第131話 最大重要喫緊火急切迫緊急重大な問題

 バトルロイヤルを開始してどの位時間が経ったんだろう。まだ1時間は経ってないか?なんにしても誰にも遭遇しないから暇で仕方ない。森の中歩くのも飽きた。だるい。面倒くさい。帰りたい。ちょっと喉が渇いたし水でも飲み…!!??


 非常に重大な事に気付いてしまった。なんで俺はこんな事に気付かなかったんだ!やばい、やばいやばいやばいやばいやばいやばいぞこれは!!!俺、飲み物も食料も持ってきてないんだが!?どどどどどうすんだこれ!!バトルロイヤルは最長6時間だぞ!?その間、飲み食いせずにやれってか?出来なくはないが冗談じゃねえぞ…いや、まだ大丈夫だ。まだ慌てる時間じゃない。最悪食べ物はなかったとしても、飲み水位は確保できるだろ。なんせ森があるんだ。川だってあるさ。なんなら建物に水道や井戸とかあるかもしれないし。食べ物だって果樹があるかもしれないし、食料も保管されてるかもしれない。


 ふぅ…危ない所だった。危うく全てを終わらせるところだったぜ。流石に喉が渇いてお腹が減ったのでバトルロイヤル止めましたなんて笑い話にならないからな。バトルロイヤルにサバイバル要素がちょっと加わっただけ、なんならこれが本物のバトルロイヤルよ。自給自足、一から自分で用意する。これが日を跨いで一週間とか続くようなら住む場所作って、お風呂やトイレも作らなきゃだし…ん?俺は今何を考えた?もの凄く重要な事を俺は見落としてないか?致命的なミスを俺はしていないか?落ち着け…冷静になれ。冷静になってさっき考えた事を思い出すんだ。


 食べ物も飲み水もない。食べ物はともかく飲み水は川とかあるから大丈夫だろう。ここまではOK、なんら問題ない。こうなってくるとサバイバルみたいだよな。でもバトロワなんてそんなもんだろうし、半日で終わるだけマシだよな。そう、マシなんだよ。全然マシだから問題ない。これがもし日を跨ぐようなら、拠点の設営、快適に過ごす為にお風呂やトイレを作って…オフロヤトイレ。おふろやといれ?…お風呂屋と入れ?お風呂やトイレ…お風呂やトイレ…お風呂とトイレ!!!


 うぉぉおおおおおおお!!!風呂とトイレどうすんだあぁぁあああ!!!!いや、風呂はいい。どうでもいい。トイレだ。トイレどうすんだよ!!!なんでだ!!??なんでこんな事に気付かなかった!?普通気付くだろ!!6時間だぞ?食べ物や飲み物は最悪我慢すればどうにかなるかもしれないが、トイレどうすんだ!?


 やばいやばいやばい、どうすんだこれ。想定の範囲外過ぎる。何で気づかなかった?気付けなかった!?考えるまでもない、参考にした前世のバトロワゲームにトイレや風呂なんてなかったからに決まってんだろ!!無理だろ…無理だよ…バトロワ終了まで我慢しろって事?普通ならその辺で用を足せば済む話だから、別にそこまで抵抗はないんだが。そう、普通なら大した問題じゃない。ちょっとイライラする位で済む話だ。俺と遭遇した奴らが酷い目に遭うだけで、バトロワ自体は恙なく進行するだろう。だけど俺は今なっちゃんなんだが??可愛い容姿も、声も、無い胸も、余すところなく完全無欠の日向奈月なんだが??


 どうすんだこれ…なっちゃんで用を足せと?いやいやいや…いやいやいやいや…

無理むりムーリー。終了。はい終了。バトルロイヤルは只今の時刻を持って終了する事が決まりました~。優勝者は日向奈月さんでーす!!後のみなさんは仲良くパンデモランドで遊んでくださーい!!…って出来るかぁぁぁああああああああ!!!


『凄いですね日向奈月さん!ズバリお聞きします!勝利の秘訣は何だったんでしょうか!』


『トイレに行きたかった。でもトイレがなかったから手早く終わらせた』


 流石に駄目だろこれは…こうなったら間違いなく、あーちゃんは俺がなっちゃんに化けていた事に気付くだろう。会ってすぐ違和感覚えてたくらいだし。こんな身勝手で阿呆な理由で開始早々終わらせてみろ、やる気満々だったあーちゃんの怒りを鎮める為の犠牲は半端なものではないだろう。俺の人生も終わってしまいかねない。


 ぐぬぬぬぬ…どうする、どうすればいい?俺はトイレとバトロワ、どっちを選べばいいんだ?未だかつて、ここまで葛藤した事はなかったかもしれない。この世界に絶望した時よりもはるかに深刻で重大な悩みだ。俺の人生最大のピンチがこんな時に訪れようとは、お釈迦様にも想像がつくまい。


 ―――――うがぁぁぁああああ!!仕方ない。遺憾だ、非常に遺憾だが、断腸の思いだが、バトルロイヤルを終わらせるのは無しだ。とにかく我慢、我慢だ。我慢し続けよう。そして駄目そうならトイレ。そうトイレだ。建物を探せばきっとトイレがあるはず。そこで目と耳を塞いでどうにかしよう。信じてるぞ万生教。


 うぅ…なんてこった。まさかこんな事でなっちゃんに返しきれない借りが出来るとは…もうなっちゃんはお嫁に行けないのでは?いや、でもなっちゃんであってなっちゃんじゃないからギリギリセーフか?白か黒でいえば、限りなく黒に近い灰色…ってそれ黒じゃねえか!でも真っ黒じゃないからセーフ、セウト?


 安心してくれ未来のなっちゃんの恋人さん。俺はこの件を墓場まで持っていくから…俺となっちゃんが黙っていればなかった事になるし、そうなれば実質ノーカンだから…でもそうなるとこれはある意味NTRになるのでは?創作物ならともかくリアルでNTRはどっちも流石に勘弁なんだが…


 やばい頭が混乱してきた。ここはそう、余計な事は考えずに一先ずシンプルに考えよう。時間が解決してくれるかもしれないしな。催さない可能性も無きにしも非ず。とにかくトイレ、トイレをどうするかだ。これはなるべく我慢する方向で。どうしても我慢できなくなったらどこかの家のトイレで用を足す。ここまでが俺がギリギリ許容出来る限界ラインだろう。変身解除したら問題ないんだけどな…あーちゃんならともかく、目の前にいないなっちゃんに化けれる自信が全くない。


 大きい方は…無理無理無ー理ー!!我慢、断固として我慢!!そして仮に、そう仮にだ、あくまで仮定の話だが、もし我慢が出来なくなった時にトイレがなかったら…無理!絶対無理!!なっちゃんの姿でそんな事出来ませーん!!その時は潔くバトルロイヤルを終わらせよう。そしてほとぼりが冷めるまで逃亡生活だ。あーちゃんがもう怒ってないから帰っておいでと言い出すまで、どこかの山奥でひっそりと隠遁生活をしよう。いや、それならもういっその事、国外に脱出するのも手だな。流石に外国なら小雪ちゃんや万生教の影響力も及ばないから見つけられないだろ。


 由、大丈夫だ問題ない。俺は落ち着いた。とりあえずトイレは朝に行ったし暴飲暴食してないし、当面は大丈夫。とにかく今すべき事は、建物の発見とトイレがあるかの確認だ。それで俺の未来が決まると言っても過言ではない。悠長にバトロワを楽しむなんて言ってる場合じゃないし、むしろ確認しなきゃ楽しめないからこれは必要経費だ。ついでに飲み水や食料も確保しておけば後顧の憂いもなくなるが、なるべく最小限に抑えるべきだな。近くに誰かいたら…見逃すか。今回はあくまで緊急避難。なるべく影響は最小限で行くべきだ。俺だけスマホ使ってカンニングするようなもんだからな!!

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