幕間 毛利危機一発
借りてきた猫の様に大人しくなったツネにぃを連れて、近くの喫茶店にみんなで入る。何時までも立ち話してると邪魔になっちゃうからね。最初からお店で休憩してれば揉める事もなかったけど…でもそうなるとアリスさん達とも出会えなかったわけだし、こういうのを結果オーライって言うのかな?
「変な言い掛かり付けて悪かったな。ココが騒いでなかった時点であんたらが悪い奴じゃないってのは分かりそうなもんなのによ」
「いいよいいよ。お兄さんなら妹が心配なのは当然だしね。こっちこそ疑うような事してごめんね」
最初はどうなる事かと思ったけど、ツネにぃも落ち着いたみたいで素直に謝ってるし、なんとかなって良かったぁ。
「アリスさんたちは何も悪くないですから。一方的に勘違いしたツネにぃが全部悪いんです」
「んな事いってもよ。一人にしてた妹が他人に絡まてりゃ心配もするだろ」
「変な人なら大声出して助けを呼ぶなりしてたよ。ここは天獄郷だよ?黒巫女さん達がすぐに来てくれるだろうし」
日本で一番治安が良いと言われてる天獄郷で、変な事を考える人なんていないでしょ。
「ここあちゃん。お兄さんやお姉さんっていうのはね、弟や妹には過保護になっちゃうものなの。その子が可愛ければ余計にね」
「ありすの場合は面倒見て貰ってる方だと思うけど」
「そんな事ないよ。私はいつもれーくんのお世話してるもん」
「一人にしたのは悪かったよ。確かに治安が良いつっても、子どもを一人にするのは間違ってるからな。もういいだろこの件は。こうして謝ってるんだしよ」
すごい…ツネにぃが自分の間違いをちゃんと認めてるよ!一体どうしちゃったのツネにぃ。何か悪い物でも食べたの!?
「とりあえず、ココが世話になったな。俺は毛利恒之だ」
「私は天月ありすだよ」
「日向奈月」
「星上レナです」
「北条紗夜と申します」
「北条紗夜さんですか!素敵な名前ですね!北条という事は関東禁忌領域の北条家の方ですか?」
ツネにぃ、一体どうしちゃったの?テルにぃに注意されても、毛利じゃ年上の人にもタメ口を止めなかったのに!!
「はい。父は北条の当主をしております。そういう貴方がたはやはり毛利領から来られたのでしょうか」
「泰隆様の御息女ですか。ご指摘の通り、私と妹の心愛は毛利領から来ました。父親は毛利の当主、元武です。泰隆様とは懇意にしていると父から伺っております」
「毛利領から来たの?もしかして天獄杯絡み?」
「ああ。毛利の個人戦代表に選ばれたんでな。ココを連れて旅行がてら来たってわけよ」
「そうなんだ。私も個人戦に出るんだよね。もし当たったらよろしくね!」
「お前が?そういや天月ありすって言ったな。何か聞いた事ある名前と思ったが…」
「ツネにぃ、この人たちはアレナちゃんねるの人だよ。ツネにぃも一緒に見たよね?ほら、北条の決闘の時の…あっ」
「お気になさらず。あの結果は圃場の皆、納得しておりますので」
「ココ、お前TPOを弁えろよ。TPOって知ってるか?時と場所と場合ってやつだ。すいませんね。不躾な事を言って。こいつはまだ小さいんで勘弁してやってください」
なんでツネにぃにそんな事言われなきゃいけないの!?TPOを弁えてないのはツネにぃの方でしょ!
「それよりもアレナちゃんねるって事は…もしかして万魔央も天獄郷に来てるのか?」
「れーくん?うん。一緒に来てるよ。といっても別行動だけどね」
「そうか…会えりゃ話は早かったんだがな。まあいい、来てると分かっただけでも十分だ」
「れーくんに用があるの?」
「ああ。天獄杯に出る事にしたのも万魔央に会うのが目的みたいなもんだからな。優勝すりゃ万魔と直接会えるし、その時に万魔央に会わせてくれってお願いするつもりだったんだよ」
「れーくんに会ってどうするつもり?」
「んな怖い顔で見んなよ、小さいのにおっかねぇな。別に喧嘩売ったりしねえよ。ただどんな奴か直接会って確かめたかっただけだよ」
「あの、信じられないかもしれませんが本当なんです。万魔央さんが禁忌領域に良い印象を持ってないのは知ってるんですが、わたしたちも万魔央さんとどう向き合うべきなのか悩んでまして」
「まあそんなわけで、直接会って確かめるのが手っ取り早いって事で無理言って探学の個人戦代表になったってわけよ。ああ、別にコネで選ばれたわけじゃないぜ?探学に入ったのはコネだけどな」
「そうなんだ。確かにれーくん色々言ってたもんね。でも大丈夫だと思うよ?ちょっかい掛けられなきゃ、れーくん大人しいから。わざわざ中国禁忌領域に出向くなんて事しないと思うし。面倒くさがりだからね」
「むしろ天獄杯を利用して会おうとする行為が、寝た子を起こす結果になりかねない」
「そうですね。北条との決闘を見たのなら知っていると思いますが、禁忌領域領の方々のお話を聞く条件、れーくん言ってましたよね?」
「ああ、なんかとんでもない事言ってたよな。でも冗談だろあれ」
「あれを冗談と捉えてる辺り危機意識が欠如してる。れーくんはやると言ったらやるし、相手にもそれを要求する。それでも会って話したいのなら、少なくとも君と心愛ちゃんが裸になって三回回ってワンくらい言わないと無理」
「はあ!?俺はともかくココまでか?万魔央ってやつはロリコンかなにかか?そもそもあんな条件飲む奴いねぇだろ」
「そう。だかられーくんは禁忌領域の人たちと話す気なんてない。面倒事を持ち込まれたくないからあんな無茶な条件を出してる。だから条件を満たさずに会って話すつもりなら、覚悟はした方がいい。北条との決闘の経緯を知ってればそれくらい分かると思うけど」
「…確かに。ココにそんな事させられねぇしな…てことは会って話すのは無理って事か?はぁ…天獄郷まで来たのに無駄骨かよ。あわよくば一手手合わせ願いたかったんだがなぁ」
「れーくんはそういうの一番嫌うよ?強引に会った上にそんな事言ったら、北条より酷い事になってたかもね」
「ちっ…仕方ねぇな。兄貴に釘刺されてるし今回は諦めるか。優勝したらどうすっかなぁ。なんも考えてねぇんだよな」
「恒之くんって優勝する自信あるんだ?」
「当然。そうでなきゃわざわざ横紙破ってまで天獄杯に出ようなんて思わねぇよ」
「そっか。ならもし優勝出来たら、私がれーくんに会って話をしてくれるようにお願いしてあげるよ」
「まじで!?」
「お願いするだけだから、れーくんが嫌だって言ったらそれまでだけどね」
「それだけでも十分だ。ありすって言ったよな、ほんと助かるぜ」
「ここで会ったのも何かの縁だしね。でも本当に聞くだけだよ?あともし会えても絶対戦おうとしたりしないでよ。どうなっても知らないからね」
「ありす、そんな約束していいの?」
「悪い人じゃないっぽいし大丈夫じゃない?嫌なら嫌ってれーくん言うだろうし。そしたらこの話は終わりだしね」
「あの、アリスさん、ありがとうございます。兄の為にわざわざ面倒事を引き受けて下さって」
「私は聞くだけだからね。お兄さんがれーくんに突っかかって、ここあちゃんが悲しむような事になって欲しくないし」
「おいおい、なんで俺が万魔央に負ける前提なんだよ。そっちが泣く羽目になるかもしんねぇだろ」
「ふふん!れーくんは最強だからね!誰が相手でも負けないよ」
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