幕間 運命の出会い

「あ、ごめんね。ここあちゃんそっちのけで話してたよ」


「い、いえ。皆さんの掛け合いを見られるなんて感激しました!配信の時も台本なんてなかったんですね!」


 凄い、凄いよ!配信の時も素でお話してたなんて!わたしとは大違いだ。 


「配信?もしかしてここあちゃん、私たちの配信見てくれてるの?」


「は、はい!アレナちゃんねるはいつも見させてもらってます!その…きっかけはレナさんのワンダラーエンカウントなんですけど…」


「そんな顔する必要はありませんよ。私はこうして無事ですし。むしろあれがあったお陰で今の私があるわけですし」


「確かに。レナがワンダラーに襲われたお陰で最強仮面様に出会えたことを考えると感謝してもしきれない。あのワンダラーにはお礼を言いたい」


「奈月は死にそうな目に遭ってないからそんな事が言えるんです。今になってはそう思うことも出来ますが、当時は大変だったんですよ」


「分かってる。あの時はわたしも生きた心地がしなかったし」


「そんな事より、ここあちゃんはこの中で誰のファンなのかな?やっぱり私かな?この溢れ出る頼れるお姉さんオーラのお陰で小さい子には人気あると思うんだよね」 


「え、えっと…全員大好きですけど、ちょっとだけアリスさんが一番かな」


「ほら奈っちゃん!やっぱり私が一番なんだよ!!」


 確かにありすさんが一番好きですけど、頼れるお姉さんだと思ったことはないんです。すいません…


「はぁ…こんな小さな子に気を遣わせるなんて。心愛ちゃんも気を使う必要なんてない。こんなポンコツは一番どうでもいいと本心を告げてあげた方が本人の為」


「い、いえ。アリスさんが一番好きなのは本心なので…」


「そう。ならいい」


「嫉妬はみっともないよ。きっと奈っちゃんは小さいから、お友達とは思われても憧れの対象にはならないんじゃないかなぁ」


「ありすの言葉に深く傷ついた。れーくんに告げ口して慰めてもらう」


「それはずるいよ奈っちゃん!私だってポンコツポンコツ言われて傷ついてるんだけど!?」


「ありすがポンコツなのは事実」


「だったら奈っちゃんが小さいのも事実じゃん!」


「二人ともポンコツなのは分かりましたから落ち着いて下さい。何度も言いますがここは街中です。言いましたよね?黒巫女さんが街中に沢山いると。あなた達の騒ぎが黒巫女さん経由でれーくんに伝わっても私は知りませんよ?」


「それは困るよ。仕方ないね。この続きは帰ってからだよ奈っちゃん」


「望む所」


 帰ってから続けるんだ…


「おい、そこのてめぇら。一体何してんだ?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 チッ、飲み物買うだけの予定が時間食っちまったな。なんで迷子の子供なんて居るんだよ。親は一体何してやがんだよ。しっかり手繋いどけってんだ。まあすぐ見つかったのは良かったけどよ。ココは年齢の割にはしっかりしてるから大丈夫だと思うが、早く戻らねぇとな。にしても…この件、兄貴に報告しなきゃ駄目だし、おそらく怒られるよなぁ。来た時は問題なかったから楽観視しすぎたか?いやでも、ココの特性も本人の認識次第でどうにかなるってのがハッキリしたのは収穫だろ。禁忌領域とは無関係ってのがちっと残念だけどな。


 ココは愚図るだろうけど、天獄杯が終わるまではホテルに缶詰めだな。俺も色々見て回りたかったんだけどなぁ。俺だけ外を出歩いてたらココが爆発しかねないし仕方ねぇか。ったく。兄貴も兄貴でココの世話係用意してくれても良いと思うんだがね。

ま、こうなっちまったもんは仕方ねぇ。対戦相手には気の毒だが、この鬱憤は天獄杯で発散させてもらうぜ。


 ん?何だアイツら。あの場所でココが休んでたはずだよな?もしかしてココにちょっかい掛けてやがんのか!?見た感じ女みたいだが…複数で囲んで何やってやがる!舐めやがって…田舎者だと思って馬鹿にしてんのか?丁度いい。天獄杯の景気付けにてめぇら血祭にしてやるよ!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 アリスさん達と話している最中、男の人の声が割り込んで来た。あ、ツネにぃだ。戻って来たんだ。


「あ、ツネにぃ


「そんな人数で小さい子を囲んで何しようとしてやがんだ?俺等が田舎者だからって舐めてんのか?」


 アリスさん達を睨みつけるツネにぃ。なんでいきなり喧嘩腰なの!?剣呑な雰囲気を感じたのか、アリスさんたちがわたしを背後に庇う様に立ち塞がる。


「誰?私たちはこの子と話してただけなんだけど」


 ツネにぃを不審者のような目で見るアリスさんたち。あわわわ、どうしよう。これってもしかしなくてもわたしのせい?


「俺か?俺はそこの子ども供の兄貴だよ。そういうお前らこそ誰なんだよ」


 チラっと私を見るレナさんに、首がもげる勢いでコクコクと頷く。


「ありす。どうやら心愛ちゃんのお兄さんというのは本当のようです」


「なんだぁ?俺がココの兄貴で悪いってのか?てめぇ何様のつもりだ」


「ここあちゃんのお兄さんの割にはガラが悪いなって思っただけだよ。別に悪いなんて言ってないよ」


「てめぇ…喧嘩売ってんのか?」


 止めて!わたしの為に争わないで!!


「それ以上御義姉様方に近づかないでください。心愛さんが一人で寂しそうにしていたので、具合が悪いのかと御義姉様方が心配して声を掛けられただけです。貴方こそこんな小さな子を異郷の地で独りにして何様のつもりですか?飲み物を買いに行くにしてもおぶって行くなり、やり様はいくらでもあるでしょう。それとも毛利領では小さな子どもを一人で放置するのが当たり前なのですか?」


 やっぱり毛利ってバレてた!?


「毛利領が蛮族の住む未開の土地だぁ!?随分舐め腐った事言ってくれんじゃね…」


 毛利領が蛮族の地なんて誰も言ってないよ!ツネにぃ頭に血が昇っちゃってるよぉ!


「どうしました?小さな女の子を心配して声を掛けただけの女性を殴るのが毛利の常識なら、どうぞ私を好きなだけ殴ってください」


 キレたツネにぃに真っ向から立ち向かえるなんて…紗夜さん凄い!


「いえ、はい。すいませんでした。僕の勘違いでした。申し訳ないです」


 なんなのその態度!??そんなお兄ちゃん見た事ないんだけどぉぉおおお!!?

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