第152話 イ㌔
「なんと!毛利恒之くん、大胆な公開告白をぶちかましましたぁぁああ!全国生放送中に告白するとはなんたる豪胆さ!流石は毛利といった所でしょうか!!」
「これ本人気付いてないんじゃないかの?どうするんじゃ?」
「どうするもこうするも、最早どうしようもありません!これも青春の一ページ!毛利恒之さんの想い人、北条紗夜さんが見ていることを祈るばかりです!!」
「見てない方がダメージ少ないんじゃないかのぅ」
「しかし北条紗夜さんですか。北条という事はもしかして関東禁忌領域守護職の北条家の御息女さんなんでしょうか?ナツキちゃんの知り合いの様な事を言ってましたけど、その辺りどうなんでしょうか。そういえば万魔央様が天獄郷に来郷された際、黒髪美少女が一緒にいたとかいなかったとかいう話がありましたが」
「ノーコメントじゃ」
「それが答えの様な気もしますが、きっと気のせいでしょう!しかしこんな情熱的な告白をされたら、北条紗夜さんもグラッときちゃうんじゃないですか?恒之君は口が悪くてヤンチャですけど、不利なナツキちゃんを助けようとした根は優しいイケメンですし!毛利家の御子息ですし!玉の輿ってやつじゃないですか?ちなみに私なんてどうでしょうか!?」
「それこそ奈月のえぬえすしいと同じじゃと思うがの」
「NSCと同じ?つまり告白成功率120%アップという事ですか!?私もしかして玉の輿ですか!?」
「零になにを掛けても零じゃが、夢を見る権利は誰もが等しく持っておるからの。儂は否定せんぞ。宝くじと一緒じゃ」
「なるほど!宝くじを買っても当たらないですが、買わなければそれ以前の問題という事ですね。まずは行動する事が大事と!そうですよね無常様!」
「興味がないな」
「はぁ…全く。鏡花、お前もいい歳なんじゃから少しは考えたらどうなんじゃ?見合い話も山ほど来とるじゃろ」
「万魔様の御命令とあらばお受けいたしますが。そも直接言おうともしない惰弱な輩には興味がありませんので」
「全く…お主らがそんなじゃから、わざわざ魔央に食事会を頼むことになるんじゃぞ」
「なんと!!魔央様とお食事会ですか!?万魔様、その話詳しくお願い致します!!そして願わくば私もその席にお呼ばれしたいです!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『違うっ!!俺が好きなのは!北条紗夜さんだぁぁあっ!!』
「きゃーっ!!え?ほんと?北条紗夜さんってもしかしなくても紗夜ちゃんだよね?」
「う、うわぁ…こんな大勢が見てる中で告白するなんて、この人勇気あるわね。それでそれで、どうするの?紗夜ちゃん」
「どうするもなにも、これは告白しているわけではないでしょう?奈月御義姉様の質問に答えているだけでは?」
「えー?それは違うよ紗夜ちゃん。これは間違いなく愛の告白だよ!TVを通して思いの丈を紗夜ちゃんにぶちまけたんだよ!それにこれなら聞いてなかったは通用しないしね!」
「そう言われましても…この人と会ったのは一度だけですよ?良い印象もありませんし」
「それって紗夜ちゃんに一目惚れってこと!?はぁ~、ロマンチックだね。私もお兄ちゃんを見た時ビビッて来たから良く分かるよ!運命の出会いってやつだね!」
「一方的に運命感じられても困ると思うわよ。そもそもあんたの運命は直接否定されたでしょ」
「そんなことないもん!最後はお兄ちゃんって呼んでいいって言ってくれたから大丈夫だもん!奈々ちゃんの方こそいつまで経っても妹扱いでしょ!」
「ひ…人が一番気にしてる事を…!!」
「それにしてもまさかの万魔央様×毛利恒之、いえ、毛利恒之×万魔央様ですか。その発想はありませんでした。いっそのこと泰正様も絡めて禁断の三角関係を…」
「千代?貴女、変な事を考えてないですよね?」
「勿論ですお嬢様。千代はいつでもお嬢様の幸せを考えております」
「本音は?」
「ホモが嫌いな女子なんかいません!!」
「千代…もし変な事を考えているようなら、私は貴女を始末しなければなりません」
「お嬢様!そんなご無体な!千代のささやかな幸せを取り上げると仰せですか!?」
「そんな幸せはドブに捨ててしまいなさい。貴女には感謝していますし、頼りにもしています。ですが貴女のせいで主様が私を変な子扱いしているのも事実なのです。これ以上余計な事をしないで下さい」
「それは当然です。段ボールに入って捨て猫耳メイドコスプレをするような人を変な子扱いしない人などいないでしょう。ですが!そのお陰で万様はお嬢様とお話しする気になったわけですし、結果として受け入れてもらえたわけですから、千代は感謝されこそすれ恨まれる事はないと思っております」
「💢」
「あた、イタタタ、いひゃいれすお嬢ひゃま、ほっぺひゃつねりゃないでくだひゃい」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
こいつすげえな。好きな人を大声で叫ぶのも凄いが、よりによって紗夜ちゃんかよ。気持ちは凄く良く分かる、良く分かるがあの子は相当ヤバい覚悟ガン決まり系女子だぞ。メンタルお化けだぞ。
「なるほど。紗夜ちゃんが好き、と」
「ああ、そうだ。わりぃかよ!俺みたいな奴が好きになっちゃ駄目ってか!?」
「そんな事はない。ちなみにどんな所に惹かれたのか教えて欲しい」
「あ?そうだな…見た目もそうだけど、決め手はやっぱ性格だな。ほら、俺ってよ、ちょっと目つきと口が悪いだろ?そのせいでガキや女に良く怖がられるんだよ」
ちょっと?
「でまあ、俺の勘違いだったけど、ココにお前らが絡んでたと思って喧嘩腰になってたろ?そん時に毅然とした態度で俺に言い返してきた時にビビッと来たんだよ」
天国郷じゃビビッと来るのが流行ってんのか?
「態度って意味じゃ天月やお前も物怖じしてなかったけどよ。お前らは何だろうな、可愛げがねぇんだよ。お前ら見てるとうちのお袋や毛利の女連中思い出すんだよな。口より先に手が出るわガサツだわ男顔負けに戦えるわ。その点紗夜さんはお前らと真逆だろ?芯はしっかりしてるけど、守ってあげたくなるような雰囲気があるんだよな」
なるほど。確かに捨て猫ムーブは守ってあげたくなるだろう。気持ちは分かるぜ。しかしこうも紗夜ちゃんについて熱く語るとは。一応なっちゃんもこれ見てるんだが…!?そういや、このバトロワって生放送されてるんじゃなかったか?…まあいいか。わざわざこの場面をピンポイントで放映してる可能性は低いだろうし。ここまで熱く語る以上、これは認めざるをえまい…こいつはホモじゃなかったと。
「…良く分かった。あなたはホモじゃない。紗夜ちゃんが大好きな男」
「お、おう…へへ、なんか面と向かってそう言われると照れるな」
実はこいつ良い奴なのでは?そういや最初現れた時もなっちゃん助ける為だったな。成程…ふむむ。よし、ここは素直に俺に非があったと認めようじゃないか。紗夜ちゃんの事も応援はしないが邪魔はしないと約束しよう。決してこの告白が全国生放送されてしまった可能性を考えての結論ではない。断じてない。
「非礼を詫びる。紗夜ちゃんの事も、応援はしないけど邪魔もしないと約束する」
「ま、誤解が解けたってんならそれで良い。で、どうする?続きをやるか?なんかそういう雰囲気でもなくなっちまったが」
「ここでの勝負はあなたの勝ちで良い。私は引かせてもらう」
「俺は元々お前を助ける為に割って入っただけだからな。そういや良かったのか?あいつらさっさと逃げちまったけど」
「問題ない。あの程度なら何人来ても一緒」
「余計なお世話だったって事か。まあいい。次会う時は本気でやるから覚悟しとけよ」
「望む所。それじゃまた後で」
「ああ、またな」
結果的にトイレを放棄する事になってしまったが、甘んじて受け入れよう。さあ、次のトイレポイントへ心機一転、レッツゴーだ!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
日向奈月、とんでもない奴だったな。優勝するにはまたあいつとやらなきゃならないわけか…ヘッ、上等だ。次は最初から全力だ。まさかアレを振るうに値する相手がいるとは嬉しい誤算だぜ。とりあえず、親父に使う事になりそうだってメール送って…なんだこれ、ココからメールが着まくってんじゃねえか。何かあったのか?
『キャッ(/ω\*))((*/ωヽ)キャッ
ツネにぃ、すごかったよ!TVの全国生放送で、あんな大胆な告白するなんて!!見てるわたしまで恥ずかしくなっちゃった。あんなに熱い想いを語るなんて、そんなに紗夜さんの事好きだったんだね!ありすさん達もバトルロイヤルに参加してるから、きっと紗夜さんも見てるんじゃないかな?バトルロイヤルに優勝して良い所見せるチャンスだよ!!わたしは断然ツネにぃを応援するからね!!』
……メキャッと、スマホが握り潰される。
日向奈月…次会ったら絶対に――――ぶっ殺す!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます