第95話 万魔ちゃん
駄目だこいつら…早くなんとかしないと…!!流石に暴走しすぎだろう。小雪ちゃんを婆呼び、あまつさえちゃん付けなんて…レナちゃんと紗夜ちゃんを見てみろ。あまりの出来事にフリーズしてるじゃないか。これがまともな人間のまともな反応ってやつだよ。
「ふ…この歳でちゃん付けで呼ばれるとは思わなんだ」
「あ…すいません万魔様。つい思わず呼んでしまいしました…あまりにも愛おしかったので」
…真面目な話、可愛いなんて言うのも失礼だよね。何も知らない子どもがいうならともかくさ。
「可愛い?儂がか?」
こてんと首を傾げてあーちゃんを上目遣いで見つめる小雪ちゃん。こいつ、分かってやってやがる…流石は属性の多国籍企業だぜ!!
「か…可愛い!可愛いすぎるよ!!!ぎゅって抱きしめてもふもふしたいっっ!!!抱きしめて一緒に寝たい!!!」
哀れだ…もふもふに囚われて正気を失ってしまったあーちゃん。そしてされるがままに受け入れる小雪ちゃん。…こっちをチラチラ見ないでくれるか。俺の未来を見ているようで辛いんだよ。美少女同士だからまだ見ていられるが、もふもふに屈したら俺がこれをやるというのか…!?一気に冷静になれたぜ…今後もふもふは心の中で思うだけにしよう。
「ありす。わたしもぎゅってしたい」
そして便乗しようとするなっちゃん。やべえなこいつ、怖いものなしかよ。なっちゃんの家は普通の一般家庭だったはずだが…なんでこんなモンスターが生まれてしまったんだ。天獄郷に連れて来たのは失敗だったかもしれない。
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可愛い女の子同士できゃっきゃうふふするのを見るのって目の保養になるよね。これが男だとこうはいかない。ただただ気色悪いだけだ。美少女ってのは存在そのものがチートなんだなぁ。しかしこうしてじゃれ合ってるのを見ると、小雪ちゃんも普通のけもっ娘にしか見えないな。この光景を見て小雪ちゃんが万魔などと呼ばれる存在だと思う奴は居ないに違いない。とでも思わなきゃやってらんねえなこれは。
「万魔様がこれほどまでに心を許されるとは…私どもではこのような事は畏れ多くて出来ません。そして万魔様も私どもにはこの様な態度をお取りにならないでしょう。これも全ては魔央様が居て下さるお陰です」
「そうですかね?滅茶苦茶失礼な事してると思うんですけど。これ万生教の人に見られたら殺されるんじゃないですか?」
「無理強いしたのなら当然処理しますが、万魔様が望まれての事だというのは見ればわかります。我々はただあるがままの万魔様を見守り、尊ぶのみです」
「そうですか。ありがとうございます」
凄いな万生教。どこまでいっても小雪ちゃんファーストか。こんな事されてるの見たら不敬だなんだで極刑に処しそうなものだが…?横を見るといつの間にか無常さんがいた。……ダメじゃん!!
「…無常さんはどうしてここに?」
「はい。料理勝負が無事終わりましたので、その報告に参りました」
流石、出来る女は違うね。出来ることならその有能さを発揮しないで欲しかったぜ。
「…いつからここに?」
「はい。日向が自分は合法ロリだと自慢げに発言した時からです」
…駄目じゃん。全部聞かれてるじゃん。さようならなっちゃん。せめて殺さない様に頼むくらいはしてあげるよ。
「ご安心ください。万魔様が不快な態度を少しでも見せられたのなら、真央様の連れといえども相応の報いを受けさせましたが、気を悪くされたご様子ではありませんでしたので」
「そうですか。有難うございます」
「いえ、ですがそろそろ万魔様の就寝の準備をしますので、お戯れはこのくらいにして頂けますと助かります」
まだ9時前だけど…子どもかな?でも寝る子は育つって言うしね。見た目全然変わってないけどね。
「分かりました。ほらあーちゃん、なっちゃんも!いい加減正気に返って!」
小雪ちゃんに群がっているあーちゃんとなっちゃんを引き剥がす。
「あ~!万魔ちゃん!!」
「ああ…わたしのもふもふが…」
こいつらやりたい放題だな。
「万魔も、嫌なら嫌ってハッキリ言わないと。このあーちゃん達ポンコツだからハッキリ言わないといつまでももふられるぞ」
「たまにはこういう触れ合いも良かろう。儂も嫌というわけではないしの。鏡花もするかの?儂は構わんぞ」
「はい!!…いえ、万魔様にあのような事は流石に畏れ多く。身の程は弁えていますので」
思わず本音が出たな。まあもふもふしたいよね。俺もしたいもん。
「そうか。別に構わんのじゃがの。お主はようやってくれておるし」
「っっいえ。立場を笠に着て己だけ特権を貪るなど、十傑衆筆頭としてやってはならぬことですので」
おや、耳が痛いぞ?
「ありす様も、申し訳ありませんが他の者の前では万魔様の呼び方に注意していただけると助かります」
そこは禁止してくれて良いんだが。
「すいませんでした無常先生。次からは気を付けます」
「日向もだ。私だからまだ良かったが、他の者に聞かれていたらどうなっていたか。以降は注意しろ。万魔様が良くても我々の抑えが利かぬ事もある」
「…すいませんでした」
「まあそう言ってやるな鏡花よ。こやつらも悪気があったわけではないしの。ありすも、儂らしかおらんときは気兼ねなく呼ぶが良い。他ならぬこの儂が許そう」
「ば、万魔ちゃ…万魔様!!」
小雪ちゃん、めっちゃ甘やかすじゃん。本人が良いなら文句はないけどさ。
こうして今宵また一人、敬虔な小雪ちゃん信者が生まれたのであった。日本広しと言えど、万魔をちゃん付けで呼ぶような奴はあーちゃん以外に存在しないだろう。
はぁ…俺もお風呂に入ってさっさとシマちゃんベッドで寝よう。今日あった事はなにもかも忘れるんだ…俺はもう疲れたよ、シマちゃん…
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