第72話 優勝
やっぱ刀で戦うのは恰好良いな。俺も最初はテンプレよろしく刀と魔法で無双ゲーするつもりだったんだけどな。そっち方面の才能が全くなかったから諦めたのだ。おそらくあーちゃんに全部持っていかれたんだろう。それはそれで大鎌美少女が見れることになったので問題ないんだが。
そもそもモンスターは斬ったら血は出るし、構造は生物と何ら変わりがない。ダンジョン内では自然消滅してくれるが、禁忌領域だと死骸はそのままだ。どの道俺は近接戦闘はグロすぎて途中で挫折していただろう。その点魔法ならグロい部分を見なくても済むからな。現代人はやはり魔法しか勝たん。人はナイフで刺すのに抵抗はあるが、ミサイルのボタンを押すのに抵抗はない。チートがあるだけの一般人な俺に精神耐性などないのだから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、目が覚めた?」
声の聞こえた方を見ると、れーくんが椅子に座って私を見ていました。ここは…保険室でしょうか。他に人は居ませんが…ここにいるという事は、負けてしまったようですね。最後の攻撃、魔法剣と呼ぶにもおこがましい代物でしたが、矢車さんに振り切った所までは覚えているのですが、その後の記憶がありません。おそらくカウンターで気絶したのでしょうが。
「あーちゃん達が心配してさ。応援はいいからレナちゃんの傍にいてあげてって言うから俺だけ残ったんだけど」
そうなんですか。後でお礼を言わないといけませんね。幸い体に不調はありませんし、すぐ動いても問題なさそうです。私は負けてしまいましたが、ありすの試合がありますから応援しないと。
「気絶してたんだからゆっくりしときなよ。あーちゃんもやる気出してたから心配ないと思うし、なっちゃんが応援してるから問題ないでしょ」
…そうですか。ではお言葉に甘えてゆっくりさせて貰います。ありすなりの気遣いなのでしょうし。
「それにしても最後に使ったの、あれ前に見せたやつでしょ?」
「一応そのつもりではいたのですが。まだ形にもなってない紛い物ですけど」
「いやいや、あれはあれで良いんだよ。刀身を形作ってるのも良いけどね、ああいう魔法がブワッと荒ぶってる感じの方が魔法剣って感じがするし、俺はそっちのが好きだけど」
「れーくんに魔法剣を見せてもらった時、刀身が燃え尽きても魔法を維持していたでしょう?あれを参考にしてみたんです。魔法だけで刀身を作って維持するのはまだ無理ですけど、刀身が消滅したとしてもその魔法を当てれば不意は突けるんじゃないかと思ったんですが」
「普通なら使い道がないと思ってたからビックリしたよ。確かに相手が近接戦闘に集中して防御してる時に使うなら、別に刀身じゃなくても良いのか。矢車さんビックリしてたし結果的には大成功だね」
「そうなんですか。せめて矢車さんの余裕を崩したいと思って半ば破れかぶれだったんですけど」
「矢車さん火だるまになってたから十分じゃない?そのままレナちゃん叩き伏せてたけど。万生教の信者はやっぱヤバイね。敵にすると凄く面倒臭そう」
「それは…後で謝らないといけませんね。誰かに使うのは初めてでしたので、どうなるかも分かりませんでしたから」
「めっちゃ喜んでたけどね。流石は万王様の親衛隊長です!!って。俺は親衛隊とか作った覚えないんだけど」
矢車さんも満足できたなら、結果としては上出来でしょうか。後で師匠にも感想を聞きましょう。…それにしても、れーくんと二人きりなのはもしかして初めてなのではないでしょうか。…意識すると緊張してきましたね。身だしなみは大丈夫でしょうか。鏡で確認したい所ですが、見当たりませんね…席を外して確認に行くのも勿体ないですしどうしましょう…れーくんが気にしてないならいいのですが。いえ気にしてくれた方が良いのでしょうか。うぅ…頭がポカポカしてきました。
「失礼しまーす。レナちゃん起きてるかな?」
「寝ているレナにれーくんが悪戯している可能性がある。ありす、もっと静かに行動しないと」
「れーくんはそんな事しないよ。私と一緒に寝ても何もしてこないからね!」
丁度いいタイミングでありすと奈月来てくれました。聞き捨てならない事を言っていましたが、今は不問にしましょう。
「あれ、あーちゃん試合終わったの?」
「うん。準決勝で風音ちゃんに負けちゃった。頑張ったんだけどね。風音ちゃん強すぎるよ~」
「ありすは滅茶苦茶頑張ってた。後で褒めてあげて欲しい」
「準決勝?本選1回戦じゃないんですか?」
「ちょくちょく見に来てたんだけど、レナちゃんが全然目を覚まさなかったから心配してたんだよ。大丈夫そうで良かった」
「目覚めた時に誰もいなかったら不安だろうから、れーくんに居てもらった」
「それは…すいません。暇だったでしょう?」
「まあ、別に他人の試合見てても面白くないしね。ここなら静かで寝れるしむしろ感謝しないとね」
「れーくんも心配してたんだよ?れーくんが人を心配できるようになってお姉さんは嬉しいよ!!」
「知り合いなら心配くらいするでしょ…俺を一体何だと思ってるの?」
「引き籠りの人付き合い面倒くさがりな弟だけど」
「他人の事なんてどうでも良い自己厨だと世間は言ってるけど、れーくんの良さはわたしたちだけが知っていればいい。気にしちゃ駄目。わたしも気にしない」
「よし!レナちゃんも起きた事だし、決勝戦の応援に行こうか。まだ終わってないんでしょ?皆に勝った矢車さんを応援しよう!!」
正論は止めて下さい死んでしまいます。
ちなみに決勝戦の矢車さんvs何とか君は矢車さんの優勝で幕が下りた。一年生同士の決勝は探学史上初めてだとか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます