第155話 選択
「スマホの件については礼を言う。だけどわたしが大人しく委員長に会ったのには理由がある」
「そうなんですか?私としては奈月さんが一緒にいてくれると大変助かるのですが。スマホの件から分かると思いますが、最早このバトルロイヤルは当初の想定とは大きくずれています。なにせ参加者同士で連絡が取れる上に、外部から情報を得る事も可能ですから」
まあそうかもしれないな。俺にはどうでも良い事だが。
「勝者への報酬である万魔様が願いを叶えて下さる権利。叶えられる願いが青天井という事もあり、共闘のハードルが著しく下がっているのが大きな要因ですね」
確かに。分けられる物なら貰えるだけ貰って頭数で等分すればいい話だしな。
「勝者の条件が、最後に残った一人のみしかないのも問題です。参加者同士を積極的に戦わせるルールがないせいで、是が非でも個人的な願いを叶えたい人以外にとっては、個人で戦い抜くメリットがないんですよね」
…君、めっちゃ駄目出ししてくるじゃん。そりゃバトロワする事しか考えてなかったからルールなんて二の次よ。ほっといても勝手に殺し合ってくれると思ってたんだよ。
「一番の問題はやはり、共闘を禁止しなかった事でしょうね。織田遥さんや今の奈月さんのように、一人で戦い抜けるだけの強さがあれば問題ないのでしょうが、数は力ですから。一人で勝ち抜けるだけの強さがなく、共闘が禁止されておらず、スマホで連絡が取り放題で、勝者はどんな願いでも叶えてもらえる。これだけの条件が揃っていれば組んで戦おうとするのは当然でしょうね。一人で戦い抜こうとするのは、それこそ本当の強者かスマホが使えると気付かない人くらいではないでしょうか」
「お姉さま、そんな事をおっしゃらないでください!誰が決めたのかは知りませんがこのあってないようなルールのお陰で、こうして私たちはお姉さまに救われて、共に行動できるのですから」
「そうですお姉さま。こんな杜撰なルールにしてくれた方には感謝しないといけませんわ」
「杜撰なんて失礼ですよ。ルールを決めたのは万生教の方達ですもの。きっとこういった事が起こり得ると想定した上で、敢えて穴だらけのルールにしたに違いありませんわ」
北条の人たちは何でもありのルールを喜んでくれたのに…というかなんで俺はこいつらの話をのほほんと聞いてるんだ!
「そんな事はどうでもいい。それより委員長、わたしの事を†漆黒の堕天使†などとふざけた名前で呼んだ人がいた。どういう事?」
「奈月さんの戦いぶりを見て頭に浮かんだんです。素敵な呼び方だと思いませんか?」
「わたしに†漆黒の堕天使†要素なんてどこにもない。訂正を要求する」
「いいえ。私には確かに見えました。奈月さんが戦う背中に天使の羽が生えているのを」
その歳で幻覚を見るのはどうかと思うんだが。
「私も見ました。日向さんの背中に天使の羽が生えているのを」
おいおいこいつら集団幻覚か?酒でも飲んでるんじゃないだろうな。
「東北探学の方が使われた氷魔法から日向さんが出てきた時は、天使が舞い降りたと思いました」
「この世のものとは思えない光景でしたし、天使と間違えても仕方ありませんわ。日向さん、こんなに小さくて可愛らしいんですもの」
なんだと…お前の攻撃なんて全然効いてないぜ演出のせいでこんな汚名を背負わされたというのか?
「奈月さんの魔弾銃、おそらく万王様から与えられた物ですよね?あのような理外の武器をポンと奈月さんに渡す存在は、万王様以外考えられません。正に神器と呼ぶに相応しい物です。神器、そう、神が我々人の子に授けて下さる理外の宝器。すなわちそれを授ける事の出来る万王様は神に等しき御方です。流石は万魔様の王配たる御方です。そしてそんな万王様から神器を授かった奈月さんは神に選ばれし者、神の僕、そう、それ即ち天使と言っても過言ではありません。ですが神は現世には存在していません。ならば現世にいる万王様と万魔様は神ではないのか?いいえ、御二方は人の身でありながら我らを導くべく下界に顕現なされた現人神なのです。そして奈月さんは天界より人界に降臨された現人神たる万王様にお仕えする天使。そう、堕天使です。奈月さんの纏う装束が漆黒なのがなによりの証拠。そう、漆黒の堕天使。奈月さんに相応しい呼び名です」
「漆黒の堕天使、素敵な呼び名ですわ」
「漆黒の堕天使、日向奈月さん。お姉さまに直々に呼び名を付けて貰えるなんて羨ましいです!」
ふ、ふ、ふ…ふざけるな!黒巫女用の服たまたま着てるだけじゃねえか!しかもお前、そんな事言ったら黒巫女全員、漆黒の堕天使だぞ!!
「漆黒の堕天使も良いですけど、日向さんは見てるとほっこり癒されますよね。癒しの堕天使とかいいんじゃないですか?」
「日向さんは確か光属性ですよね。でしたら光天使…いえ、聖天使では?」
「聖天使…ホーリーエンジェルですわね」
「癒しの
「うーん、それだとちょっと硬くないですか?ナツキちゃんかナッっちゃんの方が良くないですか?」
こいつら…なっちゃんに恨みでもあるのか?くそ、どうすんだこれ。ここで全員始末しても意味ない気がして来たぞ。むしろ被害が拡大しそうなんだが…進むも地獄、退くも地獄、俺は一体どうすれば。教えてくれなっちゃん。俺はどっちを選べばいいんだ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます