第94話 論外
「本当にいいの?れーくん。今の内容だとれーくんにメリットがないと思うんだけど」
「万生教の人たちにはお世話になってるしね。俺と会った所で意味があるかは知らないけど、それで済むなら安いもんだよ」
「でも…こうなったら、私がれーくんに対価を払うよ!!」
「いや、いらないから」
「とりあえず、お風呂でお背中流すね!!」
「添い寝も必要」
「それなら天獄郷に滞在中、身の回りのお世話も必要です」
それは君たちがやりたい事であって対価ではないと思うんだが。他の男なら十分すぎる対価になるのかもしれないが、如何せん俺は普通じゃないんでな!!
「メイド服は駄目だから、黒巫女さんの巫女服でお世話だね!」
「けも耳も禁止されている。代わりが必要」
「奈月御義姉様。けも耳は駄目ですが、尻尾は禁止されていません」
「!!流石は紗夜ちゃん、目の付け所が違う。尻尾のみとなれば、ふさふさの狐尻尾一択。そこに丁度最適な見本がある」
おいやめろ!なんで話がトントン拍子で進んでるんだ!けも耳が駄目なら尻尾も駄目に決まってるだろ!!そんな口が駄目なら手でなんて屁理屈が通るか!!あとなっちゃん、それは流石に攻めすぎだと思うぞ。
「ふん、目の付け所は褒めてやろう。じゃが、このくおりてぃを再現するのは難しいと思うがの?」
見せつけるのようにひゅんひゅんと尻尾を振り回す小雪ちゃん。意外とノリノリだな?
「くっ…自前の耳と尻尾を持っている相手には、太刀打ちできない」
「万魔様はメイド服も禁止されてないよ?このままじゃやばいよ奈っちゃん!!」
「駄目、ありす。全てにおいて上をいかれている…これが日本最強にして最高の探索者」
どの部分でそう思ってるんだ。むしろ探索者要素が微塵もないんだが。
「まだまだ若い者には負けん。せめて百年は生きてから挑んでくるがよい」
百年生きたら普通人は死ぬんですがそれは。
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小雪ちゃんvsポンコツたちの争いは混迷を極め、最終的に天獄杯で優勝したら俺が各人と1日デートする事で決着がついた。あれ?これ俺が対価払ってない?まあいいや。各種お世話と大衆の面前で巫女服と狐尻尾を阻止できた事の方が大きい。おかしいな。なんで旅行に来たのにいつも以上に疲れてるんだ…
「そうだれーくん。ここあちゃんの事なんだけどね」
ココア?カカオ豆原料の飲み物がどうしたって?
「お兄さんがいるんだよ」
それがなにか?別にどうでもいい餓鬼の家族構成なんてどうでもいいわ。
「天獄杯の個人戦に出場するらしくてさ」
ふーん、もしかしてそいつのせいでココアって餓鬼が天獄郷に来ることになって、天獄郷の貸し切りやら、俺が1日デートなんてさせられる羽目になったのか?絶対に許さん。
「なんかね、れーくんに会いに来たらしいんだよ」
は?何で俺に会うのに天獄杯に出場するんだ?俺と全く関係ないんだが。
「優勝したら万魔様と直接会えるじゃない?その時に一戦出来るようにお願いするつもりだったらしくて」
優勝したら願いを叶えようなんて大会じゃないだろ。何勘違いしてんだそいつは。
「その人ね、毛利恒之って言うんだけど」
男の名前なんざ全く興味がねえな…ん?毛利?
「そうなんだよ。中国禁忌領域守護職の毛利家の人なんだって」
…そういや校長先生が何か言ってたような?禁忌領域の奴らが天獄杯に出て来るとかなんとか。どうでも良いのですっかり忘れてたが。
「一応聞くけど、会う気ある?」
「ないよ」
なんでわざわざ用もないのに野郎なんぞに会わなきゃいけないんだよ。時間の無駄だわ。
「だよね。放っておいたられーくんに突っかかりそうな人だったからさ、優勝したら会ってくれる様に頼むって言っといたんだけど」
「却下。やる事やってから出直せって言っといてくれる?」
「分かったよ。多分駄目だと思うから、断られたら諦めてねって伝えてるから大丈夫だと思うけど」
「れーくんと話したいなら全裸で三回回ってワンと言わなきゃ無理って伝えたら、心愛ちゃんの裸を見たいとかロリコンかよって言ってた」
は?俺はロリコンじゃないが!?
「失礼極まりない」
その通りだ!当然ガツンと言ってやったんだろうななっちゃん。そしてそんな事を言うとは、なんて奴だ許せん。
「そもそも心愛ちゃんの裸なんて見なくても、わたしが見せるから問題ない。わたしも十分小さい。いわゆる合法ロリに分類されるかられーくんも安心」
俺はロリコンじゃねえよ!!
「ふむ。奈月が合法ろりなら、儂も合法ろりなのか?」
「万魔様はけもっ娘のじゃロリ婆枠」
「なんじゃそれは。聞いた事がないのぉ」
「語尾にのじゃを付ける、見た目と実年齢が乖離している可愛いけもっ娘の事を世間ではそう言う」
「なる程のぉ。わしは世情に疎いからの。今は儂の事をそう呼んでおるのか」
おいやめろ!小雪ちゃんにニッチでディープな情報吹き込んでるんじゃねえ!真っ白な毛並みが真っ黒になっちまうじゃねえか!冗談じゃ済まされねぇぞ!!
「誰もそんな呼び方してないから。なっちゃんも、万魔を婆呼ばわりは流石に調子に乗りすぎだよ」
確かに獣っ娘のじゃロリ婆だけども。永遠の17歳が存在するように、小雪ちゃんも永遠のけもっ娘なのだ。内心で言うのはともかく口に出して言ってはいけないのだ。
「ごめんなさい。万魔様が親しみやすいから調子に乗ってしまった」
「悪気がないのは分かっておる。確かに儂は婆じゃしの」
「万魔様はババアじゃないよ!こんなに可愛いのに!!」
ぎゅっと小雪ちゃんを抱きしめるあーちゃん。
「こんなにもふもふしてて可愛いんだから!万魔様は万魔ちゃんだよ!!」
あーちゃん、お前もか!!
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