが?』
『そうなんです!これから紹介するのは現役バリバリの探索者のキッズヒーローなんです!それでは登場してもらいましょう!草薙勇輝くんと有希ちゃんです!!』
「TVのまえのみなさんこんばんは!くさなぎゆうき、7さいです。今日はよろしくおねがいします!」
「くさなぎゆうき、7さいなの。よろしくなの」
『勇輝くんと有希ちゃん、とっても可愛いですね~。そっくりだし双子さんでしょうか?それにはっきり挨拶出来てとっても偉いですね~。というか7才?今7才って言いました!?』
『そうなんです!なんとこちらの草薙勇輝くんと有希ちゃん、なんと7才にして現役のE級探索者なんです!!』
『いやいや…流石に性質の悪い冗談はよしてくださいよ。7歳で探索者になれるわけないじゃないですか。しかもE級って事はF級ダンジョン攻略してるって事ですよ?私みたいな良い歳した大人でも腰が引けるのに、それをあなた、7歳で攻略って冗談にしては出来が悪すぎ…ってぇえええええ!!勇輝くんと有希ちゃんが首から下げてるの、E級探索者カードじゃないですかぁああああ!!』
『嘘や冗談で紹介するわけないでしょう?TVでそんな事したら探索者協会を敵に回しますよ。勇輝くんと有希ちゃんが持っているのは正真正銘、本物のE級探索者カードです。探索者カードは偽造出来ませんし、偽物の探索者カードを使おう物なら探索者協会が黙っていません。この場で何も言われていないという事が、この子達が正真正銘のE級探索者である揺るぎない証拠になるでしょう』
『探索者は何があっても自己責任とは言いますが、それでも7歳で探索者と言うのは正直信じられません…いえ、実際目の前にいるんですから信じるしかないんですが…ちなみに、勇輝くんと有希ちゃんが探索者になった理由とかは聞いてもいいんですか?なんかこう、暗い過去があったりだとかだと正直手放しで賞賛し辛いというか…いえ、凄い事ではあるんですが』
『それでは聞いてみましょうか。勇輝くんと有希ちゃんが探索者になった理由を教えて貰っていいかな?』
「はい。ぼくはしょうらい、すごく強くなってきんきりょういきをかいほうしたいんです。そのためには小さいときからがんばるのが大事だとおもったので、おとうさんとおかあさんにおねがいして、しけんを受けさせてもらったんです」
「わたしはゆうきがたんさくしゃになりたいって言ったから、いっしょにたんさくしゃになったの」
『禁忌領域の解放、ですか。これはまた凄い目標を持ってますね。まだ7才でしょう?私が7才の時なんて遊ぶのに夢中で将来の事なんてなにも考えてませんでしたよ』
『私なんて未だに将来どうしようかなんて考えてるんですが…7才で探索者になるような子たちなんだからやっぱり特別なんですかね。受け答えもしっかりしてますし見た目は子どもですけど中身が大人と言われても信じてしまいそうです』
『そうですね。ですが見た物が信じられない人、裏技使って売名する為に探索者になっただけなんじゃ?なんて勘ぐってる人や、子どもが親に逆らえないからって強制的にやらされてるんじゃないの?なんて考えてる人もいるかもしれません。なので、今回は特別に!草薙勇輝くんと有希ちゃんの双子姉弟のダンジョン探索を許可を貰って撮影してきました!!』
『ほ、本当ですか!?』
『本当です。これを見れば皆さんの抱えている疑問はきっと解決するでしょう。それでは早速見てみましょう!VTRスタート!!』
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『実際見るととんでもないですね。この子たち、本当にダンジョン探索してるんですね』
『でしょう?私も同行した時は半信半疑だったんですけどね、すぐに自分の目の節穴さに気付きましたね』
『7才ですでにE級ダンジョンで危なげない立ち回りをしているなんて、申し訳ないですけど凄いとしか形容できません。まさに未来のS級探索者ですね!私、断然ファンになっちゃいました!今の内にサイン貰っといた方がいいんでしょうか!?』
『私だってサイン欲しいわ。ちなみに勇輝くんと有希ちゃん、既にE級ダンジョン攻略してるからね』
『本当ですか!?という事はD級探索者になるのも時間の問題って事ですか!?』
「ダンジョンはあまくみると死んじゃいますから、しんちょうにたんさくしていこうとおもっています」
「8さいでDきゅうになって、9さいでCきゅうになるのがもくひょうなの」
『9才でC級って…探索者協会公認の探索者として正式に登録されるのってC級探索者からですよね?つまりこのままいけば7歳で勇輝くんと有希ちゃんは社会人ってことですか!?』
『C級探索者になれば公的に探索者を名乗れますから平たく言えばそうなりますね』
『…どうですか勇輝くん。お姉さんこれでも結構綺麗な自信あるんだけど』
『子ども相手に何言ってるんです?10年後にはおばさんでしょう?あなたみたいな年増が相手にされるわけないです』
『年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せって言いますし…』
「おねえさんはとってもきれいですけど、ぼくが大きくなるよりも前に、きっとすてきなひとがみつかりますよ」
『7才の子どもに気遣われる2ピー歳、四捨五入して三十路…これは酷い』
『ちょっと!歳が分かるような事言わないでくれる!?私は勇輝君が待っていて欲しいって言うならいつまでも待つ覚悟が
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『大変見苦しい物をお見せしました』
『大変申し訳ありませんでした…』
『それにしても凄かったですね、草薙姉弟のダンジョン探索』
『そうですね、とてもじゃないですけど7才とは思えない戦いっぷりでした。この番組をしていると思いますけど、才能って素晴らしいけど残酷ですよね』
『自身の才能が必ずしも合っているとは限りませんし、その点草薙姉弟はまさに天賦の才と言っても良いのではないでしょうか。日本の未来は明るいですね!』
『私も後20歳若ければ…』
『見向きもされないでしょうね』
『ですよねー。ところでまだ放送終了まで時間がかなり余っているんですが、構成ミスなんでしょうか?一体どうやって時間を潰せば…歌でも歌いましょうか?』
『そんなわけないでしょう。実は後一人だけ紹介するキッズヒーローがいるんですよね』
『え?そうなんですか?でも流石に草薙姉弟を見た後だと、こう言ってはなんですが蛇足というか可哀想というか…いえ、この番組で紹介する以上凄い子だって事は分かってますよ?でもインパクト的にアレを見た後だとちょっと物足りないというか…』
『そう思われるのも無理はありませんね。ですがご安心ください。草薙姉弟に勝るとも劣らないキッズヒーローだと断言します!』
『本当ですか?うーん、ちょっと信じられませんね』
『草薙姉弟の時もそんな事言ってましたよね貴女。それではご紹介しましょう!!今回急遽出演が決まりました。大トリを務めるのはこちら、零くんです!!』
『急遽出演ってそれ大丈夫なんですか!?』
「どうもこんばんは、零です。よろしくお願いします」
『これは偶然なのか必然なのか、こちらの零くんもなんと7才なんですよ!』
『へ~、そうなんですね。それでこちらの零くんはどんなキッズヒーローなんですか?』
『草薙姉弟の時と違って妙に冷静ですね』
『そりゃそうですよ。零くんの前で言うのもなんですけど、草薙姉弟のインパクトを越えると言ったらそれこそ現役のA級探索者とかじゃないとTVの前の人たちも驚きようがないでしょ』
「あー、残念ですけどA級探索者じゃないですね」
『そりゃそうですよ。だって7才ですよ?E級探索者ってだけでも凄いのに』
「B級です」
『あ、言い間違えちゃいましたかね?E級ですよE級』
「いえ、合ってますよ。B級です。僕の探索者ランク」
『…ん?B級ってBですよ?ABCの2番目のBの事ですよ?』
「ええ、合ってますよ。ほら、これがB級探索者カードです」
『…?……??確か探索者カードの偽造は犯罪だったと思うんですが』
『そうですね。結構重い犯罪です。ましてやこの場でB級探索者を騙ろうものなら即座に袋叩きにされた上で捕縛されるでしょう』
『…?でもこの子の持ってる探索者カードはB級なんですが?』
『そうです。というわけで大トリを務めますのはなんと!!若干7歳にして現役のB級ソロ探索者の零くんです!!』
『は、はぁぁあああああああ!?一体いつからこの番組はドッキリになったんですか!?探索者協会まで巻き込んで私にドッキリ仕掛けて面白いですか!?』
「人は信じたいものを信じるものですし、別に信じなくても構いませんよ。お姉さんにどう思われようと僕には一切影響ないので。そもそもこの番組も出たくて出てるわけじゃないですし」
『な、なんて生意気な…ならなんでこの番組に出たんですか?』
「それはあーちゃんがこの番組のファンでして。僕が出てる姿が見たいというので仕方なく。僕も付き合って見てますが、この番組に出てる子程度が出演ラインなら僕なら問題ないかなと思って、プロデューサーさんに直接交渉したらめでたく出演が決まったんですよね」
『れーくーん!』
「今のれーくん呼びした世界一可愛い子があーちゃんですね。あ、TVには映さないように注意してくださいよ。声だけでも危ないのに姿を目にした日には、TVの前のロリコンどもがストーカー化した上に暴走しかねませんので。一々始末するのも面倒なんで」
『確かにとても可愛らしい女の子ですね…目の前の子とは大違いです』
「お姉さんは年齢相応ですね。30代ですか?」
『な、なんて失礼な…!!私はまだ切り捨てたら20代です!!』
「すいません。僕は女性には誠実でありたいと思ってますので、嘘はつきたくないんです」
『さて、こんなとても7歳児には思えない零くんですが、正真正銘現役のB級探索者なんですよ!!ちなみに事が事ですので、零くんが来た時にその場で探索者協会に確認を取っているので間違いではありません』
『なんかもう現実味がなさすぎて逆に普通に感じてきちゃいますね。それよりも本当に7才なんですか?少しも子供らしさがないんですが?』
「実年齢と精神年齢は必ずしも一致しませんから。お姉さんが良い例でしょう?」
『確かにそれはそう…って一体何なんですかこの子は!?私何か気に障る事しましたか!?』
「それだけお姉さんが親しみやすいという事ですよ。ほら、あーちゃんも大喜びしてます。お礼に僕の事は気軽に呼んでくださって結構ですよ。どうせ名前も偽名なのでおいでもお前でも餓鬼でも気にしません」
『偽名なんですか!?』
「当然です。この身はまだ何も成していない。この世界に爪痕一つ残せていない。ゆえに零。僕はまだ何者でもないゼロなんです。だからこそ本名を名乗るのは、大業を為した時でありたいと思っています」
『十分爪痕残してると思いますけど。それに7才でB級探索者という時点で偉業じゃないですか?』
「そうですか?なるだけならその辺の子供でもなれると思いますが。お姉さんも頑張ればなれると思いますよ。B級程度なら才能なんて関係ない。そもそもPT組めるんですからなれない方がおかしいんです」
『それっていわゆる寄生ってやつですよね?』
「そうですね。でも別に良いんじゃないですか?PT内で話が付いてるなら問題ないと僕は思うんですが。PTなんてのはね、組みたい人同士で組めばいいんです。弱い人と組みたいなら守ってあげればいいだけの話ですしね。寄生する人がいた所で困るのはそのPTの人たちですし、寄生する人が気に入らないなんていうのは、それこそ寄生して探索者ランクを維持している雑魚探索者の人達ですよ。探索者ランクなんてゴミに価値を見出している、それに縋ってプライドを保ちたい可哀想な人達なんです」
『あわわわわ!その発言は不味いんじゃないですか!?これ生放送ですよ!?』
「あははは、大丈夫ですよ。事実を言った所で罪にはなりませんから。現にほら、誰も僕を止めに来ないでしょう?」
『…そうですね。職員さんがこちらと目が合わないようにしてるのは気のせいだと思いたいです』
『ところで零くんはソロ探索者なんですよね?PTを組まないのは組みたい人がいないからなんでしょうか?』
「そうですね。他の探索者なんて邪魔なだけですし。わざわざ赤の他人を寄生させるほどお人よしでもありませんので」
『B級ダンジョンをソロで探索するというのは相当難しいと聞いた事がありますけど、その辺はどうなんですか?』
「あ~、なんかそうらしいですね。僕も初めてB級ダンジョンに入る時、ソロで行こうとしたら止められましたよ。無視しましたけど」
『無視したんですか…』
「見た目がこんなですから周りの大人が五月蠅いんですよね。今は努力の甲斐あってここの探恊ではそんな事ないんですけど。最初の頃はなんでこんな餓鬼がいるんだってちょっかい掛けてくる奴らが多くて困りました」
『確かに探索者協会は子どもの教育に悪…げふん、子どもには少し刺激が強い場所ですからね』
「ハッキリ言っても良いと思いますが。態度とプライドだけでかい雑魚どもの溜まり場だって」
『それは流石に言い過ぎでは!?』
「そうですか?まともな探索者なら、こんな子どもにわざわざ絡む暇があるなら、ダンジョンに潜って魔石の一つでも取ってくると思うんですが。僕に絡んでも良い事なんて一つもないでしょう」
『それは…なんでこんな所に子どもがいるか心配したとかじゃないですか?お父さんを迎えに来たのかなとか』
「それなら魔石を納品してる時に絡んで来たりしませんよ。魔石なんて誰が納品しても同じでしょうに、一々それは一体どこで手に入れただのしつこく聞いてくるんですよね。信じられますか?最初の頃なんて探恊の職員がですよ?それも個室に呼んだりするわけでもなくその場で大声で詰問してくるんですよ。個人情報保護の観点からも倫理的な観点からもありえませんよね」
『ええ…誰か止めたりしなかったんですか?』
「探恊の職員と揉め事を起こしたい探索者ってのは普通いませんからね。だから職員が調子に乗るんでしょうけど。一応僕なりに配慮はしてたんですよ?探恊に行く日と時間を固定して、無用な揉め事をなるべく起こさないようにって。ただ探恊が思いのほか無能で、口で言わなきゃ僕の配慮が理解出来てなかったみたいでして。その時は僕を知らない人が担当してたんですよね。結果的にお話しの甲斐あって僕が魔石を自力で入手していると理解していただけたみたいですけど」
『ちなみに零くんが探索者になったのは5才の時ですが、その時も一悶着あったそうです。先ほどの草薙姉弟がすんなり探索者になれたのも、その時の教訓が生かされていたからかもしれませんね』
「探索者は何があっても自己責任ですから。年齢で可不可を決める気持ちも分かりますが、本人に確固たる意志があるなら探索者になれるだけの実力があるかくらいはきちんと調べて欲しいものです」
『ところで、零くんのダンジョン探索VTRはあるんですよね?やっぱりこの目で実際に見ないと信じ切れないというか…是非とも戦ってる所を見てみたいといいますか!』
「ありませんよ。遺憾ながら僕は見た目で侮られる事が多いので手の内はあまり晒したくないんですよね。初見殺し出来ないと、絡んできた奴を始末する時に面倒でしょう?」
『7才の子どもの口からそんな物騒な発言は聞きたくなかったです…』
「心配しなくても実際には教育的指導みたいなものですからご安心を。むやみに間引くと探恊の偉い人達が五月蠅いんですよね。まあ雑魚は雑魚なりに魔石集めで社会貢献してるわけですから、CやB級探索者が減ると社会に影響が出かねないという懸念は分かりますから僕も加減はしてあげてます。手加減は苦手なんですけど」
『ざ、雑魚って…零くんB級探索者ですよね?C級、ましてやB級ともなると探索者として一人前だと思うんですが』
「B級探索者なんてなれて当然、一人前と言うならせめてA級になってから言うべきです。僕としてもいい加減さっさとA級にして欲しいんですけどね。前例がないだのすぐには決められないだの言われて先延ばしにされてるんですよ。一応探索者なんでルールを守ってあげてはいるんですけど。この番組を利用して、せめてAかS級ダンジョンに入れないかなって思ったんですけど駄目でしたね。僕より弱い人達でも探索出来るんだから問題ないと思うんですけど」
『ええ…ちょっと頭が痛くなってきました。誰か私の代わりに番組の進行して欲しいんですが!切実に!!』
『そういう訳で、残念ながら零くんのダンジョン探索に付き合う事はできませんでした…が!!今日はなんと特別に!零くんが実力の一端を披露してくれるという事です!!』
『え?手の内を晒したくないからVTRないんですよね?』
「あーちゃんが恰好良い所を見たいというので」
『れーくーん!頑張ってー!!』
『そういうわけで、零くんがどれだけ凄いのか、現役のC級探索者の方に特別にご協力していただこうと思います!!』
『…あれ?どうしたんでしょう。協力してくださる予定の探索者の方が来られませんね。何かのトラブルでしょうか』
『裏で待機して下さっていたはずなんですが…あ、プロデューサーさん』
『どうしたんですか?…協力予定の探索者の方がこの手紙を書いて帰ってしまった?本当ですか?…つまりこれを読めばいいという事ですかね、分かりました。えーと、なになに?<ふざけんじゃねえ!ガキの相手をちょろっとすりゃいいだけって聞いたから依頼を受けたってのに、よりによって死餓鬼が相手だなんて聞いてねえぞ!!俺は降りさせてもらう!!こんな依頼をC級にしてんじゃねえ!!依頼を受理した大馬鹿は、責任取ってAかS級に受けさせろや糞ったれ!!>…だそうです』
『つまり依頼を放棄というよりは、依頼が適正でなかったという事で拒否されたという事でしょうか。というか死餓鬼って一体誰の事でしょう?』
「僕の事ですね。見た目のせいで絡まれて困ってるって言ったじゃないですか。僕にわざわざ絡んでくる探索者には遊んでもらってたんですよね。でも何故かその人たちが生死の境をさまよったり、探索者を辞めたりしちゃいまして…僕は遊んでもらっただけなんですけど。立て続けに起こったせいで、ガキみたいな死神って事で死餓鬼なんて一部では呼ばれてるみたいで…困ったものです」
『一体どんな遊びをしたのか非常に気になりますが、聞かない方がいいですよね』
「誰でもやってるような遊びですよ。チャンバラみたいなものです。僕は新聞紙丸めて使ってましたから。健全でしょう?」
『新聞紙を丸めてチャンバラごっことか、子どもの遊びとしては定番ですね』
「そうでしょう?新聞紙を丸めた剣で怪我なんて一体どれだけ軟弱なのかって話ですよ。そんな人達がCやB級探索者になれるんですよ?ほら、探索者なんて大した事ないでしょう」
『確かに…そう言われると私でも頑張ればなれるんじゃないかって気がしてきました!!』
「ま、AやS級探索者はきっと別格だと思うんですけどね。残念ながら一度も相手して貰った事がないんですよ。お願いしても断られてしまって…おそらく僕程度じゃ相手にならないんでしょうね。きっとそれくらい強いんじゃないかなって思ってます」
『しかしどうしましょう…とりあえず現役のC級探索者が逃げ出してしまうくらいには零くんが強いという事は分かって頂けたと思いますが、今この場にいる探索者の方に飛び入りでお願い…は出来そうにないですね。職員の方達もいなくなってます』
『探索者協会の職員はC級以上の元探索者である事が多いですからご協力願おうと思ったんですが残念です…』
「うーん、まあ仕方ないですね。今からダンジョン入ると探恊が五月蠅そうですし。またの機会って事ですかね」
『とても残念です。それではそうですね、零くんから探索者を目指している子達に何か激励の言葉とかあればお願いしても良いですか?』
「そうですね…この番組を見ている人たちは理解できたかと思いますが、B級以下の探索者、いえ、敢えてこう言いましょう。A級になれない探索者は人を見た目で判断して、価値のない勲章をひけらかしているゴミしかいません。つまり最低でもA級以上でなければ探索者としての価値はないと断言できます。残念な事に僕も未だにA級になれていないので、そのゴミと同レベルという事です。僕がB級までの実力しかないのか、探恊が見る目がないのかは敢えてここでは言及しませんが、どちらが間違っているかは近いうちに明らかになるでしょう。いえ、させます。そしてこの番組を楽しみに見ている子どもたちに僕から言える事は、そうですね…探索者なんて誰でもなれます。だからこそ探索者になりたいのなら、探索者になって何をしたいのかをじっくり考えてみて下さい。恰好良いから、目立つから、大いに結構。憧れは努力の原動力です。お金が欲しい、モンスターを沢山倒したい、大いに結構。欲望がなければ強くなれません。そして誰もが一度は夢に見る禁忌領域を解放したいという願い、口に出せば大人は笑うでしょうが、僕は笑いません。なぜなら出来ない奴が、諦めた奴が笑っているからです。そんな無様で惨めな敗北者が今の大人達であり、探索者達なのですから。一度も禁忌領域に行った事のない僕には、そこがどんな場所なのかは想像すら出来ませんが、分かっているのは、禁忌領域守護職の人達は、僕らを守る為に日夜研鑽を積んでいるに違いないという事です。見習うべきは彼らであって探恊の探索者達ではない。そして探恊のぬるま湯に浸かっているままだと、いずれ彼らと同じ腐ったプライドをひけらかすだけのゴミになってしまうという事です。だからこそ、探恊なんてものは禁忌領域に行くための踏み台程度に考えればいいのです。Aランク探索者にならないと禁忌領域の単独侵入の許可が貰えませんからね。A未満の探索者ランクなんてゴミ同然。時間を掛けて慎重にランク上げなど愚の骨頂です。さっさとAランクになる為に最速で駆け抜けるべき。僕はそう考えます。そしてその位出来なければきっと禁忌領域では役に立たず、守護職の人達の足も引っ張ってしまうんじゃないかと思います。とまあ、ちょっと熱く語ってしまいましたが、何が言いたいのかと言うと、子供の未来は可能性に満ちているという事です。この番組のキャッチフレーズですね。実に素晴らしいと思います。この番組を見て、探索者になりたいな、ちょっと興味が出てきたぞ、そんな子達は一度、探索者協会に行って自分の適性を確認してみるのも良いかもしれません。もしかしたら自分が気付いていないだけで眠れる才能があるかもしれませんよ」
『はい、という訳で零くんの熱い言葉を聞いてるうちに時間が来てしまいました!』
『子どもは未来の可能性!発見!ヒーローキッズ! 探索者の卵特集、いかがだったでしょうか?』
『それでは皆さん、次回をお楽しみに!!』
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