第125話 どっちもどっち

 ピピピピ鳴り響く無粋な電子音で目が覚める。…一体どこのどいつが時計にアラームなんて無粋なものを付けようと考えたんだろうか、迷惑極まりない。とはいえ寝過ごすわけにはいかない以上、これが必要悪というやつか。今日はバトルロイヤル当日。流石に寝坊して参加出来ませんでしたでは話にならない。北条の時と同じ轍を踏まない為に、夜の9時には寝たからな。体調は万全、これなら参加してすぐ寝るような事はないだろう。


 しかし最長12時間は長すぎたか…パンデモランド1日貸し切りだからって、バトルロイヤルまで長くする必要はなかったんじゃないだろうか。流石に今から2時間くらいに変更してくれなんて言えないし…なっちゃんで戦う以上目立って動くわけにもいかないし、他の探学生の奮闘に期待したい所だが、芋る奴は結構いるだろうし、長丁場は覚悟するしかないな。最大の問題は、途中で飽きて寝た場合、エリア外で脱落する可能性が大って所だな…



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 部屋から出て居間に行くと、案の定というか普通にあーちゃん達がいた。黒巫女さんの服を着てるあたり、既に戦闘準備は終わっているようだ。


「れーくんおはよう、今日は早いね。私たちの応援してくれるの?」


「おはようあーちゃん、あーちゃん達はバトルロイヤルで半日いないし、今日は全員個別行動ね。紗夜ちゃんも俺について来なくて良いから、ブラコンモンスター…じゃなかった、ひまわりちゃん達とでも遊んで来なよ。ルールのせいで俺はバトルロイヤル出れなくなったからね…見ててもムカつくだけだし応援はしないよ」


「やっぱり出る気だったんだ」


「そりゃまあ、その気がなきゃバトロワ開催なんて強行しないよ。まあ結果としては無駄骨だったけど仕方ない。あーちゃん達は楽しんできなよ。優勝すれば万魔からご褒美あるんだし、やる気出すには十分でしょ」


「もちろん!狙うは優勝だよ!!」


「ありす達と話し合って、優勝した際のお願いも決めてある。混浴する時は期待していて欲しい」


 おい待てなんだそれは。俺はそんなの聞いてないぞ。土壇場でそんな重要な事をさらっと言わないでくれないか。


「まあ、無茶はしないようにね。特になっちゃんは」


「分かってる。その為にれーくんに戦う武器を用意して貰った。ありす達には昨日言ったと思うけど」


「本番でのお楽しみってやつだね!誰が勝っても恨みっこなしだよ」



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 朝食をみんなで食べた後、あーちゃん達には天国の間から出てもらう。紗夜ちゃんはブラコンモンスターに予定がなかったのでこの後一緒にお出かけである。あの娘たちのお陰ですんなり単独行動がとれた事を考えると、お兄ちゃん呼びされるのも必要経費と割り切れ…ないけどまあいいや。とりあえず時間もあんまないし、なっちゃんと話のすり合わせだ。特に優勝後のお願い云々をな!

 なんだと…天獄郷に滞在している間、混浴の自由とその際に水着不要をお願いするだと!?意味が分からないんだが?それ小雪ちゃん一切関係ないじゃん!!なんでそんな事になったの!?


 ふむふむ…万魔様のお願いで天獄郷にわざわざ来るくらいだから、万魔様のお願いなら何でも聞くんじゃないかと思ったと。そんなわけないじゃん!小雪ちゃんもなんとか言ってよ!…え?儂も一緒に入ってもいいかって?良いわけないでしょ!!奈っちゃんも、勿論なんて安請け合いしないでくれる!?


 あーちゃんかレナちゃんが優勝したら小雪ちゃんにこのお願いをするのなら、あーちゃんかレナちゃんが最後に残っていた場合、優勝は辞退する約束をした以上、阻止する方法はない。途中であーちゃんとレナちゃんが脱落して、最後まで織田遥が残っていた場合、当然俺は勝ちを譲る気はないので俺が優勝して、なっちゃんが小雪ちゃんにお願いをすると。


 ふむ…ふむ?これはつまり、俺が優勝した場合、水着着用せずに混浴するのを、俺自身が望んでいるという事になってしまうのでは?なんてこった…なんでなっちゃんに化けるだけで俺はこんなに追い込まれてるんだ…つまり、回避する為にはあーちゃんとレナちゃんと織田遥を脱落させた上で、俺も最後に負けて無難なお願いしそうな奴を優勝させる必要があるという事か?イージーモードのはずが、なんでこんなハードモードになっちまってんだ…しかもあくまで引き金を引くのは俺の判断…なんて悪辣なんだ!こんなのどうしようもないじゃん!!


 かといって今更引き下がるわけにはいかない。最優先は織田遥の優勝阻止だ。バトロワやってる内に何かいい案が思い浮かぶかもしれないしそれに懸けよう。今までも追い込まれた時は咄嗟の機転でなんとかなってきたんだ。今回もなんとかなるだろう。



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「それじゃなっちゃん。悪いけど今日1日はここに缶詰めって事で」


「分かった。ここで大人しくしてる」


「後これ。俺視点でバトロワが観れるから。早々変な事はしないつもりだけど、暇つぶしに良かったら見てて」


「れーくんの活躍に期待してる」


 まだ勝ったつもりになるのは早いぜなっちゃん!俺はなっちゃんの掌の上から逃げ切ってみせる!


「時間もそんなにないからザックリ説明しておくよ。まずこれ。腕輪型のアイテムバッグ。流石にアイテムバッグの中身まではコピー出来ないからね。バトロワ用に俺が用意した。これは後でなっちゃんにあげるから好きに使って」


「嬉しい。わたしもれーくんから貰えた。でもどうせなら指輪型が良かった」


 そんな物をあげたらバトロワ前にハルマゲドンだぜ。


「それでなっちゃん(偽)が戦うのに使うのがこれね。まあ見ての通り玩具の拳銃だけど、これで魔法撃って戦うって事で一つよろしく。あれだね。魔法が入った弾丸を撃って攻撃する設定で一つよろしく。最終的には使いすぎてぶっ壊れた事にして、存在自体をなかった事にするから、これについてはそういうもんだと覚えておいてくれたらいい」


「分かった。魔法を籠めた弾丸を撃ちだす銃…名付けるとしたら魔〇銃」


 そうだね。〇弾銃だね!!でも名前がそのまんまだから流石に残すわけにはいかないんだ。やはりこの武器は壊れる定め。だって強すぎるもんな。あのまま主武器として活躍してた場合、最終的には2丁拳銃で氷と炎の弾丸でメド〇ーアもどき撃ってたんじゃないかな?やっぱり二丁拳銃は最高だぜ!!よーし!なっちゃんのバトルスタイルはなんちゃってガンカタで決定だ!


 これであーちゃんが選ばなかった選択肢、魔法剣はレナちゃんが、ガンカタはなっちゃんが継承した事になる。玩具だからどんな体勢からでも撃ち放題!両手クロスさせてバリバリ撃っちゃうぞ!GUN道ってやつを見せてやるぜ!!

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