第127話 バトルロイヤルの勝ち方教えます!

「第99回天獄杯・特別記念バトルロイヤル。今最後の選手がバトルフィールドに入場しました。これより10分後、バトルロイヤルの火蓋が切って落とされます!急遽決定されたこの特別記念バトルロイヤルですが、流石は万生教といった所でしょう。僅か1日余りの準備期間にも関わらず、しっかりと仕上げてきました」


「疑似ダンジョン探索アトラクション・天獄郷解放の設定を弄るくらいで済んだからな。大した手間はかかっていない」


「その為のパンデモランド、その為の貸し切りという事ですね。旅行に来てくれた人たちには申し訳ないですが、運が悪かったと諦めて下さい。あ、言い忘れていましたが、実況解説は今回のバトルロイヤルの総責任者、無常鏡花様にお越しいただいております」


「よろしく頼む」


「そして当然この方を忘れてはなりません!今回のバトルロイヤルにゴーサインを出された万魔様です!!」


「万魔じゃ。よろしく頼むぞ」


「さて万魔様。万魔様的に今回のバトルロイヤルの見所などはありますでしょうか?」


「うむ。ばとるろいやると言っても儂には良く分からんからの。その辺は鏡花の方が詳しいじゃろ」


「万魔様の代わりに私が説明させて頂きます。そうだな…まず、パトルロイヤルと聞いてどんな事を思い浮かべる?」


「そうですね…自分以外はすべて敵で、最後まで生き残った人が勝者になるゲーム形式、ですよね?」



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 さて。とりあえず始まるまではこの場で待機だな。おそらく初期位置は他の奴らとある程度離れてるはずだから、すぐに見つかるなんてことはないと思うが。ま、このバトルロイヤルはチーム戦じゃなくてソロ戦だしな。俺がバトルロイヤルの勝ち方ってやつを教えてやるぜ!!



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「その認識で間違いない。が、このバトルロイヤルに関してはそれが当て嵌まるかは微妙な所だな」


「そうなんですか?」


「まず、確かにこのバトルロイヤルは参加者124名の生き残りを賭けた戦いなのは間違いない。だが個人戦だと思っている奴は、序盤で脱落する可能性が高いだろう」


「え?これ個人参加のバトルロイヤルですよね?」


「形式上はそうだが、そもそも不特定多数から参加を募ったわけではない。天獄杯に出場予定だった探学の代表選手という括りの中で124人だ。この状況で個人同士の戦いになると思っている奴は考えが浅はかすぎるだろう」


「確かにそうですね…参加者は天獄殿から外出禁止と外部との接触禁止でしたが、参加者同士の接触は禁止されていませんでしたね」



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 とりあえず今出来る事と言ったら場所の把握くらいか…ここ何処?森の中って事しか分からんぞ。せめて建物の中なら良かったんだが…なるべく中心部近くに行きたいんだが、東西南北すら分からん。地図もないしどうすんだこれ。



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「とはいえ、初期位置は完全にランダムだ。事前にどういった場所でバトルロイヤルを行うかは伝えていない。地図もない。連携するにも合流が必須となる。緊密な連携などは取れないだろう…普通はな」


「そう言われるという事は、あるんですか?緊密な連携を取る方法が」


「一応全員に伝えてはいるがな。聡い者はピンと来ただろう」


「私には全く分かりません。一体何なんでしょうか。そもそも誰がどこにいるかも分からないんですから、連絡取れなきゃ合流は無理ですよね?」


「その通り。だが連絡を取れるものは誰もが持っているだろう?むしろ持ってない人などいないのではないか?」


「そんなのスマホくらいしかないと思うんですが…え?もしかしてスマホ使えるんですか!?」


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 ま、何処にいるか分からないってのは全員同じ条件だから問題ないか。最悪探査魔法で全員の位置を把握して人の多そうな方向に向かえば大丈夫だ。でもせっかくバトロワするんだから位置把握のズルはあんましたくないんだよな。どこに人がいるか分かったら面白くもなんともない。透視の腕輪があるだけで、理不尽大部屋モンハウ来なきゃ終盤まで生き残りほぼ確定しちゃうくらいだからな。俺は健全にバトロワするんだ!!



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「このバトルロイヤルは全国放送されているからな。スマホだけピンポイントに遮断など出来ない以上、通話も出来るしTVも見れる。所持品を取り上げなかった弊害だな。もっとも、天獄殿で拘束中はスマホは使えなかったから、今回のバトルロイヤルでも使えないと思っている奴はいるかもしれんが。それに気付けるかどうか、気付いたとしていつ気付くのかが勝負の大きな分かれ目になるだろう」


「確かに…スマホで連絡を取れるなら話は大きく変わります。目立つ物を合流場所にしても良いですし、自分と同じエリアに誰がいるのかも分かりますから早急に合流出来ますね」


「そう、これはバトルロイヤルの皮を被った探学対抗戦だ。スマホで連携を取り、仲間と合流し、敵を数で圧倒し、最終的に一人を優勝させる為のな」


「でもそれは難しくないですか?万魔様が願いを叶えて下さるのは一人だけですよね?」


「そうじゃぞ。願いを増やすのは流石にえぬじーじゃ。勝者一人が一つだけじゃぞ」


「叶う願いが一つである以上、当然己の欲望を叶える為に単独行動する者もいるだろうが、チームを組む事で、皆に恩恵のある願いを叶えようとする者達もいるだろう。それらを踏まえた上で終盤で裏切りを考える者もいるだろうし、その辺りの駆け引きや判断も見所の一つだろうな」



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 とりあえず最後どうすっかなぁ。なるべくならあーちゃんとレナちゃん、それと俺が優勝するのは避けたい。あんな願い事叶えられてたまるか!最悪、俺が優勝してその場で適当に願い事を消化するしかないか。ギャルのパンティおくれ的な感じで。小雪ちゃんモフモフさせてくれとかで良いか。



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「バトルロイヤル終盤で味方を背後から撃つような展開もあるというわけですか…願いを叶える為とはいえ、その行動は流石にドン引きしてしまいそうです」


「実際やる奴はおらんじゃろうがな。仮に裏切って優勝して儂に個人的な願いを叶えてもらったとして、そやつの人生はこれからも続くのじゃ。探学にも通い続ける事になるし、裏切った者達と顔も合わせるじゃろ。当然この放送を見ている者は全国に大勢おるしの。今後の人生と釣り合いが取れる願いなら良いんじゃろうが」



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 速攻中心部に到着した上で建物内に隠れて参加者が脱落するのを待つ。これこそが俺が導き出したこのバトルロイヤル必勝法よ。キル数を稼ぐ必要もないしアイテムを集める必要もない。ならば最終エリアで引き籠り以上の最適解などありはしない。やはり引き籠り最強!俺がおもちゃの二丁拳銃しか持ち込んでないのは、他の奴らに対するせめてもの慈悲だ。これが王者の余裕ってやつよ。見てるか?なっちゃん!俺が編み出したこの最強戦法は、今日からなっちゃんのものだ!将来バトロワの教科書にあまりに強すぎて禁止事項に!?日向奈月戦法!なんて紹介されちまうかもしれないな!!



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「エリア縮小の法則が分かれば、最終的に中心部を押さえた者が圧倒的優位に立つと誰もが理解するだろう。比較的早い段階で中心部は激戦になると考えられる。個人で単身中心部に潜み、漁夫の利を得ようと浅はかな考えをしている者は痛い目を見るだろうな」


「最長6時間の長丁場ですもんね。早めに中心部を制圧したとして、その後維持し続けなければなりませんし、どのタイミングで制圧するかが非常に重要になりそうですね」


「重要なのはそれだけではないぞ。例えば食料の問題がある。事前に最長6時間と通達しているので、用意していない奴はただの馬鹿だが、一応そんな奴の為に水場と食料は用意した。野菜や果樹といった現地調達になるがな」


「確かに、空腹だと判断や注意力が散漫になったりしますからね。6時間の長丁場、勝ち残るつもりなら食糧問題は非常に重要です」


「食べる物がないので負けましたというのは流石に可哀想なのでわざわざ用意してやったが、入手にはそれなりのリスクを負ってもらう。水場や食料調達場所は、周囲が開けた場所にしか存在しない」


「成程。つまり空腹と発見され狙われるリスクを天秤に掛けろという事ですね。ところで万魔様と無常様は注目されている方はいらっしゃいますか?」


「そうじゃの。儂はやはり織田遥じゃな。こやつの発言がそもそもの発端じゃ。口だけではない所を見せて欲しいの」


「私は…そうだな。個人ではないが、やはり東北探学だろう。彼女たちには今しがた述べた事が全て当て嵌まる。集合を許した場合、厄介極まりないだろうな」


「東北探学ですか。確か六角さんも集団戦闘においては他の追随を許さないといった事を入場行進の時に言われてましたね」


「彼女たちは黒巫女候補でもある。故に意思の統一は容易だろう。裏切り行為も考えられない。織田遥同様、彼女たちの動向が勝敗の行方に大きく関わってくるだろう」



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 とりあえず適当に移動するか。誰にも会わなければそれはそれでよし、もし戦闘になったらなっちゃん流ガンカタが火を吹くぜ!!なるべくこうスタイリッシュに決めたいよな。なんだこいつ、この弾幕、近づけねぇえ!みたいな。いつリロードしてんだよ!!的な。そうだ、リロード方法を考えないと。流石に無限弾薬は怪しまれるだろうし…マガジンいちいち入れ替えたりするのもな…そもそも予備のマガジンなんて持ってない。そうだ!腕輪にグリップを打ちつける感じでリロードしました感を演出しよう。中々良いんじゃないか?アイテムバッグだからなんか良い感じに誤魔化せるだろ。しかも玄人っぽくて恰好良いんじゃないか?よっしゃー!テンション上がってきたぜ!最初の犠牲者よ、早く出て来い!!



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「さあ、10分が経過しました。いよいよ第99回天獄杯・特別記念バトルロイヤル開幕です!!参加総勢124名。その誰もに勝利の可能性があります。果たして勝利の栄冠は誰の手に!?願いを叶えるのは果たして誰か!!日本中が注目する世紀の一戦、今!火蓋が切って落とされました!!」

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