第104話 天獄杯・東北探学紹介コーナー

『TVの前の皆さん、いかがお過ごしでしょうか。現在私は天獄ドームに来ています。御覧下さい。早朝にも関わらず超満員。最大収容人数九万人を誇る天獄ドームが見渡す限り人で埋め尽くされています。今日という日を待ち望んでいた人も多かったのではないでしょうか。かく言う私もその一人ですが、それもそのはず。今日ここで行われるのは全国探索者養成高等学校総合技能演習大会、通称天獄杯。全国の探学から代表として選ばれた若き俊英たちが鎬を削る登竜門。夏の風物詩と言っても過言ではないこの大会。その開会式が今まさに始まろうとしています』


『天獄郷の住民も天獄杯への関心は高いですが、今年は特に凄いですね。入ってきた情報によりますと、天獄ドームに入れなかった人達の為に特設会場が用意されているとの事です。天獄ドームに入場できなかった方は、そちらで観戦するのも良いかもしれませんね』


『その特設会場ですが、二日前から突貫で設営したらしいですよ。設営スタッフの皆さんには頭が下がります』


『そうなんですね。毎年恒例の天獄杯ですが、例年と比べても今年はかなり盛り上がってるように感じます。なにか理由があるんでしょうか』


『理由としてはやはり、一昨日放送された天獄杯直前特番の影響が大きいと思いますね』


『なるほど。つまり来場された方のお目当てはやはり?』


『はい。今年は天獄郷在住の方が多く来場されています。外部からの観客数は例年と変わらないようですが、在郷されている方々が大挙して会場に押し寄せる可能性がある為、先ほどお伝えした特設会場を用意したといった感じですね。そして実際想定通りの大混雑となりました。やはり直前特番で公表された内容、そう、万魔央様が天獄郷に来郷された事が関係していると考えて間違いないと思います』


『ちなみに宮路さんは、万魔央様とお会い出来たりしたんですか?』


『いえ、万魔央様が天獄郷にいらっしゃるのは間違いないですが、天獄杯に顔を出されるかは現在未定との事です。会場に来られた人たちも、万一の可能性に掛けて、御尊顔を拝したいといった思いで来られたのだと思いますね』


『そうなんですね。もしかしたら万魔様の開会の挨拶の時、一緒に登場されるかもしれませんね』


『万魔様と万魔央様は仲睦まじいとの事ですし、十分可能性はあると思います。是非ともお二人揃っての登場を期待したいと思います!』


『宮路さんありがとうございました。さあ、丁度盛大にファンファーレが鳴り響きました!みなさんお待ちかね、ついに第99回天獄杯が開幕します!!まずは代表選手の入場です。最初に登場するのは前回の覇者、東北探学の皆さんです』



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「さあ、遂に始まりました第99回天獄杯。節目の100回大会を来年に控えた今年の天獄杯ですが、万魔央様の初来郷という事もあり来年と同等、いえ、それ以上に記念すべき大会となることは間違いないでしょう。果たして今大会で勝利し歴史に名を刻むのは誰か、そしてどの探学なのか?なお今年の天獄杯ですが、全国の万生教徒とあなたの心を繋ぐ天獄郷TVが、余すことなく生放送でお送りいたします。司会進行役は私、須藤理沙が」


「実況解説は万魔十傑衆六席、六角茉莉が務めるよ。よろしくね」


「さて六角さん。早速ですが今年の天獄杯の見所など教えて頂いてよろしいでしょうか」


「そうだね。今年は色々と面白い事になりそうだけど、まずは最初に登場する東北探学から話そうか。僕たちにとっては一番馴染みの深い探学だね。ここに通ってる万生教とも多いんじゃないかな?」


「そうですね。東北探学の校長は元十傑衆の片倉香苗さんと言えば覚えている方も多いのではないでしょうか。そんな片倉さんが東北探学の校長になったのは5年前ですが、そこからの躍進には目を見張るものがあります」


「万魔様のお膝元、天獄郷の近くにありながら東北探学は天獄杯ではパッとしない年が続いてたからね。香苗さんが校長になってからは、黒巫女候補の受け皿としての役割を東北探学でも請け負う事で、優秀な子達も入学するようになったからね」


「当初は将来黒巫女を目指す子どもたちに悪影響があるのではと懸念する声もありましたが」


「それは仕方ないね。探学はあくまで探索者協会の一組織だし。在学中はなにかあれば天獄郷や万生教よりもそちらを優先する事になる。当然それをよしとしない人は多い。とはいえ探索者協会の探索者育成ノウハウは一定の信頼がおけるからね。こういってはなんだけど僕達並の才能がある子ならともかく、そうでない子たちにとっては探学でのカリキュラムの方が向いているのは確かだよ。それに子どもの内に天獄郷の外を知る事は大事な事だよ。ここは結構特殊だからね」


「片倉校長が探教と万生教の間を取り持ち両者の利害を調整する事で、憂いなく学生生活を満喫できるというわけですね」


「ま、そうそう何かあるわけじゃないけど。探恊は万生教への伝手が増えるし、こちらも未来の黒巫女候補を育ててもらう。winwinの関係だね」


「そんな東北探学ですが、天獄杯をなんと現在二連覇中です。これは黒巫女候補と探学のカリキュラムが見事に噛み合った結果と言えるのではないでしょうか」


「そうだね。二年前に優勝したのは香苗さんが校長になった時に入学した子達だ。そして優勝した子達は黒巫女としての務めを立派に果たしているから、概ねみんなが満足いく結果が出たんじゃないかな」


「そんな東北探学ですが、今年の天獄杯で有終の美を飾り三連覇達成となるでしょうか?実際の所どう思われますか?」


「東北探学の生徒達は優秀であり秀才と言えると思うよ。将来は立派な黒巫女になれるんじゃないかな。現に今年のメンバーも今まで優勝して来た子達と比べても遜色ない。だけど今回はちょっと分が悪いかな。厳しい戦いになると思うよ」


「それは最初に言われた色々面白い事になりそうとの発言と関係が?」


「そうだね。今年は面白い子が結構出場してるから。でも若い子は急に成長するからね。東北探学の持ち味は黒巫女になるべく培ってきた各人の万能さと連携だ。突出した個がいない代わりに、各人の技量が高いレベルで纏まっている。それを上手く発揮できればいい勝負が出来るんじゃないかな」


「成程。是非とも東北探学には三連覇の偉業を達成して欲しい所です。さあ、続いて入場するのは九州探学です」

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