第45話 決闘開始

 【万魔央vs北条一門決闘会場・アレナちゃんねる】


《万魔央キレッキレだな》

《この場においても煽りまくる。煽らなきゃ生きていけないのか?》


「あー、れーくん途中で起こされるのめっちゃ嫌いなんだよね。ガチ切れしてるかも」


「そういえばアリスが言ってましたね。私と奈月じゃ起こしていいか判断できないから、寝ているれーくんは絶対起こさないようにって」


「起こしたい時はアリスを呼べって言われた」


《ん?どういうこと?》

《なに?その私たち同棲してますって聞こえる発言》


「私はれーくんと一緒に住んでるからね!」


《なん…だと…》

《いやまて慌てるな。姉弟なんだから問題ない》

《そうだよな。家族だもんな。何かが起こるわけがない》

《いやぁ焦った焦った》


「アリスとれーくんは二人暮らし、私とレナも隣の家で二人暮らし」


《はぁ…人の夢と書いて儚いとはよく言ったもんだね。あっという間に散ってしまったよ》

《ガチ恋勢、30分天下だったかぁ》

《決闘よりも、今日だけで得た三人の情報で頭が沸騰しそうなんだが》



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【万魔央vs北条一門決闘会場・実況解説席】


【万魔央の敗北】

万魔央の生死に関わらず、万魔及び万魔央は、北条の要求に全て応じ、最大限叶えるべく尽力する事


【北条一門の敗北】

北条一門(ダンジョン実習のあった2×××年4月2×日時点で、関東禁忌領域守護北条領に籍を置いていた者全てを指す)は、決闘終了後から300年に渡り、関東禁忌領域・真皇兵原羅将門が解放されるまで、無償で防衛の任を全うする事。その際、禁忌領域守護に与えられる全ての特権、優遇措置等は撤廃、得られた利益は最低限の衣食住と防衛費を除き、全て国庫に納入する事。これらはこの決闘の配信を視聴していた一千万人の総意である。

決闘とは2×××年5月2×日に行われた万魔央と北条一門との決闘を指す。


―以上の内容で神霊誓約書による神誓契約を締結いたしました。それではみなさん、大変お待たせいたしました!!本日のメインイベント!万魔央vs北条一門による生死不問、何でもありの頂上決戦を執り行いたいと思います!!


―実況は引き続き矢車風音と校長先生、解説は万魔様です


―万魔様は魔央様の実力をどの程度ご存じなのでしょうか?


『あやつの底は見た事ないから正確には分からんのぉ。ただまぁ…あっけなく終わるかもしれんの。そうなると北条が心配じゃ』


―北条がですか?北条一門総勢12名、揃いも揃って猛者ばかりと認識しておりますが。当主である泰隆様を始め、元当主の方々はいずれも探索者ランクで言えばA-Sに相当するほどの強者。現役の当主の方々もそれに勝るとも劣らぬ力量。奥方である康子様も光魔法の実力は相当なものと聞いておりますが


『なんにせよ全ては魔央の機嫌次第じゃ。寝てる所を起こされるのがあやつは死ぬほど嫌いじゃからの』


―情報が入ってきました。先ほど魔央様vs北条一門のどちらが勝つかの賭けが締め切られました。魔央様6.8倍に対して北条3.2倍です。北条優勢と見る人が多いですね


―片や歴戦の勇士、片や実力不明の15歳ですから。万さんのビッグマウスも悪い方向に影響したのかもしれませんね


―なるほど、魔央様の実力はフロックと見なされたわけですね。レイズし続けて降りようにも降りれなくなったと判断した人が多いという事ですか


『上限がなければ全財産魔央に賭けたんじゃがのう』


―おっと!?ここで万魔様から衝撃の発言が飛び出しました!これは北条に賭けた方々は不安に思っているのではないでしょうか?


―どうやらダンジョンには先に北条一門から入っていく様ですね


―決闘場所はEランク草原ダンジョン1Fになっています。入場規制時間は10分ですので、もうしばらく掛かりますね


―ダンジョンは通常、1度で最大4人まで入場できます。その後ランダムな地点に転送されますが、続けてすぐに入場する事は出来ません。今回は決闘に利用するという事で、もろもろもの制限を撤廃しています。特別措置だとご理解ください


―ランク制限や人数制限が一時撤廃されたのは、最強仮面様が初めて確認されたワンダラーエンカウントが記憶に新しいですね。そういえば魔央様が質疑応答の際、最強仮面様が敵に居たら負けるかもとおっしゃっていましたが、その辺り万魔様はどうお考えでしょうか?


『そうじゃの。魔央と最強仮面の実力は拮抗しておるとわしは踏んでおる。北条側が見つけて連れて来ていたら危なかったかもしれんの』


―つまり、最強仮面様の実力を魔央様の実力と捉えても遜色ないということですか!ワンダラーエンカウントを攻略し、天獄殿すら制圧した最強仮面様と同等の実力を持つ魔央様…これは勝負の行方に俄然興味が沸いてきました!!


『魔央に勝てるようなら、北条も天獄殿を制圧できる実力があるという事じゃ。そしてそれだけの実力があっても解放出来ない、それが禁忌領域と言うわけじゃ。解放できなくても仕方ないと皆も納得しよう』


―なるほど、つまり禁忌領域を解放した万魔様が最強という事ですね!!おっと、10分経ったようです。魔央様がダンジョンに入っていきます!それでは皆さんお待たせしました!ただいまより、万魔の後継者・万魔央vs禁忌領域真皇兵原羅将門・関東守護職北条一門による世紀の決闘、スタートです!!!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 さて、ダンジョンに入ったけど辺りに人影は見えない。とりあえず全域探知……

バラけてないな。10分そこらで合流するとか何かのアイテムでも使ったか?まあいいや、こっちに来るまでまだ時間あるだろ。さっさと準備するか…



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【万魔央vs北条一門決闘会場・実況解説席】



―ダンジョン内の映像に関しては、各エリア毎に定点カメラを設置、多角的に撮影する為のドローンカメラ、そして了承を得た上で決闘参加者全員に小型カメラを装着して貰っています。これにより臨場感あふれる戦闘をお送りする事が出来るかと思います


―北条側は早くも全員が合流していますね。草原エリアは目印になるような物は階段しかありません。何かアイテムを使ったのでしょうか


―ばらけた状態で万さんから襲撃を受けるリスクを警戒したのでしょう。単純に数は力ですからね


―なるほど。万魔様はどうお考えでしょうか?


『そうじゃの。時間制限などないのじゃ、急いで探す必要もないからの。そこの校長が言った通り、魔央がだんじょんに入ってくる前にさっさと合流したのじゃろう』


―一方ここで魔央様がダンジョンに入ってきました。キョロキョロしているのは敵が近くにいるか確認しているのでしょうか。お互いに距離が結構離れていますので、接敵まで時間が掛かりそうです


―何やら万さんがマジックバッグから取り出してますね。あれは何でしょうか?


―ビーチパラソルですね。あとはサマーベッドです。夏の海水浴やアウトドアで一休みする時に重宝します


―何をするつもりなんでしょうか。罠か何かでしょうか?


―あ、何やら呟いてますね。声が聞き取れませんが詠唱…魔法でしょうか?


『あやつ…一体なにをしておるのじゃ…』


―万魔様は魔央様がされたことがわかったのでしょうか?


『…北条が来れば分かる。…これは北条が哀れじゃのぉ…』


―万魔様の発言からして、随分とえげつないトラップ魔法が仕掛けられたのでしょうか?そして魔央様は…そのままベッドに寝転がりましたね


―北条の油断を誘った所を一網打尽にするつもりではないでしょうか?


―なるほど!確かに無防備に寝転がってる姿をみたら流石に北条と言えどいきなり斬りかかる事に躊躇するでしょうね。おっと?サマーベッドにあれは何でしょうか。小さな鳥が一羽佇んでますね


―本当ですね。非常に可愛らしい…あれはシマエナガですね

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