第37話 スタイリッシュ乱入
自然に目が覚めるというのも捨てがたいが、特に眠くないのに二度寝をするのは実に素晴らしい。ふかふかベッドに身を預けながら、俺はやがて来る睡魔に身を委ね…
唐突に、俺の魔法が使われた感覚。これはシマちゃんか…え、まじで!?ガバッと跳ね起きる。なんでシマちゃんが出て来てんの!あーちゃんに何かあったのか!?
速攻部屋を飛び出して家を出る。シマちゃんは何処だ?…そんな遠くないな。学校内じゃん。こんな真昼間に襲撃でもあったのか?まさか…最強仮面でもあるまいし。
とにかく急げ。あーちゃんが危ない!!クソが…あーちゃんのみならず、俺の惰眠の邪魔しやがって…どう落とし前付けてくれようか。
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教室内で動くものは何もない。いや、ありすの肩の上で小鳥が一羽、キョロキョロと教室内を見回している。
「うぅ…シマちゃぁん…」
シマちゃんと呼んだ小鳥を手で抱き寄せ、胸に抱き寄せるありす。しまっと鳴きながら、辺りを警戒…警戒?しているシマちゃん。
何がなんだか分からないけど。分かった事が一つある。シマちゃん…凄く可愛い。小さくて円らな瞳。まん丸な体。ふわふわな羽毛。なにこの子。滅茶苦茶可愛い。
あ、目が合った。こてんと首を傾げる仕草。良い、凄く良い!写メ撮ってもいいかな?良いよね?
「くぅ…ぬぅ…何が…」
吹っ飛ばされた男が立ち上がる。気絶してればよかったのに。男が吹き飛ばされた跡は、机が薙ぎ倒され、壁に叩きつけられた余波でガラスも割れているから、結構な衝撃だったと思うのだけど。流石は探学の3年生。
「シマ!」
男が立ち上がったのに気づき、シマちゃんの目線が固定される。ああ…こっちを見てたのに…でもその心なしか鋭い顔つきもとっても可愛い!
私とレナがありすの前に立つ。私が何か出来るとも思えないけど。こんな状態のありすにこいつを近づけさせるわけにはいない。
「校内での無許可での魔法行使は禁止されている。誰が使ったかは知らんが、それ相応の処罰を覚悟しておけ」
こいつは一体どこまで…どの口がそれを言うのか。そもそもお前が…
背後で轟音。咄嗟にしゃがみ込む。窓ガラスや外壁の破片が教室内に飛びこみ、所かまわず衝突して不協和音を奏でる。一体何が起きてるの!?暫くジッとして音が止むのを待つ。意味が分からない…一体何が…恐る恐る目を開け、当たりの様子を伺う。教室内は
「あれ?どっかの反社の襲撃じゃなかったのか?なんでシマちゃん反応したの?」
そこに居たのは。教室を見回して困惑しているれーくんだった。
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教室1つが粉々に吹っ飛ぶような破壊活動に周りが気付かないわけもなく。何事かと駆けつけた教師や生徒たちでクラス周りは騒然としていた。
教室内で一人だけ立ったままのれーくんは、足に縋りついて泣いているありすの頭をヨシヨシとあやしていた。シマちゃんはれーくんの左肩に乗って毛繕いをしている。良い。凄く良い!!最強と最かわのコラボ!!あ、シマちゃんがこっち見た!う可愛い!
「で、一体何があったの?状況が良く分からなかったら、取り合ず不意打ちで制圧したんだけど」
不意打ちで制圧…一体何があればそんな発想になるのだろう。
「魔央様…いえ、万さんでいいですよね?私、このクラスの委員長をさせてもらっています、矢車風音と申します」
れーくんの質問に即答えたのはクラス委員長の矢車さんだった。この状況でなんでそんなに冷静なの。
「矢車さんね。同い年でしょ?そんな敬語とか要らないから」
「そんなわけには…いえ、分かりました。ン゛ン、分かったわ。要点だけ纏めると、ダンジョン実習で絡んできた大道寺先輩が、天月さんに謝罪をしたいと教室にやってきたんだけど、天月さんがそれを拒絶して、なお迫ろうとした大道寺先輩が何故か吹き飛んだら万くんが来たの」
「なるほど。つまり北条が性懲りもなくまた絡んで来たと。…ビシッと言っておくんじゃなかったのか?やっぱり俺が言った方が良かったんじゃねぇか…まあいいや」
れーくんが野次馬連中を見る。目が合った人が咄嗟に視線を逸らす。気持ちは分からなくもない。私だってれーくんの事を知らなければ目を合わそうとはしないだろうし。
「誰でもいいんだけど…あ、そこの人、あなた教師ですよね?申し訳ないですけど、そこに転がってる屑と、生徒会長と、あとこのクラスの担任。校長室まで連れて来てもらえます?」
凄い勢いで首を振った先生がダッシュで駆け出した。
「レナちゃんとなっちゃんも来てね。ほらあーちゃん、嫌だろうけど行こう?もう全部解決しちゃうからさ。あ、あと矢車さん。申し訳ないけど来てもらっていいかな?一応第三者の視点で状況説明して貰えると助かるんだけど」
全部解決するって、一体どうするんだろう?転校とか?
「あ、校長室ってどこにあるの?あるよね?案内してもらって良い?」
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