第155話 衝突

「漆黒の堕天使と癒しの聖天使ナッちゃん。呼ばれるなら奈月さんはどちらが良いですか?」


 どっちも良くねえよ。最悪の二択だよ。まさか万王様呼びが大当たりの部類だとは思わなかったよ。そしてこんな事で小雪ちゃんに感謝する日が来るとは思わなかったよ。というかなんで選ぶ前提で話が進んでるんだよ。危うく流されそうになったじゃねえか。


「どちらもわたしに相応しくない。そもそもあの程度の戦いでわたしに二つ名をつけける?わたしを舐めるのも大概にして欲しい」


「そう言われると返す言葉もありませんね。確かに奈月さんなら最後まで残る可能性は高いでしょうし、その時行われる戦闘は今までの比ではないでしょう。分かりました。その時に改めて考えようと思います。皆さんも良いですね?この件は一旦保留にします」


「分かりました」


「ふん。確かに今まではたまたま上手くいってただけの可能性もあるしね。貴女に二つ名はまだ早いのは確かよ。悔しいならこのバトルロイヤルで結果を出す事ね。そうすれば認めてあげなくもないわ」


 なんでそんな俺が分不相応で辞退しました的な感じになってんだ。


「さて、奈月さんのお話も終わったようですので、今後について話し合いたいと思います」


 俺の話はまだ終わって…いや、とりあえず撤回させたから当初の目的は果たせたのか?


「皆さんにお話した通り、私はこのバトルロイヤルでドン勝する気はありませんので最終的にはリタイアするつもりだったのですが、丁度良いタイミングで奈月さんが来てくださいました。ありすさんやレナさんではなく、奈月さんと出会った事、これも運命でしょう。今より私は奈月さんを王者へと導く一助と成りたいと思っています」


 俺視点だと矢車さんと出会ったのはトイレが導いた運命になってしまうわけだが。


「ですので皆さんも無理して私と行動を共にする必要はありませんよ。皆さんを助けたのは私の我儘ですから恩に感じる必要はありません」


 ふむ…何時の間にか矢車さんが勝手に仲間になってしまっているんだが。


「そんなお姉さま!日向さんとお姉さまが出会ったのが運命なら、私達とお姉さまが出会ったのも運命です!」


 そうだそうだと頷く女の子たち。君たちはバトルロイヤルする為に参加したんじゃないのか。何故出会い系になっているのか。


「そうですお姉さま。私たちにもお姉さまをお手伝いさせてください。私達の願いはお姉さまと一緒にいる事。そしてそれは既に願いは叶っていますから」


 なんということだ。お荷物が一気に10人増えたんだが。おかしいな…こいつらぶっ殺すつもりだったのに、なんでこんな事になってるんだろう。


「私はたまたまここに居合わせてるだけだけどね。流石に自分が優勝できるとは思ってないし、ま、これも何かの縁でしょ。貴女が優勝するのを手伝ってあげるから感謝しなさいよね」


 デレた!ツン子ちゃんが急にデレたぞ!とはいえ君も邪魔なだけなんだよね。どうすんだこれ。流石にこの状況でこの子達をぶっ殺すのは人として問題があるような…

くそ、有無を言わさず戦っておくべきだったんだ!


「皆さん…探学は違えど、皆さんと出会えたことを万魔様に感謝します。バトルロイヤルに参加して本当に良かった」


「お姉さま!!」


 それにしても矢車さん、君、意外と満更でもないよね。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「それでは現状の確認をしましょう。スマホの存在によりこのバトルロイヤルは最早個人戦の体を為していません。スマホを使えない人は、極一部の例外を除いて狩られるだけの存在と言って良いでしょう」


 僕は個人戦で頑張りたいんですが…駄目ですかそうですか。


「現状、大きく分けて6つの勢力に分かれます。まず一つ目。織田遥さんや毛利恒之さんのような個人勢ですね。勢力としては最も小さいですが、油断すれば全滅しかねません。なるべく他の勢力と潰し合って欲しい所です」


 俺もその勢力になりたいんですが!…はい、駄目ですよね。


「二つ目。東北探学勢です。現時点での最大勢力でしょう。全員が黒巫女候補で顔見知り、おそらく事前に意思統一をした上で参戦しているはずです。奈月さんと戦った上で逃げ切ってますし、実力的にも侮れない人達です」


 黒巫女候補ちゃん達か。鴨がネギ背負ってやってくるようなもんだと思うんだがなぁ…何その引いた顔は。


「三つ目、友人や同探学同士で組んでるスマホ勢です。数としては一番多いでしょうが、そこまで脅威ではないと思います。自分に自信があれば個人で動くでしょうし、組んで動くにしても東北探学のような連携は難しいでしょうし」


 そういや、あーちゃんやレナちゃんどうしてるんだろうな。ソロでやってんのか合流してんのか。あーちゃんはありえないけどレナちゃん脱落してないよな?


「四つ目、スマホを使ってない勢です。どのくらいいるかは不明ですが脅威にはなりえないと思います」


 俺もそうなんだが?


「五つ目、私たちです。探学は違えども志を同じくする皆さんと一緒なら、困難に打ち勝ち、奈月さん優勝の大望を果たせると信じています」


 ぶっちゃけ君たち、居ても居なくても関係な…いえ、なんでもないです。


「六つ目、これが目下一番の脅威と言えます」


 お?そんな奴らがいるのか!?黒巫女候補ちゃん達やクソ野郎以上に脅威とかワクワクしちゃうじゃないか。


「何の因果か…いえ、奈月さんがここに来た。つまりこれもまた運命の導きなのでしょう。彼らはそうですね、


「お姉さま!奴らがまた来ました!!」


 バンッと扉を開けて見張りをしていた子が飛び込んでくる。途端、小屋の中のほんわか空気がひりついた空気へと変わる。


「そうですか。奈月さんはここにいて下さい。決して小屋の外に出ないように。彼らは私が対応しますので」


 そう言い残して小屋の外に出る矢車さん。なになに?外に来てる奴ってそんなにヤバい奴らなの?荒事なら任せろー。この子たちに使えなかった分、俺のNSCが火を吹くぜ!


「日向さんは外に出ない方が良いかと。面倒な事になりかねませんので」


 面倒な事?むしろ歓迎だぜ!NSCで血祭にしてやらぁ!!


「先ほどお姉さまが言いかけた事ですが。六つ目の勢力は、お姉さまが私達を助けた時に見逃した人達が主体となってまして」


 ほう。矢車さんにリベンジでもしたいのか?なんて美味しいシチュエーションなんだ。黒巫女候補ちゃん達、俺もリベンジいつでも待ってるぜ!


「何故か徒党を組んでまして。お姉さまにちょっかいをかけてくるんです。しかも来る度に人数が増えてまして」


 ほう?キャッチ&リリースで数が増えていくとか理想のカモじゃねえか!やるな矢車さん。これは是非ともその手法を学ばねば。でも生かさず殺さず生殺しって苦手なんだよなぁ。

 

「第六勢力は…アレナちゃんねる過激派です」


 …ん?

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