第148話 スタジオの宮路さん
「――――というわけで、万生教でも属性身体強化魔法を模索した事があったのは確かだ。とはいえそれは天獄郷が出来て間もない頃。我々がまだ万魔様の庇護の元、生き永らえるだけの脆弱な存在であった時の話だ」
「儂は止めとけと言ったんじゃがの」
「なるほど。現在の探索者の主流である、身体強化魔法による近接戦闘と攻撃魔法による遠距離戦闘を両立させる戦闘スタイルの魁とされる千刃流ですが、属性身体強化魔法の実用化を試みてはいたんですね」
「当時は少しでも力を得ようと無茶をする方達が多かったそうでな。とはいえ惨憺たる結果に即座に禁止されたようだが」
「皆さんも、ありす様が使えるからといって、もしかしたら自分も出来るかも!?なんて勘違いをしないように気を付けましょう。っと、どうやらナツキちゃんに動きがあった模様です!丁度いいタイミングですね!早速画面を切り替えたいと思います!万魔様、お願いしてもよろしいでしょうか!!」
「うむ。儂に任せるがよい」
「これはどういった状況なんでしょうか?ナツキちゃんと…相手は東北探学の生徒さん達ですね。小屋の前で対面してますね」
『要警戒とは随分な過大評価。わたしは世間では無力な女の子で通ってるはず』
『それはバトルロイヤル前までの貴女の評価でしょう?少なくとも、今の貴女を無力な女の子だと思ってる人はここには誰もいないわよ』
『バトルロイヤル前?まるで見てきたように言う』
「どうやら東北探学の生徒さんがナツキちゃんを警戒してるようですね。ナツキちゃんが戦えることを知っているようですし、これはおそらくスマホが使えると知ってますね」
『私達は今の段階で貴女と事を構える気はないわ。ここに来たのも上がった火柱を利用して合流する為なの』
「日向が出てきた小屋の屋根が吹き飛んでいるのは、どうやら一戦交えたからのようだな。火柱というのはおそらく日向の攻撃だろう。それを目印にして合流したか。東北探学、中々目端が利く生徒が揃っているようだな」
「無常様からお褒めの事を頂きました。これは東北探学の生徒さんも嬉しいでしょうね」
『まあいい。わたしが戦えると知っているなら話は早い。潔くNSCの糧となれ』
「おっとー!ナツキちゃんが銃を取り出しました!やる気満々です!!ところでNSCとはなんなんでしょうか。無常様は知っておられますか?」
「聞いた事がないな。
「ナツキちゃんは銃を使っての戦闘スタイルのようですし、シューティングコンバット、でしょうか?だとするとNはなんなんでしょう…ナツキちゃんのNでしょうか」
「なら儂が使ったらBSCになるのかの?」
「万魔様が使われるのでしたら、直ちに千刃流にBSC部門を作らせて頂きます。手始めに日向を講師に招き、まずは私自らBSCを修めて御覧に入れましょう」
「どうやら、東北探学の三人は事を構える気はないようですね。ナツキちゃんが挑発していますが、冷静に対応しています」
「日向の戦闘を見たのなら正しい判断だ。仕掛けるにしても一度引き、時間を空けて奇襲をかけるべきだろうな。正面から戦うのは分が悪いだろう」
『万魔が聞いたら呆れる言い訳。恥を知った方が良い』
『万魔様を呼び捨てなんて不敬ですよ!!』
「ああっとぉ!?ナツキちゃん、まさかの万魔様を呼び捨て!流石にこれはアウトなのではないでしょうか!」
「む…」
「儂は別に構わんぞ。お主らも呼んでみるか?」
「万魔様を呼び捨てなど…例え天地がひっくり返ろうと出来かねます」
『ふん。多勢に無勢ならともかく、1vs3で尻尾を巻いて逃げるとは万生教徒の名が廃る。万魔もあなた達の様な人がこのバトルロイヤルに参加してると知ったら間違いなく落胆する』
『ふざけないでください!万魔様がそのような事で落胆されるはずがありません!そもそも私達は将来黒巫女として万魔様に仕えるべく研鑽を積んで来た身です!万魔様もバトルロイヤルに関して手段は問わぬと仰せでした!何ら問題はありません!!』
「ナツキちゃんはああ言ってますが、実際の所万魔様はどう思われますか?」
「別に良いんじゃないかの。勝てない相手から逃げるのは当然の事じゃ。むしろ侮って痛い目を見る方がガッカリするのぉ」
『話は変わるけど。わたしは今、天獄殿でお世話になっている。その伝手で万魔様とお話することも出来る。むしろ万魔様とはお友達と言っても過言ではない』
「な!?そうなんですか万魔様!!」
『な!?ふ、不敬どころか万死に値します!!』
「まあ間違ってはおらんの」
『不敬ではない。実際に配信で万魔様とコラボもしている。何かあったら遠慮なく言うんじゃよとお墨付きも貰っている。なのでわたしは万魔様にこう言おうと思う。あなた達がどこの探学生なのかは知らないけど、これほど有利な状況で戦いもせず尻尾を巻いて逃げる臆病者など、黒巫女になる資格はない。黒巫女とは万魔様の矛であり盾。臆病者はお呼びじゃない。あなた達に関わる者全て、臆病風に吹かれた腰抜け共は、未来永劫黒巫女不適格の烙印を押してもらう』
「流石にそれはやりすぎだと思うんじゃが」
『そう思うならそう思っていればいい。わたしは万魔様と直接話せる立場にあり、そして万魔様が認めなくとも、この会話を知った万生教徒が、黒巫女さん達がどう思うか少しは考えてみると良い。果たして、あなた達は黒巫女になれると思う?』
「日向のあからさまな挑発ですが、ここまで言われておめおめと引き下がるような者は黒巫女としては認められません。日向の言う通り黒巫女とは万魔様の矛であり盾。舐められ、侮られたまま引き下がるようでは務まらない。それが決して勝てない相手であってもです」
「儂としては死ぬくらいなら逃げるべきだと思うんじゃがのぉ」
「万魔様がそうおっしゃって下さるからこそ、我々は命を懸ける事が出来るのです」
『戦え、そして証明しろ。この日向奈月に立ち向かい、己の存在価値を、黒巫女候補たる矜持を示せ。それを以て、腑抜けた事を言ったあなた達の
「恰好良い!普段と違う挑発的で尊大なナツキちゃんも凄くイイ!!まるで北条を蹂躙した万王様が乗り移ったかのようです!!」
「ぶふぉお!!」
「どうされました万魔様!?」
「ゴホッ…ちょっと
「すぐご用意致します」
「さあ、荒ぶるナツキちゃんを前に東北探学勢、一体どうするのでしょうか!?ナツキちゃん無双が始まるのか!東北探学勢が目にもの見せるのか!それともおめおめと引き下がるのか!TVの前の皆さん、ここから先、1秒たりとも目が離せません!!」
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