第156話 ファンサ
アレナちゃんねる過激派だと!?なんであいつらがこのバトルロイヤルに!?
説明しよう!アレナちゃんねる過激派とは、アレナちゃんねるの配信中に現れるユニコーンたちの別称である。アリスちゃん可愛い、レナちゃん綺麗、ナツキちゃんペロペロと配信内容関係なくコメントをしまくり、派閥ごとに分かれて誰が一番最高かを争い続けている不毛な存在でありながらも、センシティブな内容には一切触れないへたれなのか純情なのか判断に困るという、つまりアレナちゃんねるの野郎リスナー全般の事である。ちなみに最強仮面と万魔央の事を話題に出すと滅茶苦茶荒れるので気を付けよう!
「なんでやつらがこんな所に…」
「日向さん。アレナちゃんねるは日本でトップクラスの配信ちゃんねるです。当然リスナーは老若男女問わず大勢います。日向さんは愛くるしい姿が人気ですし、天月さんや星上さんは同年代の男性に特に人気がありますから」
なるほど。だが俺が来たのはついさっきだし、矢車さんにちょっかいをかける必要などないのでは?
「私達を助ける為にお姉さまが名乗ったのがいけなかったのでしょう。お姉さまの名前は、日向さんたちアレナちゃんねるの三人と一緒の天獄杯PT戦代表に載ってましたから、ファンの人達なら聞き覚えがあったはずです」
ふむ。つまり矢車さんからあーちゃん達の事を聞きたいという事か?確かにあーちゃん達がどこにいるか分からないから出会える可能性は低い。時間が経つほど脱落する可能性は高くなるし、バトルロイヤルが終わってしまえば接触する機会も消滅してしまう。確かにあーちゃん達のファンにとってこのバトルロイヤルは合法的に会えてお話も出来て、なんなら名前と顔を覚えてもらえるかもしれない絶好の機会、千載一遇のチャンスといっていいだろう。
「お姉さまに見逃されたとはいえ、完膚なきまでにやられたのですから自分たちに優勝の目はないと理解しているのでしょう。ならばせめてと目的を変えて、お姉さまから天月さん達の居場所や連絡先をどうにか聞きだそうと必死なのです。問答無用で叩きのめせば良いと私は思うのですが、律義にお姉さまは彼らに付き合っているんですよ。そんな事をするくらいなら私達とお話しして欲しいのですが、そこもまたお姉さまの素敵な所ですよね」
もうバトルロイヤル関係ないじゃねえか。でも気持ちは痛いほどわかるぜ。そりゃ勝てない戦いするよりは好きなアイドルや芸能人と会った方が何ぼかマシだよな。
「そういったわけで、日向さんがここにいると分かると矛先が日向さんへと向くでしょう。それを懸念してお姉さまは日向さんに外に出るなと言われたのだと思います。すぐ終わると思いますから大人しくしていてくださいね」
なるほどね…だが断る!!この日向奈月(偽)、求められているのならその想いに応える義務と覚悟がある!!哀れな民草達がなっちゃんに憧憬と思慕の念を抱いているのなら、せめて束の間の夢を見させてやるのがなっちゃんとしてこの場にいる俺の務めだ!!中身はともかくガワは完璧になっちゃんだから実質なっちゃんだ。なんら問題ない。見た目が大事って偉い人も言ってたからな。俺のせいでなっちゃん人気が陰る事などあってはならない。安心してくれなっちゃん、俺は君の期待に1000%応えてみせるぜ!!
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「何度来られても私の答えは変わりません。戦うつもりがないなら帰ってください。私としても戦闘の意思のない人をわざわざ倒そうとは思いませんので」
「ふぅ…矢車さん、何時までも俺達が下手に出ると思ったら大間違いだぜ。素直にアリスちゃんのメアドを吐いた方が身の為だぜ?」
「レナちゃんのメアドもな!同じ天獄杯代表PTメンバーだったんだから知ってるんだろう?」
「知っていますが、本人の許可なく教えるわけがないでしょう。私に聞くよりはありすさんやレナさんを探して教えて貰った方が良いのでは?」
「それが出来たら苦労しないんだよ!!」
「そうだそうだ!探してる間に誰かに見つかってリタイアしたら終わりじゃないか!!」
「メアドじゃなくても居場所を教えてくれるだけでも良いんだ。連絡取れるんだろう?どこにいるか聞いてくれよ!」
「はぁ…何を言われようと、何度来ようと結論は変わりません。あまりしつこいようなら…容赦しませんよ?」
「そう言ってられるのも今の内だぜ…何故俺たちが今まで、あくまでお願いに留めていたのか分かってないようだな?」
「…どういうことです?」
「確かに俺たちはあんたに負け見逃して貰った負け犬よ。だがな、塵も積もれば山となり、苔の一念岩を穿つ。負け犬には負け犬なりの意地があるって事よ」
「矢車さん、あなたと一緒にいる女性達、結構な人数になってるんじゃないですか?はてさて、貴女が実力行使に出たとして、果たしてその女性達が無事だと思いますか?とこの人数を相手取って、守り切れるとお思いですか?」
「交渉に応じないとなれば脅しですか。何を言われようとも私の答えは変わりません」
「そうですか…仕方ありませんね。少し痛い目を見なければ分からないようだ。矢車さん、私たちが何の対策もなくノコノコここに来たと思っているなら大間違いですよ。貴女への対策があるからこそ、こうして出向いてきたのです!」
「私の対策ですか?」
「そうです、もう間もなく到着
「話は聞かせてもらった!者ども静まれ!神妙にするといい!」
ドバーン!と小屋の扉を開け放ち、小さな人影が登場する。むふんとない胸を張って自信満々に登場したのは、そう。
「この日向奈月が現れた以上、あなた達が争う理由はもうどこにもない」
さあ、思う存分崇めるが良い!
「ナ…ナツキちゃんだ!」
「ナツキちゃんがいるぞ!まさか俺達の為に呼んでくれたのか矢車さん!」
「なんて良い人なんだ…口ではあんなこと言っておきながら、俺達の為にサプライズを用意してくれてるなんて…!」
「すまなかった矢車さん!あんたの事誤解してたよ…!」
「え?え?え?」
ふっ…なぜか矢車さんの評価が上がっているが些末な問題だろう。
「話は小屋の中で聞かせてもらった。あなた達はありすとレナの連絡先が知りたくて難癖をつけていた。委員長、間違いない?」
「え?あ、はい、そうですけど。なんで出てきちゃったんですか奈月さん」
「ファンサは大事。わざわざわたしの為に集まってくれた以上、手を振るくらいはしてあげるのが情けというもの。彼らを見ると良い。すっかり飼い慣らされた豚のように大人しくなっている」
ふむん。なっちゃんのあまりの可愛らしさに言語機能が麻痺しちまったようだな。当然だが不甲斐ない。なっちゃんでこうなら、お前らあーちゃん見たら死んじまうかもな!!
「ありすとレナはいないけど、ここにはわたしがいる。せっかくの機会。わたしの一番のファンは名乗り出るといい。握手くらいはしてあげる」
まったく、なっちゃん(偽)と握手出来るなんてお前ら一生の思い出作れたな?もう思い残すこともないだろ。
「恥ずかしがる必要はない」
おいおいどうしたんだ?憧れの存在に怖気づいちまってるのか?困った奴らだぜ全く…仕方ないな。
「そこのあなた、遠慮する必要はない」
「え?確かにナツキちゃんも好きだけど、一番のファンはアリスちゃんなんで…」
なるほど、あーちゃんファンか。なら仕方ない。あーちゃんが一番可愛いくて最強だからな!!
「そこの眼鏡、恥ずかしがらなくても良い。こんなチャンスは二度とない」
「ぼ、僕はレナさんのファンなんです。あの楚々とした佇まいが素敵で…」
ふむ。まあレナちゃんは三人の中では一番マトモそうに見えるからな。勘違いするのも無理はない。
「ならそこのお前、さっさと来い」
「え?あー、俺も一番はアリスちゃんなんだよな。ナツキちゃんはなんて言うかこう、可愛いマスコット的な?ファンとはちょっと違うんだよなぁ」
「あー、なんか分かるわ。ナツキちゃんは妹とか姪みたいなポジションだよな。応援はするけど本命とはちょっと違うみたいな」
こ、こいつら…
「奈月さんのファンはご年配の方と女性が多いですからね。同年代の異性が相手ですとやはり恋愛感情は切っても切れないものですし。いえ、奈月さんに魅力がないわけではありませんよ?ですがありすさんやレナさんが比較対象になりますと、どうしてもその…ね?」
ね?じゃねえよ。本人の目の前でなんて残酷な事を言いやがるんだ…誰がその代償を支払うと思ってるんだ!なんでロリコンの一人もいねえんだよ!!このピンチ、どうやって凌げば…
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